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第4話 寝取り公爵ハウンド

「糞が!」


王都の屋敷に住む執事から送られてきた手紙を読み終えた私は激しい(いきどお)りを抑える事が出来ず手にしたグラスを壁に叩きつけた。


「何だ?文句があるのか?

忌々しい、下がっておれ!!」


控えていたメイドどもが怯えた目で部屋を去る。

その様子にますます怒りを感じる。


「何がヒューゴ基金だ、死に損ないが」


手紙には重傷を負ったヒューゴの為に基金が設立され国中から募金が集まっている。

チューリス家も幾らか募金をした方がと書かれていた。


「カトリーナ共々死ねば良かったのに」


死に損ないのヒューゴに集まる募金。

私の名声を台無しにした糞野郎と奴を祭り上げる王国の馬鹿共に屈辱が甦る。


「誰が寝取り公爵だ!」


今なお言われる蔑称は私の誇りをズタズタに傷つけていた。


「カトリーナめ」


あの女が私の躓きの始まりだった。

王妃の妹、美しい容姿、白磁のごとき白い肌で儚げな印象の女。


公爵の私が結婚を申し込んでやったのに喜ぶ所か悲しそうに了承した。


それでも私は誠心誠意尽くしたと思う。

優しく何度も愛を囁き、労りながら抱いてやった。


しかしあの女はいつも悲しそうな顔で私を見た。

白磁のごとき白い肌は血の通わぬ人形と何ら変わらぬと気づいたのだ。


身体の弱いカトリーナは体調をよく崩した。

跡取りすら産めない役立たずの人形。

そんな女を正室に迎えた私の苛立ちは1人の男によって更に酷くなった。


[ヒューゴ・ランドール]


爵位すら持たない治癒師の男。

噂は聞いていた。

優れた治癒魔術の使い手、分け隔ての無い素晴らしい人柄。

カトリーナはヒューゴの前で私には決して見せない笑顔で楽しそうだった。


だから奪ったのだ。

奴の恋人(キャリー)をな。


絶望に沈む奴の顔を見た時私の心を満たされた。

正直奴の恋人にそれ程の魅力を感じた訳では無かった。


『ヒューゴ様を裏切るなんて!』


最初はガードが高かった女だがルドルフに頼み、強引に関係を結ぶと後は言いなりだった。

所詮ヒューゴの魅力等その程度だったと言う事だ。


治癒師の婚約者を奪っただけなのに私の権威は失墜した。

事が露見するとカトリーナは姉の王妃の元に帰り、私は奴の婚約者と結婚するはめになった。


婚約が破棄され悲しむ女とただ子作りさせられる日々、正に地獄であった。

子が出来た私はようやく解放され自領に逃げる事が出来たのだ。


しかし私の悪評は自領にまで拡がっていた。

一緒に連れてきた女は耐えかねて逃げてしまった。

あれほど金をやったのに。

今や私の回りには娼婦以外近づきもしない!


「畜生!」


「ハウンド様落ち着いて下さい」


荒れ狂う私の背後にいつのまにか現れた執事のルドルフが窘める。

こいつは私の腹心、いつの日か私が返り咲く為王都から連れてきた男。


「これが落ち着いていられるか!」


王都からの手紙をルドルフの足元に叩きつけた。


「後ろで糸を引くのは国王達でしょう。

忌々しい奴等ですな」


薄い笑みを浮かべるルドルフ。

この顔をした時の奴は何かがあった時だ。


「進展があったか?」


「ええ、マキシリアン様より書状が届いております」


「そうか、やっと来たか」


ルドルフから書状を受けとる。

マキシリアンは前国王の長男、本来ならば次期国王となる筈だった男。


「ふむ」


書状を読む。

内容は現国王の名声が高まる危機感と早く反旗を翻す様に促す内容だった。

マキシリアンが国王になっていれば私が宰相だったのに。


反旗を翻すには金がいる。

書状には金の事は任すとしか書いてなかった。


「勝手な事を...」


勝手な書状にため息が出る。

いくら公爵家といえどそんな莫大な金等ある訳が無い。


「マキシリアン様も田舎に追放され自由になる金が無いのでしょう。

しかし御輿にするにはあの人程の適任はございますまい」


「確かにな」


今の国王になって冷飯を食らう破目になった貴族は多い。

マキシリアンを担ぎ、反旗を立てれば必ず志を同じくする者達が集まる筈だ。


「また税を上げるか」


「それしかありませんな」


領民には申し訳ないが私が王都に返り咲けば見返りがある。

領主の犠牲になるのが領民の務め。


「みておれメルダースめ、貴様達を地獄に落としてやる」


ようやく気が晴れた私だった。


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[気になる点] >最初はガードが高かった女だがルドルフに頼み、強引に関係を結ぶと後は言いなり ルドルフに薬でも盛られて無抵抗なところを無理矢理&「ヒューゴにバラされたくなければ言うこと聞け」とかなら…
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