第六話
ドラゴンには数多くの種類がいる。アナンタのような新生龍や炎龍、神龍など色々いる。神龍などは滅多に姿を現すことはない。
仮にドラゴンが現れたらドラゴン討伐専門のギルドや騎士団の精鋭が撃退している。
翌日、朝からの話題はアレックスがドラゴンと契約したことでもちきりだった。
「おい。聞いたか?」
「ああ。アレックスが新生龍と契約したんだろ?一体どうやって契約したのやら。」
「ギルドマスターはどう思います?」
「ん?結構苦労してたぜ。」
「その口ぶりは現場に居合わせたんですか!?」
「んな事より、お前ら飯食ったんなら仕事してこい!じゃあな。」
今日は朝からアナンタの治療をしなきゃいけないのに構ってられるか。
そして今、俺はアレックスの部屋の前にいる。
「おい!アレックス!早くドア開けやがれ!」
しばらく待っていると中から眠たそうな顔をしたアレックスが出てくる。
「は~い。なんのご用でしょうか~?」
ブチン。
俺の中で何かが切れる音がした。
ゴッ!ガスッ!ガン!
「お前いい加減にしろよ!?殴るぞ!?」
「す、既に殴った後じゃないですか…」
床に倒れ伏したアレックスが抗議の声を上げている。
「喧しい!昨夜は処置中にアナンタが暴れてろくに眠れてねえんだよ!」
「そうでしたか。それは申し訳ありませんでした。」
「んで。あいつは?」
「あいつでしたらあそこです。」
そう言ってアレックスの指さした先にはベッドの上でシーツにくるまれて幸せそうに寝ている金髪の女の子がいた。
これはいわゆる朝チュンってやつだな。
「あ~あ~。お前ついにやっちまったのか。俺もついて行ってやるから騎士団のとこに自首しに行くぞ。」
「ちがいますよ!アナンタです!本来の姿よりも人の形のほうが楽だし契約者の近くにいると回復が早いって言って昨夜ベッドに入って来たんです。」
「そして一夜を過ごしたと?」
「それは流石にヤバいと思ったんで自分は床で寝ましたよ。」
「ふぁあ~、我が主よ。一体何をしているのだ?」
俺たちの話し声のせいでアナンタが起きてしまったようだ。
「ああ、すまない。おこしてしまったか。でも、ちょうどよかった。ギルドマスターがお前の治療をしに来てくれたぞ。」
それを聞くなりアナンタの眠そうな表情が一瞬で消え、代わりに俺のことを睨んできた。
「調子はどうだ?まぁ、昨日さんざん暴れまくったんだから大丈夫だろ。」
「当然であろう!貴様ごときの助けなどを借りなくてもこのくらい自然に治癒するわ!」
「随分な物言いだな。お前が今こうしてご主人様と話せてるのは俺のおかげなんだぞ?」
「ぐっ…」
アナンタがにが虫をかみつぶした表情で俺を睨み付けてくる。
ふふん。俺の圧勝だぜ。
「とにかく、今から仕上げの治療を施すから大人しくしろよ。」
この後、すぐに治療を始め昼前には終わった。終始アナンタは嫌そうな顔で治療を受けていたがアレックスがいたおかげで暴れることはなかった。
俺は、依頼のあった村まで来ていた。
村につくとすぐに村長の家に通された。
「あなたが私たちの依頼を受けてくださった方ですな?」
俺の対面の席に座るこの人が村長のようだ。
どの村の村長さんもみんなハゲてるのかな?
「ええ。私がギルド『エスペランサ』のギルドマスターです。」
「私がこの村の村長です。わざわざギルドマスターさんが来てくれるとは頼もしい限りですよ。」
「まあ、そんなに期待しないでくださいな。失敗したときは後任として腕利きを派遣しますので。」
「では、詳細をお話しします。最近周りの村がゴブリンなどの魔物の集団に襲撃される事件が相次いでおりまして、その集団がこの村に向かっている目撃情報があり襲われる前にどうにかしてもらいたいと思い依頼したのです。」
「ふーむ。敵の居場所と数はわかりますか?」
「目撃情報によると西の森に50ぐらいの集団がいると…」
「わかりました。早速退治してきますね。」
「ご健闘をお祈りしています。」
俺の愛馬『戦』で移動すること1時間。
結構遠かったな。ここが村長さんの言ってた西の森か。
「しっかし、この森深いな。」
しばらく進んでいると前方に灯が見える。
用心して顔を覗かせてみると森の開けた場所でゴブリンたちがキャンプファイヤーを中心に宴を開いていた。
『コノ前ノムラハ ドイツモ逃ゲ惑ッテバカリデ 面白クナカッタナ。』
『マッタクダ。今回ハ 少シグライ 楽シメルト イイナ。』
『『ギャッギャッギャッギャッギャ!』』
そう言って襲った村の人間をでキャンプファイヤーをしていた。よく見ると周りにもいくつか死体が転がっている。
今すぐ飛び込んでここを血の海にしたかったがすんでのところでこらえた。
奴らの様子からしてまだしばらくは移動しないようだ少し準備をするとしよう。