第三十八話
俺たちはミズキたちが向かったのとは別の入り口からパンノニア艦内に侵入した。
次々と眼前に立ちふさがる敵を達を排除しながら、ブリッジの制圧を目指して進む。流石に敵の飛行艇だけあってひっきりなしに敵が湧いてくる。
「フッ!」
ヒルダが剣を振るうたび敵が倒れ伏す。ここまで来る途中で20人以上を相手にしてきているがまだ、中心に近づいている気がしない。
「ったく、どんだけ改造したんだ。元の型と全然違うな。」
「班長、ヒルダさん。隠れてください、敵がいます!」
クラムが小声で注意をする。数秒差で右側にあった通路の敵と鉢合わせするところだった。
そのまま敵が通り過ぎるのを待っていると
「おい、敵が艦内に侵入したぞ!」
「甲板にいた奴らは何してるんだ?場所は!?」
「わからない!既に何人もやられてる!」
「急いで探し出すぞ!」
(ふむ、ミズキたちはまだ見つかってないか…よし。)
近場の伝声管を手に取り、「敵は機関室に向かっている!全員そこを守れ!」と叫ぶ。敵の目をブリッジから逸らそうと試みるがこれに引っ掛かるのは人に命令を与えられなければ動けない者だけだろう。
「班長…酷いことしますね。」
「主…」
「2人ともそんな目で見るなって。これは、ミズキたちの腕を信頼してのことだ。」
「それにしても…」
「やりすぎでは?」
「お前らはあいつらの事を信頼してないのか?」
「「…」」
「んじゃ、問題ないな。こっちも仕事を再開するぞ。」
2人ともジト目で俺の事を不満そうに見ていたがミズキとカインのコンビが相手だとあってかそれ以降は反論しなかった。
敵を機関室に向かわせたのが効いたのか、思いのほか敵と遭遇することなく第一目標の武器庫までたどり着くことができた。見張りがいて、鍵もかかっていたがクラムが魔術で敵ごと鋼鉄の扉を爆破して破壊した。
「おお~!やっぱ、武器庫っていいな。こう、何ていうか武器がズラリと並んでいると壮観だ!」
「その気持ちわかります。」
武器庫には剣、槍、弓、クロスボウ、銃。おまけに戦闘で使う予備の魔力結晶に召喚術用の触媒、見慣れない武器もある。だが、その中でもひときわオーラを放つ厳重に封印された檻の中に剣があった。剣と言ってもただの剣ではなく、刀身から左右に3つずつ刃が生えている剣だ。この形状をした剣は七支刀といいこれについてタマモから聞いたことがある。
タマモの管理していた神社で祭られていた剣で最近になって賊が神社に忍び込み警備を皆殺しにし、剣を奪っていったらしい。銘を『六叉の鉾』と言っていた。
封印は面倒なものだったがクラムが朝飯前と言いながあっさりと解除してくれた。
(もしかすると、この剣はタマモの所のやつかもな。ま、少しくらい使ってもいいよな。)
六叉の鉾の柄を握る。途端に常人なら命にかかわる量の魔力を剣に吸い取られた。いきなり大量の魔力を失ったことで頭がクラクラして少しふらつくがヒルダが支えてくれた。
「主。大丈夫ですか?」
「ああ、何とかな…。こいつ馬鹿みたいに魔力を食いやがる。」
「班長。この後も戦闘が続くのを考えると軽率ですよ。」
「フッ、ぐうの音も出ないな。だが、ここにある魔力結晶をいくつか貰って行けば完全な契約は無理でも仮契約は済ませられる。そうすれば、幾らか戦力になるだろ。」
「無理しすぎないでください。」
「大丈夫だ。問題ない。」
武器庫にあった魔力闕所を遠慮なく六叉の鉾に注ぎ込み、無事に暴走することなく仮契約を完了させた。
剣が使い手を選ぶというが全くその通りで特に魔剣のレベルになると仮に契約できても完全に制御できないことの方が多い。制御できても対価として大量の魔力などを要求される。そうでなくてもそれくらい価値のある物が必要になる。だが、ひとたび剣に認められると対価はほんの少しの魔力でよく、その剣の本来の力を引き出すことができるようになる。
正直言って今までに魔剣などの伝説級の武器を完全に使いこなしたものはソレを最初に手にしたもの以外はほとんどいない。エクスカリバーを石から引き抜いたのがアーサー王だったように、クー・フーリンがゲイボルグを投げれば30本の鏃になって敵を貫くように。
持つべきものが持たなければソレは本来の力を発揮しない。
二十九話の直しをしておきました。
以前指摘があったにも関わらずそのまま放置してしまい誠にもう仕分けありませんでした。
これからもどうかよろしくお願いいたします。