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暗闇に咲く

 アルベルティーナの味方と敵のお話。

 気苦労多い陛下と、不器用熊公爵。

 そしてヒロインというよりもうこっちが悪の華。

 脳みそお花畑というよりダークネスヒロイン()です。カッコの中身はご随意に。


 ぶっちゃけ毎回サブタイトル考えるの苦手です。センスの無さに呻く。

 でもタイトルないと判別が難しいという罠。



 フォルトゥナ公爵のガンダルフは、国王ラウゼスに呼び出されていた。

 最も信頼していた臣下の一人、ラティッチェ公爵を喪ったラウゼスの顔には憔悴の色が濃い。無理もないだろう。長年サンディス王国の重鎮であり、軍人として長くいるガンダルフにとってでも、類を見ないほどの大きな事件だ。

 また、サンディス王国は先代と先々代の国王が豪遊し、享楽に耽っていたため貴族の足並みが悪い。どこの国も貴族同士が、権力を望んで鎬を削っているのは共通だ。だが、このサンディス王国はここ最近王家が軽んじられている傾向がある。

 かわりに、力を振るっているのは元老会や貴族たちだ。

 そして、それを押さえつけていたのがラティッチェ公爵である。

 王家の血筋の特権が、国防に直結している為か露骨にはしていない。

 今代の国王は、もとは王位継承権の低い王子だった。だが、相次いで上の王位継承権をもつ王子達が死んで、ラウゼス国王まで繰り上がってきた。

 熾烈な王位継承争いによる謀略、暗殺。そして天災と言えるメギル風邪。すべてが重なり、ラウゼス国王は王冠を戴くこととなった。

 温和であったが本来、将来の国王として育てられていなかったラウゼス。

 当然、後ろ盾にも余り強力な貴族はいなかった。

 だが、幸か不幸か穏やかで堅実な彼は、悪魔的――いっそ魔王的な才知を持ったラティッチェの神の寵児というべき存在と相性が良かった。気性も才能も苛烈過ぎる彼に、他の王子であれば疎ましく思うか恐れるかだろう。だが、不思議と諍いがなかった。

 ラウゼスはだいぶ年下のグレイルが、いつものように王を王と思っていない提言をしても、頭ごなしに怒らず必ず一定の理解を示した。そして、判らなければ理由を聞いた。

 グレイルはそれに対し、義務的であるが淡々と理由を説明した。

 逆らわず、媚び諂わず、ただ効率的なグレイル。事実、グレイルが申し立てるのには理由があり、そして行うことは成果が出た。私欲のためでなく、シンプルにそれが一番だからそうしていただけのこと。

 苦笑しながらも、ラウゼスは鷹揚に受け入れた。逆に受け入れがたく目くじらを立てていたのは、元老会だった。

 それは、ガンダルフも同じだった。

 ガンダルフは栄えある四大公爵家の人間でありながら、貴族より武人よりの人間だった。

 武骨で頑固。そんなガンダルフも、ラウゼスは穏やかに受け入れた。

 大剣や戦斧を扱わせれば国随一。人間要塞といわれるほどの頑強さ。

 それこそ、グレイルが魔法使いとして、軍人や軍師として頭角を現すまでこの国で最も強者と謳われたのはガンダルフだった。

 紆余曲折の末にラウゼスが玉座についたばかりの頃こそ、あのような柔弱そうな国王で務まるかは不安だった。

 だが、今にして思えば軍部と貴族のトップであるのにも関わらず蛇蝎の仲であるグレイルとガンダルフ、そして好き勝手に足並みのそろわない貴族たちと画策の多い元老会を上手く折衝できるのはラウゼスくらいだっただろう。下手に我の強すぎる王であったら、排斥されていただろう。

 派手さこそないが、思慮深く欲に走らないラウゼス。彼でなければ、サンディス王国は破綻していたかもしれない。

 周囲は彼をグレイルの人形だという。傀儡の王だと。

 だが、なんだかんだいいつつグレイルに見放されずに玉座に居続けたのは間違いなく彼だけだろう。他の人間なら、うっかりグレイルの怒りを買って玉座から牢獄に蹴落とされる可能性が十分あった。

 グレイルは好悪と序列が激しい。極端と言える。

 王族を疎む傾向が強いにもかかわらず、ラウゼスに対してはそれなりに話を聞くスタンスがあった。間違いなく、この老王の人徳がなせる業だった。


「アルベルティーナの容体は?」


「変わりなくございます」


「そうか。くれぐれもしっかりと守ってやれ。あの子は随分とグレイルを慕っていたからな……元老会がどういってきても、引き渡すのではないぞ」


「承知しております」


 ガンダルフはこれ以上しくじれなかった。

 自分の焦燥と衝動のままに王宮に連れ去った孫娘。

ひっそりと匿われ、護られていた若き王家の瞳を受け継いだ血統正しき姫君。

 最愛の妻と愛娘の面差しが色濃いアルベルティーナ。いくらアルベルティーナがガンダルフを恐れて厭わしいと思っていても、ガンダルフは嫌うことなどできはしない。

 ましてや、その感情が自分の失態による自業自得ならなおさらだ。

 あの子が繊細で脆弱であることなど、噂から十分推測できていたはずなのに。

 アルベルティーナを守りたい――そして、心のどこかで奪われるように輿入れしてしまったクリスティーナを取り戻したい。そう思っていた。アルベルティーナは鮮やかな波打つ黒髪も、白皙の肌も、王族の血筋を表すサンディスグリーンの瞳も、目の覚めるような絶世の美貌もすべてが亡き妻と一人娘を思い出させた。

 面影を偲ぶなというのが無理なほどである。

 そして、認めたくはないがグレイルがアルベルティーナを出したくない理由も納得した。

 王家の瞳を受け継ぐ若者はここ十数年絶えている。王族分家にすら目ぼしいのがいない。グレイルにとってクリスティーナがたった一人残した愛娘を奪われることは耐えがたかったのだろう。それは容易に想像がつく。

 かといって、王家や元老会と全面的に争うのも危険だ。それこそ、国が割れる。アルベルティーナはどうあっても傾国となるのだ。

 だからこそ、理由を付けて隠していたのだ。

 アルベルティーナ付きの侍女が、着替えや入浴などをさせるときに一切他の使用人に手伝わせない。恐らく、背中の傷も嘘ではない。でも、それ以上に王家の瞳を隠したかったのだろう。

 グレイルの溺愛具合からして、政略の駒にならないことなど些細な事だろう。むしろ、一生涯手元で庇護するつもりであったのだろう。婿という手段でなく、わざわざ養子まで取っているくらいだ。

 そして、あの様子からするにアルベルティーナは受け入れていたのだろう。

 グレイルの帰還を聞いたアルベルティーナは、青ざめさせていた頬を薔薇色に染めて、それこそ花の綻ぶような笑みすら浮かべていた。

 ガンダルフが王城に連れて行ったときは泣きはらし、絶望したように憔悴していた。

 謁見の間でそわそわする様子に義弟のキシュタリアや幼馴染のドミトリアス兄妹が窘めていた。彼らが傍に居ることも上機嫌の要因だっただろう。

 あの時初めて、ガンダルフは孫娘の笑みを見た。



「必ずや守ります。我が身に変えても」



 腹は決めている。あの子を泣かせてしまってから、一目見てから――出会う前から、決まっていたことだったのだろう。

 早世した妻と愛娘――その最愛の面影を持つ孫娘がガンダルフを嫌っていても。

 たとえ、その笑みが自分に向けられなくとも。

 これ以上、残される側に回る辛さに比べれば大したことではないのだから。

 アルベルティーナはその姿に王家と血筋にラティッチェ、両方を強く持つ稀少な存在だ。フォルトゥナの血筋もあるが、こちらは次期当主のクリフトフとその子供たちがいる。後継には困っていない。

 だが、先の二家は違う。そして、それはサンディスにおいて最も権力や財力を持つと同等。数多の人間に狙われる。

 命は保たれても、その身心を蹂躙されることは十分ありうるのだ。

 彼女の最大の守護者は、先の事件で命を散らした。

ラティッチェ公爵家に残されたのは世間知らずのアルベルティーナ。義弟のキシュタリアは長年社交界でソツなく過ごしていた。付け入るならどちらが狙い目だなんて、明らかだ。

 しかも、アルベルティーナを上手く誑し込めばラティッチェの後継者、王家の仲間入りの両方を手に入れることができる。

 アルベルティーナがどんなに拒んでも、踏み込みたい輩は掃いて捨てるほど出る。

 貴族の一人として、そんな風に食い物にされてった若者を何人も知っている。

 下種の好きになどさせてたまるものか。

 ガンダルフは隻眼の鋭く、床を睨みつけていた。






 アンナは目を覚まさないアルベルティーナを見おろし、ため息を飲み込んだ。

 栄養価の高いポーションを、注射という形で二日に一度注入しているためそれほどやせ細ってはいないがそれがひと月続くと流石に危ないという。

 グレイルの言葉もあり、往診はセバスとゼファールが交互に診ている。ラティッチェ家の主治医も加わっているので万全のはずだ。

 特にゼファールは多忙だが、カインは執拗にアルベルティーナを狙っていたこともあり呪いが何らかの形でも残っていないか入念に調べていた。

 精神の弱った人間は呪いに侵食されやすい。今のアルベルティーナはまさにそうだ。

 結局、アルベルティーナは葬式にすら――最後の死に顔にすら見えることが叶わなかった。

 見舞いに来たキシュタリアの話では、ラティッチェ公爵家の霊廟に埋葬されたという。

 ただ、死んだ経緯が経緯だけに、聖水晶という不浄を払う祝福がなされた水晶の棺に入っているという。呪物などを弱体化させ、閉じ込める際にも使う。本来なら、聖なる炎で遺体を焼かなければならないが、それを扱える司祭、聖者や聖女などが不在。つい最近、隣国でヴァンパイアがアンデッドや眷属の不死者を扇動したという大きな事件があり、その後始末に追われているという。教会から譲渡に時間がかかると返答があったため、そういった措置になったのだ。ゼファールも使えなくはないが、最後は本職に仕上げた方がいいと念押しされた。あの魔物の脅威を考えれば、仕方がないことだ。

 財力に物を言わせ、強引に呼び込むことも可能であった。キシュタリアもラティーヌもあのままグレイルとアルベルティーナを別れさせるのはあまりにも酷だと、聖水晶の棺を用意したのだ。あの中であれば腐敗も進まない。万一にも呪いが残っていても、これであれば進行しないし、多少のものなど消滅させることができる。勿論、これだけ特殊な棺を用意するのに、莫大な資金がかかったが二人とも躊躇わなかった。

 基本、貴族は一年間喪に服す。高位であればあるほど、その傾向強くしっかりと喪を行う。

 同時に、一年後に喪が明けたときには遺体を燃やさなければならない。その頃までに、アルベルティーナが目覚めて居ればせめて別れのために顔を合わせられる。火葬のための聖なる炎も手配しているという。

キシュタリアは当主代行として、ラティーヌは公爵夫人として涙を流す時間すらなく動いている。

 悲しみを感じていないわけではない。

 だが、二人は現実を厳しく見据えていたのだ。

 グレイルの――ラティッチェ当主の唯一の直系のアルベルティーナ。

 箱入りの心身をすり減らした令嬢。莫大な財産と地位をもつラティッチェに近づくにはお誂え向きだろう。

 婚姻しアルベルティーナの瞳の色を引きついだ子を産ませることができれば、王族に連なる存在となれる。そうでなくとも、アルベルティーナの子と言うだけでラティッチェ公爵家の後継者としては申し分ないのだ。

 同時に後妻と義理の息子であるラティーヌとキシュタリアを引きずり落とすにも絶好の機会だった。隙を見せられない。アルベルティーナを食い物にされないためにも、二人は気丈に振舞っていた。

 アンナの見立てであれば、アルベルティーナは公爵家をキシュタリア以外の人間に継がせたくはないだろう。

 そのために、修道院に入ることも平民と下ることも辞さないほどの溺愛する義弟だ。

 自分が血を残せば、どんな争いの火種となるかと苦慮していた。

 グレイルの強烈な拒絶があり、あっさりと指先で転がされて諦めさせられていた。だが、そこまでして慈しんでいたキシュタリアを押しのけてまでアルベルティーナは爵位に拘らないだろう――周囲はそうは思わなくとも。

 もともと、恋人も夫もグレイルが望まぬなら、と敬遠していたほどだ。

 もし、望まぬ婚姻の挙句に家族を追い詰めることとなったら、どれほどアルベルティーナは苦しむことになるだろう。

 そんなことはさせない、とアンナは唇をかむ。

 侍女のアンナにできることなど、ほんの僅かだ。だが、侍女だからこそ傍に居られる。心身の支えになれる。


(せめて、公爵様ほどとは言わずとも、お嬢様の御心を支える方がいればいいのに)


 グレイルはあまりにも圧倒的だった。

 絶対的だった。

 そうそう、彼の人が抜けた穴をふさぎ切れる人物などいるはずもない。

 力ない己に、アンナは一人苛立った。








「グレイル様が死んだ……?」


 薄汚れた黒いローブを深くかぶった仮面の人物は頷く。老人とも老婆ともとれる、しわがれた声で紡がれるのは、低く訥々として聞き取りづらい。

 この人物との出会いは繁華街の大通りから少し奥まった場所にある露天だ。

 露店なので、時々場所が変わっていたり、店自体開いていなかったりする。

 攻略対象へのプレゼントや、好感度アップアイテムを売っているのでレナリアは学園に通っていた頃から、足しげく通っていた。

 この店の『愛の妙薬』があったからこそ、パラメータ不足はあったものの好感度でゴリ押せたといっていい。

 最初は数枚の銅貨で買えたものの、最近は金貨を要求する。だが、他の店では手に入れられないため背に腹は代えられない。

 しかも、この『愛の妙薬』は常習性というか、中毒性がある。これがないと、グレアムはいうことを聞かないどころか最近では正気も怪しい。グレアム以外にも、これを使って従わせている者たちは多い。これがあるからこそ、貴族すらレナリアに傅いている。

 だが、最近は取り締まりも厳しく、レナリアも追われていることもあり入手が難しい。

 それに、この商人はただの露天商ではない。雑貨屋のような商売だと思っていたが、寧ろ何でも屋に近い。欲しいといえば惚れ薬どころか奴隷から、国際的に禁止されている呪具、暗殺依頼までどんな後ろ暗いものまでも商売として扱っている。


「カイン・ドルイットと相打ちしたそうだ」


「信じらんない! なにグレイル様を殺しているのよ、あの愚図! アルベルティーナを殺してっていったのに!」


 カインに使わせた魔力の増強のアイテムもそうだ。

 かなりの大枚をはたいて購入したそれは、精神や肉体を変質させてしまうが、その代わりに莫大な能力を得る。

 いくらアルベルティーナが強くても、厳重に守られていてもこれなら殺せると聞いて、一番魔力の強いカインに使わせたというのに。

 なのに、結果はカインが死んで、レナリアの目当てのグレイルも道連れ。なのに、殺害対象であったアルベルティーナは生きている。最悪だった。

 折角、ドレスを我慢して王城に入れるよう手配したのに水の泡だ。薬を売りさばいて得たものの、大半をこの作戦で使ってしまった。


「ラティッチェ公爵はアルベルティーナ嬢を溺愛しているのは周知のこと。

 同じ場所に居合わせて、庇ったのだろう」


「なんでそんな場所で……っ」


「今までアルベルティーナ嬢は、厳重な警護と結界に守られていた。あれは一流の暗殺者の侵入も許さず、魔法使いを何人派遣しても解除できない強力なモノ。

 待ち続けてようやく出てきた。謁見の間に出てきたあのとき以外は、狙い様がなかった。

 カインを差し向けたのはそちらの指示のはずだが?」


 ぐ、とレナリアは黙る。

 とにかく、アルベルティーナが出てくるのを教えろと催促していた。早くあの女を始末したかったのだ。

 レナリアはどうしようもなくアルベルティーナが気に食わなかった。

 どんなに調べても、幼い頃に誘拐された悲劇の令嬢。病弱で深窓のご令嬢。領民のために善政を尽くす聖女のような令嬢。王族に理不尽に虐げられた哀れな令嬢であり、減刑を呼び掛けた慈悲深さ。どれもこれも、レナリアの知っているアルベルティーナの姿ではない。

 キミコイで初代悪女。シリーズで最もわかり易く純粋な悪だった。淫蕩で奔放な『悪姫』。聖女だの、慈悲深いだのとは無縁の悪女。それがアルベルティーナなのだ。

 その女が、最近王族に加わるなどというとんでもない噂まで出てきた。

 レナリアが王妃になったあと、あんな女が近くにいるなんて目障りに程がある。


「あの女は死ぬべきなのよ! そうじゃないと、私が公爵夫人にも王妃になれない!

 なんで、なんであの女ばっかり! 許さない! あんな女が生きているせいで!」


 グレイルがレナリアの下に来なかった。レナリアに愛を囁かず、あの美しさを堪能することもできなかった。どのように閨で楽しませてくれるか、楽しみだったのに。

 アルベルティーナは疫病神だ。あれがいるから上手く行かない。

 当たり散らし甲高く叫ぶレナリアを、無言で見ている仮面の人物。

 ちらり、と後ろに控えていた男を見る。彼はその視線の意図を汲み取り、背中を壁から離して一歩前に出た。男は血錆びのような赤毛に金にも銀にも見える底光りするような炯炯とした瞳。目つきが悪いが、顔の造作自体は野性味が強く整っている。背が高く、しなやかな鋼のように鍛えられた褐色の巨躯。190センチは優にありそうだ。麻のタンクトップに、黒くゆったりとしたズボン。腰のベルトに長さも形状も違う武器を数本ぶら下げている。足元は皮を鞣した簡易な靴を履いている。


「……なに、その男」


 ずっといたのに、今更レナリアは気づいたらしい。ぶすくれた表情で、怪訝そうに青い瞳を向ける。

 過ぎた不満を叫んでいた姿は醜悪だったが、大人しくしていれば愛らしい顔立ちが判る。

 レナリアにしてみれば、落とす気満々でいた、抜群の財力と権力を持つ絶世の美形が居なくなったのだ。不機嫌極まりない。代わりに出てきた男の顔立ちは整っているが、目つきが悪く粗野さが目立つ。レナリアの判断基準は顔が良く財力と権力のありそうなところである。

 顔立ちこそ悪くないがけれどど真ん中というほど好みではない、といったところか。だが、最近はお菓子ばかり欲しがって会話の成り立たないグレアムの代わりに、暫く侍らすにはいい。

 最近は貴族ばかり相手にしていたので、この手の美形もたまには悪くない。

 一番はグレイルだが、暫くつまみ食いにはいいだろう。

 グレアムは宰相子息ということもあり、金蔓にはもってこいの家柄と人脈を持っている。まだ捨てるには早い。


「これはなかなか使える男でな。あの魔王公爵さえいなければ、大抵の者は暗殺できる」


「……へえ、いいじゃない」


 歪なチェシャ猫のように口角を上げるレナリア。狡猾で厭らしい表情だ。

 これ、と呼ばれた男は不躾な視線にさらされながらも獰猛に嗤った。





 読んでいただきありがとうございます。


 シリアス続いちゃいますが、ハピエンの予定です。

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