第九話
爆発音のした中庭まで来てみると他にも大勢のメンバーが集まっていた。砂煙でよく見えないがメンバーが3人クレーターの近くに転がっている。
「ちょっとちょっと~。一体どうしたのよ?」
後ろからミズキもやって来た。
さっきまで爆発音にビビッてたのに立ち直りが早いな。
「俺が知るかよ。状況を把握しているところだっての。」
煙が晴れてくるとそこには女の子がいた。
ん?あ…ヤバい。
「おい。ミズキ後のことはよろしくな!んじゃ、またあとで!」
「え、え?ち、ちょっとどこいくのよ!?」
現場から逃げ去ろうとする俺にミズキが声をかけて来るが構ってられない。
「お兄ちゃーあん!!」
見たくもないが、顔をそちらに向けると同時に腹部が激痛と衝撃に襲われる。
「げふっ!」
み、みぞおちに入った…
「お兄ちゃん久しぶり!前にお店来たときにいなくてごめんね。あの時は買い物に行ってたんだよ。」
俺の腹の上で暴れているのはレティ。ゴドフリィのところで働いている、俺より年下で茶髪ショートカットの女の子だ。
なぜだか俺はこの子にお兄ちゃんと呼ばれ、なつかれている。
「なあ、レティ。俺の上からどいてくれないか?」
「あ、ごめんね。お兄ちゃん。」
どいてはくれたが立ち上がると俺の腕に腕を絡ませてくる。
こいつには何を言っても無駄だからもう何も言うまい。
「んで、なんでお前がここにいてうちのメンバーをボコッたんだ?」
「もちろん、これのためだよ!」
レティが突き出してきたのはうちのギルドのメンバー募集の張り紙だった。
あ~、頭が痛い。なんでこうなるのやら。
「お前一体どうやってうちのメンバーを倒したんだ?あいつらもそこそこ強いんだぜ?」
「来て。『アマノハバキリ』。」
レティが言うとその手に一振りの刀が現れた。
あれは伝説級の武器か…!
「じゃ~ん。私の愛刀『アマノハバキリ』です。すごいでしょ?」
「あーすごいよ。うん、お前はすごい。」
「褒めて褒めて。もっと褒めて!それと頭なでて。」
「はいはい。」
俺はもう言われるがまま頭をなでている。
正直、追い出してしまいたいところだが実力もある上に大勢の目にさらされた後では、もう手遅れだ。
チキショウが!もうやけくそだっての。
「ミズキ!そいつらの様子どうだ?」
「3人とも軽傷だけど念のため医務室に連れて行っておくから。ほらそこ、突っ立てないで手伝いなさい。」
ミズキは何人か連れて医務室へ向かっていった。
全員グレイの部隊メンバーでよかった~。あれ、やられてるのがミズキの部隊だと敵討ちとか言って喧嘩売りかねないからな~。
「レティ。書類その他もろもろを作るからついて来い。」
「はーい。お兄ちゃん。」
「へ~。ここがお兄ちゃんの部屋か~。」
「おい。そこらへんには触媒が入ってるんだから触んなよ。」
「はーい。」
「後はこの契約書に名前を書くだけだがお前、本当にいいのか?」
「あったりまえだよ。お兄ちゃんのためにわざわざ『アマノハバキリ』まで手に入れてきたのに。今更変える気ないよ。」
レティには昔ほんの少しだけ魔術の基礎を教えていた。
筋はよかったが俺の目の届かないところで勝手に召喚魔法を行使していたから教えるのをやめた。
「はい!書いたよ。」
「ん。それじゃあ、お前の部屋まで案内するからな。」
「はいはーい。」
「レティ。当然のように腕を組むのやめてくれないか?」
「だが断る。なーんちゃって。」
「ハア~。ったく、なんでこんなのばっか集まってくるんだ。」