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覚悟

陛下はなんだかんだでしっかり信念を持って行動していたりします



 噛み締める様に頷いた。その姿は、安堵しているようにも見える。

 わたくしにゆっくり手を伸ばすと、頭をナデナデ……あぅうう、良いナデナデですわ。

 一連の様子だけで、わたくしと陛下の空気や距離感を察したらしいジュリアスは呆れ顔。笑顔は貴公子モードですが、眼鏡の奥の双眸に残念なモノを見る色が滲んでいる。

 ふと、疑問に思う。ラウゼス陛下は、何故二人の王妃の様にルーカス殿下とレオルド殿下を必ず選べと求めないのでしょうか。


「あの、陛下。不躾ながら、お聞きしてよろしいでしょうか」


「よい、言ってみなさい」


「陛下はご子息お二人を、何故わたくしへと仰らないのでしょうか?」


 正直に言えばお父様亡き今、わたくしの最悪な心情を除けば不可能ではないだろう。

 事実、そういった噂(結界魔法応用)で聞いたことが有ります。王妃二人は、ここぞとばかりに喪中のわたくしに突撃してでも言質を取ろうとしていたくらいです。

 ですが、最初で最後のお茶会という名の社交バトルは、エルメディア殿下の乱入でお流れになりました。

 王色の瞳をゆっくりと伏せ、ラウゼス陛下は語る。


「私は王だ。父として、勿論息子をという気持ちがなかったわけでもないが――悲劇を生むと分かれば止まるべきだと判断した。

 あるべきものを無視し、正しきものを歪めるのは歪を生む。それは後に大きな軋轢や禍根となる。そういったものが分かっているなら、断ち切るのもまた私のすべきことだ」


 なるほど。

 わたくしの感情を無視し、どちらかの王子に強引に娶らせれば間違いなくラティッチェとフォルトゥナの心は、王家に対して含むものを持たずにいられないでしょう。

 妃殿下たちが熱望しようと、二人の御実家であるオルコット伯爵家やミル・ドンス王家よりラティッチェ公爵家とフォルトゥナ公爵家の方が敵に回したら危ういのでしょう。

 もともと、わたくしの誘拐の件もあり微妙な空気や温度差が常にあった。

 原作のようにアルベルティーナから王子が気に入ったので寄越せというならともかく、イヤイヤしているところに押し付けたら、わたくし以上に周囲から意見が紛糾しますわね。

 ……下手したら、拒絶の結界再び? 今は調子が悪くて結界魔法が使えないけど、あの時は無意識に発動したからあり得ますわね。


「あれら二人は王家の色も、結界魔法も持たずに生まれた。その時点で、これは仕方のない事なのだ」


 何とも言えない複雑な感情が滲むお声で、ラウゼス陛下は仰います。

 だからこそ二人の王妃は激しく王太子の座を、国母という栄光を奪い合っていた。ラウゼス陛下も心を痛めていたでしょう。

 かといって、わたくしもそうですけれど容姿なんて生まれて見なくては分からないし、育つ課程で変わることだって稀にあるのです。

 わたくしは王色の瞳ではなくお父様の色が良かった――なんて、どんなに思っていても詮無いことです。

 この姿は、お母様の生き写し。お父様を偲ぶものはほぼゼロと言っていい。

 ジュリアスが「失礼ながらよろしいでしょうか」と前置きをした。ラウゼス陛下が視線で促すと、口を開く。


「陛下、お言葉ですが両妃殿下はそれで納得するとは思えません。瞳の色は王家の色たらしめずとも、お二人とも緑。手には王印を御持ちです」


「王配候補には上げる。だが、選ぶことはない。息子たちはそれで納得しておる」


「王子殿下たちは了承なさっているのですか?」


 両殿下を説得済みという言葉に、流石のジュリアスも少し声が大きくなった。

 わたくしも驚きです。その、ヒキニート令嬢をしていたので、実際はどうかは少し迷うところですが、ゲームシナリオ上では二人はだいぶ激しい争いをしていました。それぞれ、周囲から強いプレッシャーもかけられていたはずです。


「あの二人は学園の騒動で己を見つめ直し、考えることが有ったようだ。国のために働きたいとは思っているが、王でなくとも良いと思っている」


 ラウゼス陛下の言葉に、ジュリアスは少し思案顔である。

 そういえば、ゲームでもそれぞれのルートで色々と思い悩むシーンがありました。

 うーん、どんなだったかな……エピソードが曖昧です。ラティッチェのお家に帰ればマル秘ノートがあるのですがアレを持ち出すのはちょっと……。

 実は幼少期に日本語で書き留めたものですが、ヒキニート令嬢はあまりにも彼らに関わるイベントが無くて復習する機会がありませんでした。

 それより、食事改革とかファッション改革とかに忙しくて……おっほん!

 お父様がハッスルしたブラッディフェスティバルで完全に本来のルートは瓦解してしまったと判断し、さらに思い返すこともなくなっていました。

 ヒロイン投獄・有罪判判決からの脱獄・指名手配の転落フルコンボが決まっています。

 これで本筋に戻るとか無理ですよね。

 王城を強襲するヒロインとか、カイン・ドルイットの魔物化なんてどのルートにもなかったですわ。

 ……まさか追加パッチや移植版にあったとか? わたくしは初代やり込み派で、それだけのエピソードしか知りません。

 わたくしが悩んでいると、ジュリアスが素早く質問を重ねます。


「ルーカス殿下とレオルド殿下については理解しました。ですが、妃殿下たちは別ということは変わりないのですよね?」


 そうなのです。あの二人は執念深く国母の座を狙っています。

 わたくしで王色を補い、自分たちの王子を玉座へという考えを諦めていないでしょう。それができなければ、王配として召し上げさせて実権を握る気です。

 会う度に感じた、ねっとりとした視線を思い出して、粟立った腕を撫でる。


「それについては、黙らせる。絶対に、必ずだ。」


 いつになくハッキリというラウゼス陛下。思わず顔を見つめてしまうと、今までにない冷徹な眼光がちらつきました。


読んでいただきありがとうございましたー!


コロナウィルスワクチン二回目やばいですよー!

副反応で熱出て関節痛が起きてきつかったです! 解熱剤なかったらヤバかったです……

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