第八話
「全員注目!」
アーヴィングの号令が飛ぶ。
俺は今、中庭でメンバー全員を前に演壇に立っている。
「はい注目!今月の収入で余った予算を装備の新調とメンバーの増員に回したいと思う。」
そう言うと、ガヤガヤと騒がしくなってきた。
「どんな装備だろうな?」「やっとか俺のもうボロボロだぜ。」「可愛い子が来てほしいな。」
「はいはい。静かに!装備はこれです!」
俺の取り出したのは小銃だ。
「ボルトアクション式、装弾数は5発。ま、詳しいことはアーヴィングに聞け。」
「「「おお~!」」」「俺は絶対に新調だな。」「私は現状のスタイル崩したくないしな~。」
皆悩んでいるようだ。
まあ、そうだろうな。武器が変わるということは自分のスタイルが変わるということだからな。
「装備の新調は強制じゃないからあまり難しく考えるなよ。試射したいやつはグレイに言ってくれ。」
「早速後で試射してこよっと。」「あ、俺も俺も。」
「メンバーは30人くらい増やそうと思っている。街の掲示板にもすでに張り紙を貼ってるからギルドに入りたいってやつがいたらその時は、いつも通りやってくれ。」
最後のワードでメンバー全員が嫌な笑みを浮かべた。
「ギルドマスター。本当にいいんですかい?」
そう聞いてくるアーヴィングもニヤニヤと笑っている。
「もちろんだ。それでは解散!」
「銃は便利だけどやっぱ面倒くさいな~。」
俺は大量の銃とメンバー増員の費用やらなんやらの書類をまとめていた。
「銃1丁5万ガルでこれを150丁だから750万ガルか~。またどえらい出費になったな~。ま、いいか。その分働いて返してもらえばいいわけだしな。」
「ギルマス!一体何考えてんの!?」
書類をやっとまとめたところでミズキがドアをぶち破って入ってきた。
あ~やっぱり来たか。
「お前…何かあるたびにドア壊すのやめてくれよな。修理費は、お前の給料から差っ引いとくからな。」
「ええ~!?それだけはどうか勘弁してよ。ただでさえ少ない給料が更に少なくなっちゃうじゃん。」
ミズキが泣きそうな顔で懇願してくる。
ってか…は?
「それは何か?俺の給料の分け方に不服があるってか?完全歩合制にされたいのかよ?ああん?」
「そ、それはそのう…。」
ミズキは怯えた猫のように縮こまっている。
暇つぶしにしばらくミズキをいびっていた。
「んで、何の用だよ?」
「ああ、そうだった。標準装備を銃に変えるってどういうことよ?」
「いや、便利だから?」
「はぁ?そんな理由で大金はたいて買うわけ?」
「いやいや。伝説級の武器をメンバー全員が持っているってんなら話は別だけが持ってるの俺とお前だけだろ。それに、契約もしてない奴がまだいるからな。」
「契約はまだしも全員が伝説級の武器ってのは無理に決まってんでしょ!」
「そうだろ。だから銃ってわけだ。ほら、さっき言ったろう強制じゃないからお前も気にするなよ。それじゃ。」
俺は早々に話を切り上げて部屋を出ていこうとした。
やっぱり、面倒くせーな。早く逃げてしまおう。
「何逃げようとしてんのよ。まだ、話は終わってないでしょうが。」
ドン!ドン!ドン!ドン!
裏庭のほうから銃声が聞こえてくる。
「ほれ、まあまあ需要があるだろうが。使いたきゃ使う嫌なら使わないでいいじゃんよ。」
「わ、わかったわよ。それはそれとして何で私にだけ相談してないのよ?」
「だってお前…絶対に反対するだろうが。」
「当り前でしょうが。だいたい…」
ドッカァァン!
ミズキがグダグダ話し出そうとしたところで爆発音が砦全体に響き渡った。