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見透かす人

謀略戦略上等で発破やカマは積極的にかけていくスタイルのジュリアス。

天然要塞誑し砲弾スキル標準装備のアルベルティーナ。



 

「ジュリアス」


「はい?」


「フランは無くしちゃダメよ。わたくし、ジュリアス・フランが好きなのよ」


 フォルトゥナ公爵子息という肩書は、ジュリアスをわたくしの傍に繋ぎとめるための手段でしかないのです。

 基本、貴族が名乗る時は一番力のある爵位を名乗る。派閥を示すという意味もあります。フランという名は、どうして後ろに行ってしまいがちになる。

 わたくしは、それが少し悔しい。

 無意識に唇を噛んでいると、ジュリアスが窘める様に口元に触れる。

 呆れたような、困ったような笑みが少し泣きそうに見えるのは気のせい?


「だから貴女はどこからそういう凶悪な口説き文句を覚えてくるんですか。恋愛や駆け引きについてはドが付くポンコツの癖に」


「くどきもんく……?」


 そんな大層なものではなく、ただ単にわたくしが思わず我儘が口を付いて出てしまっただけですわ。

 恋愛ド素人に何を言っているの、ジュリアス。

 ファザコンを拗らせたわたくしにそんな高等なスキルがあるはずないでしょう!

 思わず見つめ合っていると、先に折れたのはジュリアスでした。

 片手で顔を覆い、深々と溜息をつきます。なにやら、ジュリアスの中で整理ができた模様。


「失礼しました。魔王閣下が直々に監修した永遠の幼女カリキュラムを履修した貴女にそんなモノありはしないですよね」


「なんですの、その永遠の幼女カリキュラムとは」


 わたくし、淑女教育は受けましたけれど? そんな幼児退行しそうなものは履修した記憶はないはずですわ!

 わたくしがジュリアスを見ていると、ふっとシニカルな笑みを浮かべたジュリアスがスッと壁に掛かったあるものを指さす。

 鏡ですわね。周りに複雑なレリーフを施したこの鏡は、インテリアであると同時に邪気を跳ね返すという験担ぎのお守りですわ。


「そこの鏡をよーくご覧になってください。私たちが三人がかりで、全力で落としにかかっても明後日の方向へ飛んで着地する恋愛ポンコツの最終形態がいますよ?」


「馬鹿にされているのはわかりましたわー!」


「その天然要塞と人見知りかつ男嫌いのお陰で変な野郎には引っ掛かりませんが、相手する我々の身にもなってください。どんな秘策・奇策・鉄板パターンすら大敗して自信を何度砕かれたことか」


「わたくしだって、わたくしだって頑張っていますわ!」


 何をどうと言われたら言葉に詰まりますが、いつも真面目に全力で当たっているつもりですわ!

 しかしながら、同時にわたくしは気づいています。自分が、少々おっとりと言いますか、身も蓋もなく言えば非常にどんくさい生き物であるということを!


「今は頑張らなくてよろしい。この病人予備軍」


 むきになってジュリアスに詰め寄ると、とんと額を指で押されました。

 もしかして、揶揄われましたの?

 意地悪ジュリアスが復活ですの? 最近甘やかしモードばっかりだったのにー!


「さて、アルベル様も元気が出たところで朗報です」


「朗報?」


「この前、そろそろ二人が戻ってくるとお伝えしたでしょう? 早ければ三日後にミカエリス様、一週間後にはキシュタリア様に会えますよ」


「まあ!」


「キシュタリア様は一度ラティッチェへ顔を出し、所用を済ませてからとなるそうなので少し予定より遅れてしまうそうです」


「嬉しい、本当に久しぶりですわ! お迎えに行っても良いかしら?」


「それはダメです。会いに行く前に有象無象に集られて、足止めを食らいますよ。警備上の問題もありますし、ミカエリス様の来訪をお待ちください」


「ダメですの?」


「ダメです。良い子で待っていてください――来なかったら、恐らく妨害が入ったとみていいでしょう。そうなれば隠し通路から訪問があります。陽が落ちた以降になる可能性もありますから、くれぐれも体力は温存しておいてください」


 最後の言葉は、吐息交じりの潜めた声でした。

 妨害……そうですわ。ヴァンは投獄されましたが、まだまだ王配狙いの輩はたくさんいます。徒党と言いますか、派閥を組んで邪魔立てする者達もいるのです。

 ヴァンはどうでもいいですけれど、お父様は無事かしら。

 マクシミリアン侯爵を追い詰めて、愚行に走られては困りますが……。


「大丈夫ですよ、我が姫君。仕掛けは済んでいますから」


 顔を上げると冷酷に美しく目を細めるジュリアス。うっそりとしたその笑みが、温かさとか優しさとは遠いものだと分かっている。

 怖いとは感じないけれど、それは心をざわつかせた。


「仕掛け……?」


「ええ――躾のない犬に『お使い』をさせようとしていたようでしたので」


 甘く柔く「そんな博打、してはダメですよ」と耳朶に吹き込み、囁かれる。

 どきりとする。全てを見透かすような視線が、わたくしを貫く。

 さあっと全身から血の気が引く。


読んでいただきありがとうございましたー!

ブクマ、評価、コメント、レビューありがとうございます!

トリオが揃い始める気配。



新型コロナウィルスワクチンの一回目を受けましたが、受けた左腕が痺れています。

筋肉注射だからか?

一回目でも多少は影響あるので、まだの方は休めたら休んだ方がいいかと思います。

二回目は熱や倦怠感がもっと出るそうですので、引き籠って大人しくしている予定です。



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