第三話
イスラに戻った俺は中庭にある木の下で昼食を食べていた。
何気なく周りを見渡すと他にも昼食をとっているメンバーが見て取れた。
「さて、今日は俺の好物のから揚げか。いただきます!」
から揚げに手を伸ばそうとした瞬間目の前からから揚げが消え失せた。否、目にも止まらぬ速さで奪われた。
「やっぱりうちのコックが作る飯は美味しいなー。ギルマスー。ご馳走様でした。」
頭の上から声が降ってきた。
頭上にいる強奪者を見やるとちょうど、降りて来るところだった。
「人の飯を勝手にとってくな!それも、俺の好物のから揚げとは!」
「油断してるほうが悪いのよ。キャッ!」
飛び降りようとしたのか、足がもつれて落っこちてきた。
あ、今日は爽やかな水色のパンツですか。
今、目の前でのびているのはミズキ。龍人種。少し背が低く活発的で何かというと俺にちょっかいをかけてくる。
「痛たたた。頭打った~。」
「自業自得だろうが。目眩とかするなら医務室行って来いよ。んじゃあな。」
後ろでミズキが騒いでいるようだが面倒なことになりそうなのでとっととその場を後にした。
廊下を歩いていると向こうからアーヴィングがやって来た。
「よう。アーヴィング。飯食ったか?」
「いや、ロビーで受付見てたんでこれから食べに行くところですよ。そういえば、ギルドマスターに丁度いい依頼が来てましたぜ。」
「え、俺に?」
「ええ。雑魚の魔物が出没しているらしいんです。今日、武器を取りに行ったんでしょ?試射もかねて行ってきてくださいな。詳細は明日、現地で依頼人が直接説明すると。」
「わかった。その依頼は俺が受けておく。そうだ、グレイ知らないか?」
「あー、あいつなら裏の訓練所で珍しく教官をしてましたよ。」
裏庭に行ってみると多くのメンバーが訓練を行っていた。格闘術で殴り合いしている者もいれば使い魔同士を戦わせている者もいる。サモナーというと自分は後ろで使い魔を操っているイメージがあるが使い魔と一緒に戦ったり、自分で戦い使い魔にサポートをさせるなど色々なスタイルがある。
その訓練をしている一画でスケルトンの集団が乱れた動きをしていた。
近づいてみるとグレイが指導をしていた。
「あ~、そうじゃないんだよ~。下級の使い魔は心が乱れると動きにも乱れが出ちゃうんだよ~。一度、深呼吸して改めてやってみて~。」
指導を受けていたメンバーが言われた通りに深呼吸をして再度、下級使い魔のスケルトンを呼び出した。先程までとは違い術者の思いどおりに動いている。
「そうそう。やればできるじゃないか~。君は戦いになると不安になって上手く召喚できいようだったから、早く自分だけの使い魔を探して契約することをお勧めするよ~。」
「ご指導ありがとうございました!」
「それじゃあね~。」
そう言ってグレイは俺のほうへ駆けてきた。
「お前が教えてるのなんて珍しいな。」
「いや~、昨日の戦争で危なっかしいのがいたから少しね~。」
「そうだったか。ほら。頼まれてたお菓子だ。」
街で買ったお菓子の入った袋を渡した。
「ありがと~。いつも悪いね~。」
そう言いつつ、早速お菓子を食べ始めた。
「そう思うならたまには自分で買いに行けよ。」
「そう言わないでよ~。愛してるよ~ギルマス~」モグモグ
「口に物を入れながらんなこと言うなっての。」
「アハハハ。それじゃあね~。」
そう言うとグレイはどこかへ行ってしまった。