死にかける、覚醒する
今回、初めて玲真がまともに攻撃貰います。
オーガ、いわゆる鬼と言われる奴らで基本的に普通の魔物とかより全然強かったり上位互換として扱われる存在である。そんな奴が……
〈グギギギギギギギギギギギ〉
〈グフッ、ガギギギギ〉
〈グガガガガガガガガガ〉
三体もいる。
「構えてはいるんだけど、これってマジで……」
(余計な事を考えているんじゃ無いわ!!来るぞい!!)
〈グゴ!!〉
〈グギィ!!〉
〈グギィ!!〉
オーガリーダーの号令で、オーガAとオーガBが攻撃を仕掛けてくる。どっちか片方の攻撃が直撃したら俺は死ぬわけだ。だったら……
「その腕切断してやるしかねぇなぁ!!」
俺はオーガAの攻撃を避けながらオーガBの懐に潜り込み腕を斬りつけるが
ガキン!!
オーガの皮膚で止められてしまった。
「かてぇ!?マジかよこの刀で斬れねぇのかよ!!」
(お主の筋力よりオーガの防御力の方が高いからじゃ!!後龍破と呼べい!!)
「うるせぇ!!そんなことよりやっぱり無理じゃねぇか!!俺ここで死ぬかもしれないんだけど!!」
(ええい、少しは自分でも考えて動けい!!わしだって考えておる!!)
無責任か!!そんな事を考えていると、またオーガ達が同時に攻撃してくる。
〈グギャア!!〉
〈グギィ!!〉
〈グギィ!!〉
「ああクソ!!焦れったい!!だったら……!!」
ドゴォ!!
(玲真!?何をしておる!!)
俺はあえて、オーガの攻撃を避けなかった。もちろんめちゃくちゃ痛いし、何もせずに直撃すれば俺は死ぬ、だから後ろに飛びながら攻撃をくらった。
「ああクソ!!それでもめちゃくちゃいてぇ!!だけどなぁ!!」
後ろに飛んだ先には、指示を出していたオーガリーダーがいる。そして俺が狙っている場所は……
「眼球は柔らかいだろうが、よっと!!」
ザクン、ブチュと嫌な音がしながらオーガリーダーの眼球を貫く。オーガリーダーは痛みで叫び散らす。
〈グギギャァァァァァァァァァ!!〉
「まず一体目ぇ!!」
そして刺さっている刀の柄の所を思い切りぶん殴る。さすがに脳みそ貫かれたせいかオーガリーダーはそのまま後ろに倒れて絶命した。
「はあ、がはっ、肉を切らせて骨を断つって、こういう事か」
(ドアホ!!失敗してたら死んでたぞ!!もう少し考えんか!!)
ガルゴが怒る理由は分かる。後ろに飛びながら威力を流した筈なんだけど、体力15000から7000まで減った。つまり次貰ったら確定で死ぬ。
「だけど、よぉ、攻撃がこいつから指示が出た時しか出来て無いって事は、こいつが狩りの肝ってことだろうが」
俺は息絶えたオーガリーダーの頭から龍破を抜いた。後二体を仕留め無ければならない。
〈グ、グギィ?〉
〈グゴゴ、グゴォ!!〉
何やら話し合っているが、なんとなく何を言ってるか理解出来る。
「しかし、ああクソ、いてぇ、右腕確実にヒビは入ってる。内臓も何か、気持ち悪い……ごふっ」
この時、俺は生まれて初めて吐血した。何せあんなでかい奴が殴りやがったからな。問題ない訳が無い。ああ、今すぐ寝てしまいたい……。一匹倒すのにここまでダメージを受けている。後二体倒すなんて無理かなこれじゃ……。
〈グギ?グギャギャギャ!!〉
〈グゴォ!!〉
ああ、一匹が俺に攻撃しようとしている。避けたってまたもう一匹が攻撃してくる。その内俺がぶっ倒れる。逃げたってこのダメージじゃ他の生物に狩られる。ここで終わりかなぁ……?眠いなぁ……。
(玲真!!寝るんじゃ無い!!諦めるんじゃ無い!!早う避けんと本当に……!!)
ビュオン
〈グゲゴ!?〉
オーガ達は困惑していた。確かにリーダーは死んだが、敵は動けなくなっている。ならば後一回殴れば死ぬと、そう高をくくって攻撃を仕掛けたが、風切り音と共に死にかけていた敵が目の前から姿を消したのだから。
(な、何じゃ、これは、玲真?お主は一体……)
ガルゴも動揺していた。自らの死を確信し、諦めかけていた少年が、全速力で動いているのだから。
「諦めるってよぉ……もう、飽きた」
俺は平凡に生きて死ぬ。決して主人公にはなれない。そう諦めていた人生に、こんなチャンスが回ってきた。それが高々オーガに終わらせられる?
「ふざけんじゃねぇ……諦められるか!!この程度でよぉ!!」
ブオン、スパン
一閃、全速力で振るった龍破が、今度はオーガAの首を刎ねた。先ほどは硬い皮膚で止められたのに、いともたやすく切断したのだ。
「筋力が足りねぇならよぉ……勝ってる所で代用させて貰うぞ」
オーガBは、目の前で同胞を二体惨殺した相手に対し、憎しみよりも恐怖を感じていた。己よりも小さい人間の子供に。その恐怖が、オーガBに逃走を選ばせたが……
ブオン、グチャッ
〈グギャァァァァァァァァァ!!〉
逃げようと後ろを向いたところを、今度は全速力で膝を蹴り抜く。オーガBの膝はぐちゃぐちゃになり立てなくなり絶叫しながら倒れ込んだ。
「おいおい……先に仕掛けてきたくせに逃げようなんざぁ……甘いんだよ!!」
スパン、と、オーガBの首は切断され、ゴトリと地面に落ちる。そして、玲真は地面に座りこむ。
(お、おい、玲真?大丈夫か?)
「内臓に、ダメージがあること以外は、大丈、夫、しかし本当に、勝てるとは、ね………」
(玲真・・・・?眠りおった・・・・・先程のあの動き方、本当に素人じゃったのか?普通の人間に攻撃の威力を後ろに流すなんて出来んぞい……此奴は一体……)
その後、玲真は朝になるまで寝続けた。目が覚めた彼は躊躇いなくオーガ達を解体して肉の部分を食べたのだが……固くてまともに食べれたものでは無かった様子でした。
体力15000が7000に減っただけに見えますが、攻撃を流した上で8000減っているので本当に死にかけていたんですよね。そろそろ動きが素人では無くなってきました。