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嵐のごとく

 切りが良いのでちょっと短め。



「ま、説明は乱暴だったけど、こんなかんじ?」


「最悪なオチまでつけていただき、ありがとうございます」


 へらっと笑いかけてきたヴァニアに、慇懃な笑みで返すジュリアス。周囲に、完璧すぎて威圧感と胡散臭さを覚えさせることに定評のある笑みだ。

 ジュリアスは眼鏡の奥の目を細め、散らばったガラスの破片を眺める。

 足元は飛び散った水で冷たくなり始めていた。


(治療を諦め、匙を投げないだけマシか)


 こぶしを握り締めたジュリアスは、溜息を飲み込む。

 あくまで、これはヴァニアが研究している一環に過ぎない。

 だが、アルベルティーナの状態と符合している点が多いのは、認めざるを得ない。


(俺は結局、何もできないのか?)


「あ、そうそう。姫様に探させている遺跡にも使えそうな魔導書や魔道具があるかもしれないから、あんまり止めないで漁らせてやってね~」


「それを早く言え! そっちの方が戦争が終わるのを待つよりいいだろう!」


「だって僕やセシル以外は、遺跡潜るの反対派が多かったじゃん」


「アルベル様を快方に向かわせる手段があるなら、話が別だ。何なら、俺がついて行く」


「いや、できるだけ姫様一人がいい。本当に深層部に行けるのは、恐らくサンディス王族だけだよ~」

 

「やっぱり殴らせろ」


「だからイヤだって」


 拳を握った、妙にいい笑顔のジュリアスがじりじりと迫ってくる。じりじりと後退するヴァニア。

 その時、控えめなノックと後でそうっと扉が開く。現れたのはローブを目深にかぶった人物だった。


「あのー、ヴァニア様~。お着替え終わりました? 汚さないうちに衣装の回収を……ってぇ! ガリギリケイヴメダカがああああ! おま、おまあああ! テメエ、ヴァニアこの野郎! 生きた化石の魔魚と言われるこの魚が、一匹いくらすると思ってやがんだ、この玉虫目玉野郎!」


 ジュリアスが叩く前に、顔を出した助手らしき女性がヴァニアの顔面を殴った。

 パーじゃなくてグーである。躊躇いが一切なく、顔面に拳をめり込ませた。何なら、助走をつけて殴っていた。

 避けるどころか、受け身を取る暇なく吹っ飛ぶヴァニア。床に立ち並ぶ雑然タワー(主に本、書類)の中に崩れる。


「しかも何この部屋! 何この散乱したガラス……! あああ! ジュリアス様、動かないで! まだ辛うじて生きているメダカがいる!」

 

 助手の女性はほとんど水がない床でのたうち動いていた魚を、必死に拾い集めて水の入ったビーカーにせっせと入れた。

 その剣幕に、ジュリアスは棒立ちになる。

 水槽の中に残っていた魚は、熱湯と石のコンボで絶滅間違いないだろう。助手は這いつくばり、暫く床を徘徊していたが魚を拾い切ったと判断したのか立ち上がって退室した。

 片手に、ヴァニアを掴んで。

 慌ただしいその勢いに、ジュリアスはポカーンとする。

 助手の声に聞き覚えを感じながらも、こんな場所にいるはずがないという先入観と、アルベルティーナの容態の悪さに気を取られて気づくことがなかった。

 休みを貰っているはずのセシル・カルマンが、叡智の塔にいるということを。






 読んでいただきありがとうございました!

 多分次かその次位で新しい情報を告知できそうです!


 ブクマ、レビュー、コメント、評価ありがとうございます! 日々のやる気の糧になります!

 

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