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思いがけない来訪者

 ドミトリアス兄妹来訪編。





「ねえ、アンナ。これ、どうなっていると思います?」


「さあ? ………お嬢様、お願いですから手を突っ込んだりしないでくださいね?」


「ソ、ソンナことしませんワ? ええ、モチロン」


 まさに突っ込んでみたいと思っていたので、挙動不審になりました。

 撫でていたチャッピーのお腹がちょっともぞもぞするなぁと思ったら、なぜかお腹に横一文字にファスナーがついていました。

 ポッコリお腹にファスナー。可愛いけど、ぎりぎり手を突っ込めそうなサイズのファスナー。超気になる。背中についていなくてよかった。背中だったら中の人疑惑が出てしまいます。

 チャッピーのお腹でプラプラ揺れるファスナーの金具。引っ張って中身がどうなっているか確認したい。

 中には何がどうなっていることやら。

 ………内臓が出てきたりしませんわよね!?

 うん、開けるのはやめておこう。一歩間違えば動物(?)虐待ですわ。

 それでも中身が気になってそわそわする私を見かねたのか、午後のチャッピーは腹巻スタイルになっていました。アンナ、本当に優秀ですわね………

 そしてなんだかすでにその腹巻ガードのあるお腹がでこぼこしている。

 何を入れているのかしらと思っていたら、チャッピーが歩き回るたびにドングリみたいな木の実やまだ硬い花のつぼみ、白い小石などがぽろぽろ落ちていく。

 しばらくして落ちたことに気づいたチャッピーは慌てて拾い集めで、決して大きくない腹巻とお腹の隙間にぎゅっぎゅと詰めるのですが、明らかにキャパオーバー。満員御礼状態のそこには入りきらず、落ちていく。そしてまたの繰り返し。

 ぽろぽろと落ちていく、チャッピーにしてみれば宝物だろうものに「ぴぃ………」と悲し気に鳴いている。余りに可哀想で見て居られず、部屋にあった小さな宝石箱を空けて、チャッピーにあげることにした。チャッピーはご機嫌になって喜んで――それをお腹のチャックの中にしまった。


 ………最初からそっちにしまえばよかったのでは?


 というより、明らかに質量保存の法則を無視していませんか?

 あの宝石箱はチャッピーのお腹に違和感なく仕舞い切れるようなサイズではなかったはず。

 ご機嫌なチャッピーになんといっていいか解らず、私はそっと見なかったことにしました。

 時間もあることですし、今日も結界解析をしますかと倒れていいようにソファに移動した。そんなとき、アンナがやってきた。


「お嬢様」


「あら、アンナ。どうしたの?」


お茶の時間にはまだ早いわよね?


「ドミトリアス伯爵家のミカエリス様、ジブリール様のお二人がお越しです」


 思わず、抱きしめていたクッションを落としかけた。








「お姉様!」


 アンナが扉を掛けると、真っ先に現れたのはジブリールだった。

 大きな紅い瞳に涙を溜めて、紅い髪が慌ただしく近づいてくる様に合わせて広がる。

 鮮やかな青いドレスにしわが寄るにもかかわらず、膝をついてソファに座る私へと両手を広げて抱きついてきた。


「ジブリール! ………来てくれて嬉しいわ。ありがとう。ごめんなさいね、いつものようにおもてなしはできないの」


「いいえ、アルベルお姉様のお顔を見られるだけで十分過ぎる程です」


 その華奢な体を抱きしめ、あやす様に頭を撫でる。

 可愛い妹分に会えたのはとても嬉しいが、わたくしは自分の立場が非常に複雑だということは流石にわかっている。

 むしろどうやって来たんでしょうか? 護衛というか、監視がいっぱいいますわよね?


「でもどうやって、ここへ来る許可を? ………その、わたくしへの接見は色々制限されているのではなくて?」


「うふふ、お姉様。わたくし、こう見えても結構コネを持っていますのよ? それに、お姉様の結界があるので、本来とは警護するものたちの配置がずれていますの。当然、城の構造とうまくかみ合わず、おのずと隙が生まれますわ。

 結界さえ潜り抜けられば、ヴァユ宮へ入れる場所はあるんですのよ?」


「まあ………危ないことはしてはダメよ、ジブリール」


「あら? これを提案したのはお兄様ですのよ? お兄様は王宮騎士の方とも仲が良いの。

 伯爵として登城することもありますから、わたくしより王城について詳しいのですわ」


「え?」


 あのミカエリスがー!? あの堅物レベルに真面目君のミカエリスが!?

 ジブリールの後ろで腕組をして若干難しい顔をしているミカエリスは、私と目が合うと表情を解して苦笑に変えた。

 入ってから一言も発しなかったのは、ジブリールとわたくしに配慮してくれたのでしょう。


「………以前、王宮の基本構造や地図と警備配置くらいは頭に叩き込んでおけ、と公爵にいわれまして。

 まさか、こんな形で役に立つとは思いませんでしたが」


「その、上の許可は? 大丈夫なのですか?」


 ミカエリスに微笑まれた。大輪の華のごとく艶やかな笑み。そこに罪悪感とか後ろめたさはない。だけど、妙に強かさというか胸がざわつくような不敵な笑みだった。

 ………ミカエリスが不良に?! 品行方正の紳士で、騎士の鑑のあのミカエリスが!?


「腹は括っております。幸い、私はキシュタリアほど厳しく監視されておりません。

 もし周囲に気づかれても、巧く逃げて見せますよ。これでも、伯爵として貴族の世界を生きてきましたから」


 えええ!? 大丈夫なのですか、それは!

 あれ? でもわたくしの部屋に来る許可って誰に貰うのかしら? ラティッチェ家ではお父様一択ですが、ここはお城。つまりはあの優しそうなラウゼス陛下かしら? それともあのフォルトゥナ公爵? 国防の一角であり、サンディス王国の騎士たちをまとめる騎士団長でもあるらしい。あの誘拐犯は。勝手にこんな場所に誘拐しておいて、騎士が聞いて呆れるわーっ!


「あの、来ていただけたのはとても嬉しく思います。ですが、そのせいでドミトリアス家にまでご迷惑をおかけするのは心苦しいですわ………」


「迷惑ではありません! わたくし達がしたくてしていることですわ!」


「もとより我が家はラティッチェ公爵家に恩義があります。それだけでなく、アルベル個人にも。

 窮地にこそ駆けつけるべきでしょう」


「ジブリール、ミカエリス………ありがとう」


 思わず笑みがこぼれる――が、二人は何ともいえず悲しいような、つらいような顔をする。上手に笑えなかったみたい。

 ふと、近づいてきたミカエリスが頬に触れた。


「少し痩せましたか? ただでさえ貴女は華奢であるのに………」


「え………と、その少々慣れない環境に戸惑いまして。大丈夫ですわ。アンナもとても良くやってくれますし、家に帰れば戻ります」


 努めて笑顔で振舞ったが、言葉の選びが悪かった。家に帰る、という言葉にミカエリスが顔を強張らせたのが分かった。


「………ミカエリス?」


「アルベル、貴女がラティッチェ公爵家に戻るのは難しい」


「何故? もう家に賊はいないのでしょう?」


 余程不安げな顔をしていたのか、躊躇いがちにミカエリスが私の頬を撫でる。

 躊躇うことがあったのか、ミカエリスは黙った。でも私が促すようにうなずいて頬に添えられたミカエリスの手に自分の手を重ねると、僅かに逡巡した。そして、覚悟を決めたのか口を開いた。


「貴女は王家の瞳を持っている。そして、ラティッチェ公爵はそれを王家に、王国に対して黙していた。それを罪に問われるかもしれないのです」


「………何故? 王家の瞳とはいっても緑の瞳はルーカス殿下もレオルド殿下も御持ちよ。

 瞳の色を黙っていたくらいで、そこまで重い罪になるの?」


「他の色ならなんでもないでしょう。ですが、貴女の色は特別なのです。不文律のしきたり、暗黙の了解のようなものです」


 そんなもん知りませんわ。熨斗付けてくれてやりますわ、そんな面倒。

 わたくしはラティッチェ家が大好きで、王家はあまり好きではありませんの。

 正妃メザーリン様と側妃のオフィール様の、立太子を巡る争いはわたくしすら知っていましてよ。そんな問題に首を突っ込みたくないわ。

 王位継承争いはどの国でも大なり小なりあるものです。お父様もわたくしも他所でやっていて、迷惑を掛けられない分は黙認しますが巻き込まれるのはごめん被りますわ。


「王位継承権が絡むとでも言いますの? わたくし、確かになくはないかもしれませんが序列的には十何番目とかそういうレベルですわ」


「王家の瞳がある時点で貴女は第一位になります。この国の王位継承権を定める元老会では、貴女を王家に迎え入れ、第一王女にして立太女として扱いたいと考えてさえいます。

 それだけ、貴女の緑の瞳は特別なのです――先に来たキシュタリアたちは、何も言わなかったのですか?」


 一位!? え……? たしかにサンディスグリーンの瞳は王家にとって特別とは知ってはいましたが………

 絶句し、青ざめる私に気づいたのかミカエリスは戸惑い気味に言葉を重ねる。

 ミカエリスが言うには元老会は貴族の集まる元老院でも、特に高位貴族に位置するメンバーで構成されているそうです。元老院そのものも、ベテランから大御所といった重鎮たちが名を連ねているが、そのトップが元老会。

 王族たちが暴走し過ぎないように、また貴族たちが暴走しない様に重しとバランサーとしているという。

 その発言力は時に四大公爵家や王家に匹敵するレベルだという。

 そして、基本王位継承権や、王位の裁定などは彼らが担う。基本、王の意向が重視されるがその人選があまりひどい時などは待ったがかかるらしい。

 ………そういえば狂信的な緑眼信者と聞いたことがあるような?


「お父様は序列の高い王位継承権のある人間を秘匿していたということで、罪に問われるということですか?」


「………おそらく。ですが、ラティッチェ公爵は政治的にも国防的にはなくてはならない方です。いくら元老会といえ、爵位の返上を求めたり蟄居を言い渡したりすることは無理でしょう。

 咎めがないというのも難しいですが、精々の謹慎か、金銭的な賠償などが妥当かと。

 そもそも、貴女を強引に王城へ引き留めていることに対し、ラウゼス陛下が難色を示していますから」


「陛下が?」


「ええ、アルベルが王城についていた時点でかなり憔悴していたと聞きました。

 結界の経緯を知って、かなり心配しているそうです。

ですが、元老会をはじめ王妃たちもかなり熱心にアルベルを引き留めようと動いていて、ラウゼス陛下が一人反対している状況です。

 多くの貴族は様子見をしていますが、余り状況は良くない」


 あのお優しそうなラウゼス陛下が、そこまで反発してくださっていたなんて。

 なんとなく、お父様にお仕事ぶん投げているようなイメージがあったけど、もしかして二人の王妃様方と頭カチコチの元老会をはじめた貴族たちに手いっぱいだったのかしら?

 お父様は声を荒らげて愚痴ったりはしませんが、時折言葉の端々に「使えねえ」といわんばかりのニュアンスを感じます。

 そういえば、お父様が陛下を嫌うような、非難するようなことをあまり聞きませんわね。

 あの好き嫌いの激しいお父様が。好き嫌いというか、興味の有無かしら?

 色々と考えるけれど、あくまで推察でしかありません。


「………そうなのですね。知りませんでした。教えてくれてありがとう」


「いえ、差し出がましい真似をしてしまいました。

 ですが貴女のせいではないし、キシュタリアたちも騙すために黙っていただけではないはずです。

 純粋に、噂で酷く落ち込んで乱心していると聞いたアルベルを慮ったのでしょう」


「………だめね、心配させてしまったみたい。不甲斐ない姉だわ」


 キシュタリアは私以上に大変なはずだ。

 ラティッチェ公爵家に賊が入るなんて前代未聞だ。しかも、あれほど大規模なもの。あれは襲撃といっていい。

 お父様、キシュタリアに当たらないといいのですが。無理ですわね。ここはわたくしが止めなくては。だって、怒ってしまったお父様は天災のようなもの。他の方にはどうしようとも、お父様という大災害は止められません。

 ………わたくしが誘拐されてしまった以上、キシュタリアの処分は厳しいものになるかもしれません。下手をすれば、お父様の愛剣が唸ってしまうかもしれないのです。断固として止めなくては。

 あれはレナリアとあのフォルトゥナ公爵が悪いのですわ!

 わたくしが連れ去られるとき、キシュタリアはかなりフォルトゥナ公爵を止めようとしていた。そのたびに邪険に払われていた。わたくしがいたから、きっとあの子は得意な魔法すら使えなかった。


「仕方がありません。この状況が異常なのです。

 アルベル、辛いかもしれませんがお父上であらせられる公爵がお戻りになるまで、けして結界を解かないように」


「解りました。………ふふ、暗殺者にでも狙われてしまうのかしら」


「暗殺者ではないですが、狙われているのは確かです」


 首を傾げると、ため息をついたミカエリス。

 何ですの?


「………貴女が立太女となれば、貴女の夫は王配に準ずるのです。

 もし、アルベルに『なにか』があり、特定の異性と悪からずという状況を作られてしまえばその男は自動的に最も王位に近い存在となります。

 婚約者がいない貴女を嵌めてでも関係を持ちたい。そういった輩は掃いて捨てるほどいます」


「ですが、その………身分の高い貴族程、婚約者がいるのではなくて? 公爵家だとしても王家だとしても、わたしとそういった関係となると身分が釣り合う相手はかぎられていましてよ?」


 身分が高ければ、幼い頃から婚約者がいてもおかしくない。

 わたくしやキシュタリアのように公爵家であっても婚約者がいない方が珍しい。それはミカエリスやジブリールにも言えることではあるのですが……

 王家のルーカス殿下やレオルド殿下も、十歳になる前には婚約者がいたはずですわ。お相手は確か四大公爵家のアルマンダイン公爵家のビビアン様とフリングス公爵家のキャスリン様-……だったはずですわ。社交に疎いわたくしの知識はややうろ覚え……


「次期王配という絶大な権力を握る存在になれるということを考えれば、婚約者を捨てるものも出るでしょう……」


「まあ……」


「エルメディア殿下のこともありますが」


「エルメディア殿下? 何か関係ありますの?」


「王家に近づくため、王家に合わせた時期に婚姻する貴族は珍しくありません。

 産まれた娘や息子の年齢が王子や王女と近ければ、婚約者候補に推しやすい。そして学園で会える機会も生まれますから、覚えていただく好機にも恵まれます。

 ………その、当初はエルメディア殿下の臣籍降嫁先になろうとした家も数多くいたのです」


「………?」


「その、大変いいにくいのですがエルメディア殿下は余り才知に恵まれた方でもなく、お人柄もかなり奔放で、政には興味が疎遠です。王族として目立つ実績もない。普段の素行もありその立ち位置も微妙です。

 縁談が纏まらないのは、そういった理由もあり目ぼしい家から逃げられ続けているのです。

 メザーリン妃殿下は自分の勢力を広くしたいため、譜代貴族の中でも伯爵家以上の名家をえり好みして望んでいるのもありますが」


「ええ、とその………?」


「はっきり言ってしまえば、アルベルの年齢にもエルメディア殿下は近い。

 この世代は貴族の層が厚いのです――エルメディア殿下という当てが外れた家にしてみれば垂涎の的でしょう。

 妥協で結んだ婚約がいくつもあるのです。エルメディア殿下はその……ご容色もあまり恵まれず、才知に富んだ方でもありません。

 今まで社交に出なかったのでそれほど注目視されませんでしたが、アルベルは非常に類稀な美貌の上、領民から非常に評判がいい令嬢です。

しかも一に王家、二にラティッチェ公爵家。貴女の夫となり、サンディス王国におけるもっとも権力のある血族に直接介入できるのですから」


「え………いやですわ。いらない」


 思わず真顔でつぶやくと、隣でジブリールが噴出した。

 ミカエリスもわたくしのガチトーンにこほんと咳払いをして口元を隠しつつ誤魔化した。

 わたくし可笑しなこと言いましたか?

 だってわたくしに寄生する気満々のクソ野郎を誰がすき好んで旦那にしたがりますか!

 お父様にシバかれて根性叩きなおされてしまえばよろしくてよ!

 わたくし、ラティッチェ公爵という超絶美形の年齢不詳のお父様と、キシュタリアというとんでもなくお顔のよろしいフェロモン系(ただしわたくしには感知できない)美男子の義弟と、超絶お仕事のできるインテリジェンス系美形なエリート従僕のジュリアス、そして騎士にして伯爵の大輪の薔薇もかくやといわんばかりの美青年ことミカエリスという幼馴染がいますのよ?

 規格外の美形が目白押し。金銀財宝も真っ青な極彩色デパート状態がデフォっていたわたくしが、今更そのへんの腐れボンボンに靡くとお思いですの!?

 今更ですわ! 初恋もファザコンに霞んで行方不明ですのよ!?


「そもそも、お父様やお母様、キシュタリアに迷惑かけるような男性、お近づきになりたくありませんわ」


「アルベルが近づきたくなくても、あちらから無理やり踏み込んでくる恐れが十分あります」


 気を付けてください、と改めて念を押された。覗き込むミカエリスの真紅の瞳が、余りに心配そうで大人しく頷く。

 ミカエリスだって、わたくしよりずっと『貴族』というものを知っている。きっと、私には想像もつかないほど悪辣で陰惨なものを見たこともあるのだろう。

 権力が絡めば、莫大な利益が絡めば、時に醜いほど利己的になれる人たちもいる。

 そこには愛情もなく、私という個など微塵も介していない。ただ、血筋と家柄によりもたらされる地位に目が眩んだ連中が私にこぞって集まってくるのだ。

 弱っちい小娘一人を手籠めにするだけで手に入るのだ。

 私の不安に気づいたのか、隣に座ったミカエリスがそっと私を抱きしめる。壊れ物のように、慎重に包み込まれるように。体格の良いミカエリスは、当然胸も広く腕も私よりも長い。すっぽりと体が入る。

 躊躇いがちに背に伸ばされた手の平が、心細さにさざめく心を宥めてくれるようだった。

 温かさと心地よい安堵感にそのままうっとりと目を閉じる。


「アルベル、どうか私を頼ってください。

 何か恐れること、貴女を脅かす存在があれば躊躇わないでください。私は貴方の剣となり盾となる」


「………ミカエリス……?」


「結界により阻まれているとはいえ、そのうち誰かが穴を突いてくるかもしれない。

 元老会もラティッチェ公爵に気づかれる前にことを進めたいはずだ」


「………わたくしの身元引受人はお父様よ? ラティッチェ公爵当主であり、実父ですもの。

 いくら何でも、お父様を抜きに話は進めないでしょう?」


「ええ、ですが遠征が長引いている以上『特例』を使ってくるかもしれない」


「特例?」


「元老会は『王位継承権』絡みにおいて、突出した権利を持っております。その特権を利用して貴族院や王家の承認を得ることによって、強引にあなたの籍を王家に移そうとしています――王太女にする前に、王家の一員となることは必須ですから」


「………わたくしはそんなものにはなりたくないのに」


 なんて迷惑なのでしょうか、元老会。

 わたくしを愛するラティッチェから引きはがそうとする老害集団。ミカエリスの言葉により、元老会は敵認定をした。

 最近ケチの付きまくっている王族の仲間入りとか冗談キツイにもほどがありますわ。

 私は静かに暮らしたいだけなのに。

 何故それが叶わないのだろう。







 ちなみに頭に血の上ったジブリールは正面突破しようとしていましたが、流石にミカエリスが止めました。

 ミカエリスは騎士や軍部関係に結構人脈があります。そして、本人も武人タイプなので街や建物を見ると普通にどうやって攻めるとか守るとか無意識に考えているタイプです。その辺の思考回路はみっちりと魔王パパに扱かれています。


 ご感想の返事について。

 13日分までを持ちましてこちらのシリーズのお返事をやめます。

 自分がうっかりネタバレしそうなので。

 もちろんちゃんと有難く読みますが、お返事で結構ネタバレしてんじゃん自分と思ったのでそういう方向に。

 あとオフ事情が多忙になるので、今まで以上にお返事が難しくなります。

 更新ペースは落としたくないので……

 感想をいただくことは嬉しく思っていますので、それでも構わない方は下から送っていただけると嬉しいです。

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