令嬢談義IN学園
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いいの? いいの? とびくびくしながら喜んでおります。どっちやねん。嬉しいです。
ガサツなチキン野郎には繊細なストーリーや甘い恋愛は無理ですが、お付き合いいただければ幸いです。
「王子たちの周りをうろついてる男爵令嬢?
ああ、あのあばごほん! レナリア・ダチェスのことかしら?」
「まあ、レナリア様とおっしゃるの? 巷で話題のシンデレラガールと聞きましたわ」
「しんでれら?」
この世界にシンデレラはないらしい。となると、グリム童話やイソップ物語系統も全般的にないのかな。
物心ついたころ、本は読んでいたけどファンタジーと歴史書を足したようなものばかりだった。童話が少ないのかしら。本自体も貴重というか、羊皮紙が主流で、最近折り紙のために植物繊維系の紙を作るようになった。動物性の紙はちょっと、なんか良心が痛むので積極的に推し進めていきたい――というより、ドミトリアス領のやたらにょんにょん伸びまくる雑草がある。肥沃な土地のそれは、畜産動物も若芽以外は好んで食べない。だが、よく育ったそれは繊維が多くていい素材だそうだ。
羊皮紙はとある魔物がメイン素材らしい。魔物でも怖いわ。角だけとかならともかく、剥製とかダメなのよ。
まだ紙は高級品だけど、童話とかも作ってみようかしら。
前世のパクリ? いいのです、娯楽は大事! トランプをはじめとするカードゲーム系も作成しようかしら。ちょっと和風に花札もいいわね。
「玉の輿という意味ですわ。その方は、王子らからの寵愛目出度い方であり、ずいぶん変わってらっしゃるとお聞きしたのですけれど」
「頭が御目出度いのは確かですわ。次々男性を侍らせ、ハーレムさながらでしてよ。
第一王子のルーカス・オル・サンディス殿下、第二王子のレオルド・ミル・サンディス殿下をはじめ、宰相子息のグレアム・ダレン様・・・あと教師であるフィンドール・トラン、魔法科の特待生のカイン・ドルイット」
「・・・多くなくって?」
「まだいます。最近のお気に入りといいますか、彼女のトレンドがそのあたりなのですわ。
少し前は子爵のアルフレッド・スオルツや、あと騎士のジョシュア・フォン・ダンペールもお気に入りだったのですけど、骨抜きにしたら早々に飽きてしまわれたようでしてよ」
「・・・まあ」
「ジョシュア様たちのような方はもっとたくさんいましてよ。
小動物みたいな清純そうな顔して、男をとっかえひっかえしていますの。
ある程度誑し込んだ男性は、お気に入りはじめ王子たち以外は早々に放置していますけれど」
逆ハーレムルートだ、これ。
これにキシュタリアとミカエリスがいたらパーフェクトやん。嘘やん。ガッツありすぎ。
レナリア嬢のことを教えてくれるジブリールは、汚らわしいものを語るような表情。
そうですわよね、未婚の令嬢が次から次へと男性に近づくなんて。節操がないと思われてしまいますわ。はしたないにも程がある。
あれ? ダンペールってどっかで聞いたことあるような?
「しかも、王子殿下らをはじめとして婚約者を持つ令息は多いのですよ。
下級貴族が言い寄っていい相手ではないのに、失礼なことにあちらから近づいてきたのです。
最初は物珍しがっていた殿方たちも気が付けば手玉に取られ――おかげで、各地で婚約破棄や、貴族の家柄での政略結婚が破綻して非常に学園内の空気は緊迫しております。
この学園は貴族の縮図ともいえます。そして、次代を担う若者が多く集っておりますので、その後の影響はさらに大きくならざるを得ません・・・
婚約者のご令嬢たちも最初は諫めていたのですが、虐めただのと言いがかりをつけてダチェス男爵令嬢を庇うばかりか、婚約者たちを糾弾する始末。
その先導をしているが、かの王子殿下たちなのだから始末に負えませんの」
すごいな、修羅場生産機と化しているじゃないかヒロインことレナリア・ダチェス令嬢。
ちなみに家名にフォンのつく家系はある一定の格式と、経歴を認められた譜代貴族であり、同じ爵位でも新興貴族や成り上がりとは発言力が違う。
今の宰相は、以前の王位継承のごたごたで成り上がった貴族だ。実力派ということかしら。つまりは割と新興貴族である。今のご子息がついている王子が立太子となり、二代にわたり宰相として功績を残せばフォンがつく可能性もある。
「幸い、キシュタリア様やお兄様は昔から初恋を拗らせていますから全く持って靡きませんでしたけれど」
ちらりと悪戯なルビーの瞳が私を見る。どきどきしちゃう。
もしや、ジブリールも知っていたの!? 初恋って・・・・ええええええ?
やっぱり知らないというか、気づかなかったのは私だけなのですか!? お馬鹿丸出しではありませんか! 恥ずかしい!
・・・・でも本当にブラフじゃないの?
「しかし、それほどまでに殿方たちの心を射止めるなんて、さぞ素敵で美しいご令嬢なのでしょうね」
とっさに視線をそらして話も逸らす。
たしかヒロインのキャラデザは濃い栗色の髪に青い瞳のThe清純派ヒロインといった感じだった。保護欲そそりそうな真ん丸な瞳がちょっと垂れていて、首や顎がほっそり、体も全体的に華奢だった。
「あんなの脳みそお花畑生まれが物珍しいだけで、大した容姿ではありませんわ。
お姉さまに見慣れたキシュタリア様なんて、腕を取られた瞬間にすぐさま振り払いましたし、お兄様ですら近づく気配がすると身を捌いて避けますのよ?
抱き着こうとしてあの小娘が顔面から石畳をすべる姿はとても笑えましたわ」
・・・・・・・・じぶりーる、ものすごくひろいんきらい?
ブラックジブリールが降臨している。おほほほ、と優雅に笑ってレースの扇子を手の平で操っているが、空気がどすの利いた感じです。私の可愛いジブリールがああ!?
顔面から滑ったって、大丈夫なの? いくら魔法がある世界とはいえ。
ハーレムルートって失敗すると良くて友情エンド、悪いとヒロイン処刑ルートよね?
その差は各攻略キャラクター全員の好感度。平均値ではなく、一番低い攻略対象に準ずる。そしてR18か否か。
現時点、キシュタリアとミカエリスはダチェス男爵令嬢を嫌厭しているようだ。
ミカエリスは今年卒業だし、キシュタリアは中盤でこの好感度だと相当きついはずだ。もしハーレムルートであればそれなりに好意的に意識されていなければいけない。
ミカエリスの攻略のカギはジブリールの懐柔と、兄妹の仲直り。
しかしミカエリスはジブリールと仲がいい。
ジブリールは自信がないどころか、歩けば人が振り返る美少女っぷりに、ミカエリスが心配過ぎて内心やきもきしちゃうんじゃないかというモテ街道を驀進中。
ミカエリスが時折心配な兄心をお手紙に滲ませている。
そしてジブリールは、剣術大会とかがあるとミカエリスを応援しに社交シーズンでも遠征するほど仲がいい。
ヒロイン、取り入る隙間なくない?
キシュタリアは冷遇する義父の公爵と義姉のアルベルティーナに、たった一人の母親を虐めぬかれて奪われる。その孤独とやるせない怒りを癒すのがヒロインである。
ですが、キシュタリアの母親ことラティお母様はご存命。社交界のマダムの中でも、ファッションリーダー的存在である。キシュタリアの実母だけあって美貌のご婦人だ。そして、アルベルティーナの思い付きで作りまくった美容品で抜かりなく手入れをしている。
ヒキニート娘がおうちでごろごろしているときに、お母様は社交界を颯爽と渡り歩いている。
しかしそんなラティお母様は眉目秀麗で良くできた実の息子よりも、世間知らずのぽやぽやすぎる義理の娘を溺愛している疑惑すらある。お父様の過激な愛情にかすんで知られてないけど、キシュタリアからのお手紙を目を皿のようにして睨みつけ、おかしな真似をしないかとピリッピリしている。私にはそこまでする意味が分からないですわ、お母様。実の息子をもっと信じてあげて欲しい。
そして当のキシュタリアは、義姉を憎悪するどころか好きらしい?
ラティッチェ家で針の筵ではなく、おつむのちょっと弱い義姉のお世話をさせられて立派にフォロー上手となったキシュタリア。
メイド情報によると魔法だけでもお父様に勝とうとかなり精力的に鍛えているらしい。
愛ですわね、とアンナは言うけれど私はキシュタリアが魔法を使ったところをあまり見たことないの。お願いしたら、見せてくれるかしら?
アンナは真顔で「アルベルお嬢様たっての頼みなら、キシュタリア様は断る理由もないかと」とはいっていたけど・・・今もお願い聞いてくれるかしら?
アルベルの魔法って地味なのよね、結界とか守護とか・・・うん、地味。攻撃系はカスッカスだし。おじいちゃん先生は結界に関してはお上手ですよ、と褒めてくださるけど地味すぎますわ~。
「わたくしも使えましてよ、お姉さま!」
そういって手の平にぽうっと炎をともらせて見せた。
おお、ファンタジー! はっ、ジブリールも魔力持ちなら、ジブリールのメギル風邪の薬も必要だわ。備えあれば憂いなし!
「上手ね、ジブリール」
「うふふ、魔法訓練場であればもっと派手にお見せできるのですが残念ですわ」
「まあ、専用の訓練場がありますの?」
「ええ、貴族には魔法を扱える人が多いですから。キシュタリア様なんて、毎回試験で実技も学科もトップクラスですのよ。稀少な複属性ですし、もし公爵家の人間でなければ、王宮魔術師としてスカウトがあったでしょうね」
「すごいのね、キシュタリアは」
成績優秀とは聞いていたけど、これほどとは。
普通学科授業もかなり優秀って聞いていたけど・・・我が弟ながら凄すぎるわ。
ここって宰相子息や殿下たちも通っていらっしゃるのよね? 将来有望株のオンパレードなのに。
「あら、お兄様も火属性の魔法はなかなかですわ。剣技においては、学園で一番です。身内の欲目を引いてもとても優秀でしてよ?」
お買い得品をオススメするように、ジブリールは軽率に兄を薦めてくる。
こんなヒキニートをドミトリアス伯爵様の御嫁に推奨しないほうがいいよ。破滅フラグがいっぱい立っちゃうよ? 漏れなく恐怖の大魔王の舅がついてまいりますわよ?
わたくし、控えめに云ってもお買い得どころか中身は不発弾だらけですのに、意外と周囲は奇特な方が多いようです。リップサービス?
「ジブリール、ミカエリスはわたくしには勿体ないわ」
あんなに真面目で優秀な誠実な人間の人生を巻き込みたくない。
お友達としての時間は十分楽しかったが、それ以上となるとちょっとね。良い人過ぎるのよ。あの人、もし少しでも素振りだけでも見せてしまえば、助けようと手を伸ばしてしまうわ。
そもそも、私自身が歪でないなんて保障はない。
恋愛は人を変えるというし、何かの拍子に私は本家アルベルのような傍若無人の悪逆令嬢となるかもしれない。
そもそも、私の周囲って乙女ゲームっていう設定を差し置いても美形率高くない?
特に、私の周囲のキシュタリア、ジュリアス、ミカエリスは特に見目がいい。目が某大佐になりそうだわ。それぞれタイプが違うけど、もう年々イケメンオーラ通り越した謎のキラキラオーラを出している。
かくいう私も、お父様もお母様も美形。ついでに義母のラティお母様まで美形。美形のサラブレッドの超絶美少女だけど、その中身はコレだもの。ありがたみもないわー。でも、外見だけが数少ない取り柄なので頑張って磨いています。
ジブリールが学園を案内してくれるというので、ご迷惑にならない――人の少ない場所をお願いした。
ヒキニート歴が十年以上ある私はいまだに立派な人見知りだ。
最終兵器お父様がいないアルベルティーナの攻撃力や防御力は紙装甲にも程がある。
ジブリールと一緒にいるせいか、まばらな生徒たちがこちらを見てくるのが非常に心臓に悪い。それに対し、ジブリールが眇めた一瞥を向けると、爵位の低い令嬢令息たちは、視線を逸らすか顔を俯かせて一礼をする。
うーん、ジブリール凄い。お姉様はとても心強いです。
お父様への報告はアンナにお願いして、レイヴンを護衛として連れている。
レイヴンははっきりした年齢は解らないし、多分サンディス王国出身じゃない。異国か、どこかの異民族だと思う。サンディス王国の大多数は浅黒い肌も珍しければ髪も瞳も黒いのも珍しい。どちらか一つくらいならそうでもないけれど。元日本人としては、黒髪黒瞳はとても馴染みがあるけど、稚さのまだのこる顔に少し独特の彫りの深さがある。
そのせいか、とても身体能力が高い様なのよね。
以前、簡単にキシュタリアを組み敷いたし。あの時、キシュタリアが油断していたとはいえ、一瞬にして、抵抗する暇もなくやってのけていた。キシュタリアが得意なのは魔法のようだけれど、剣術や体術も多少やっているはずなのに。
お父様が御付きの護衛に選ぶ時点で、レイヴンが相当実力者なのは確か。
でも出身とか些細な事だわ。レイヴンはとてもいい子なのだから。
身元がはっきりしていて、クリスお母様のころからラティッチェ家にいたドーラ。元々はクリスお母様付きであり、上級使用人のメイドだった。
お母様に仕えていたのに、お母様も私も嫌っていた。お母様との間に何か軋轢があったのか、それとも私の誘拐事件がきっかけであまりにあっさり儚んだことを憎んだのかは解らない。
ドーラに関しては良い記憶なんてないし、嫌なことはサクッと記憶のごみ箱にボッシュートしちゃう派だったけど結局何故だったのかしら。今度アンナにでも聞いてみよう。アンナもメイドだし、女性ならではの情報網があるかもしれない。
ドーラは――ジュリアスたちが排斥したようなのだけれど、その方法がただの解雇なのか、それよりももっと直接的な事なのかは分からない。ただ、私の視界に一切入らない場所に行ったのは確かだ。
修道院に入れば、そんな風に私を色々と守ろうと手を回してくれる人とも離れてしまう。
私は孤独になるだろう。
ジブリール、ミカエリス、ジュリアス、キシュタリア、ラティお母様、アンナ、セバス、レイヴン――お父様とも会えなくなる。
作られた優しい世界が消えるのは怖い。怖くなんてないはずがない。
「どうかしましたか、お姉様?」
「ううん、少し人が多くて驚いたの。余り外に出たことがないから」
「お疲れですか? では、個室のあるサロンで休憩しましょうか?」
「ふふ、ありがとう。大丈夫よ」
心配させてしまった。いけない。つい物思いにふけってしまったわ。
可愛いジブリールの顔を曇らせてしまうなんて、とんだ失敗にもほどがある。
「そうだ、お兄様やキシュタリア様にも折角だから会っていかれたらいかがです? あの二人がいれば、おそらくジュリアスもついてきますし」
「内緒できたの。怒られないかしら?」
「・・・公爵様が共にいらしてる時点で、文句を言える方っているんでしょうか?」
いないね! うちのお父様超絶チートだものね!
例のご令嬢は私にとって害悪扱いをされているっぽいけれど、一番立場の上のお父様がOKしたのだから私を含め誰も怒られないはず!
以前、レイヴンが例のご令嬢に会えば首が物理的に飛ぶとか言っていたけど・・・あれ違う? 誰かの首? どちら様の首? いずれにせよ飛ばさないで欲しい。軽率に飛ぶものではないと思うの。お父様と一緒だもの! 当のお父様が了承しているのだから大丈夫・・・よね?
それとは別に学園で攻略対象である二人に会うのは怖いのよ! それに色々あって・・・
なんでヒロインのレナリア・ダチェス嬢じゃなくて悪役令嬢のアルベルティーナに言い寄っているのか極めて謎だし。
物語の強制力ってあるのかしら?
うーん、でも学園のみんなの様子みたいな。それに、ヒロインことレナリア嬢の攻略度合いも確認したい・・・会いたくないけど。なんだか、周囲の噂を聞くに大変炎上した、いえ、香ばしい行いが多い。
純情ヒロインの皮を被ったやべー地雷女の気配がひしひしとする。
危機管理能力がド底辺といわれる私のへなちょこアンテナですら「おかしくね? やばくね?」とにょんにょんしているのだ。
「お嬢様」
「なに、レイヴン」
「既にジュリアス様にはお嬢様が来ている旨を伝えております。半刻もしないうちにやってくるかと」
「ふぇ????」
なんですってー!!!?
思わず間抜けな声が出たわ! 公爵令嬢のガワが落ちたわ!
レイヴンは淡々という。なんでお嬢様がそんな顔しているの? と不思議そうに首をかしげているその様子は子猫のよう。
ジュリアスが知っているってことは、自動でキシュタリアやミカエリスに連絡網が回っているわ。
一応あの三人って私をめぐっての恋敵のはず・・・? なのよね??? あんまりというか、全然ぎすぎすした気配無いけれど。
やっぱりブラフか!? 恋愛ではなく破滅フラグか!?
どっちだ? 私の明日はどっちにむかっているの!?
修羅場になりませんように! 修羅場になりませんように! 修羅場になりませんように!
流れ星はないけれど、必死にどこにいるか分からない神様に懇願した。
非リア充のヒキニートに、乙女ゲームを三次元化した美麗な貴公子たちのお相手なんて荷が重すぎますわ!
そうじゃなくてもあの三人に命を狙われていたら、きっと私はきっとあっさり騙されて倒されてしまうわ!
おお、あくやくれいじょう! しんでしまうとはなさけない!
みたいことにならないですよね!?
私、男性の純情を弄んではいませんよね!? いつの間にやら悪女していたの!?
・・・・・・・・レナリア嬢ももしやそのクチ? 気づいたら美男子ハーレム? でも、飽きっぽいのかな?
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