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俺のギルドの活動日誌  作者: 幻夢
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第二十九話

「はー、面倒くせ。」


今、目の前でムルムルとヒルダの決闘が始まろうとしている。昨夜、依頼から帰って来て今日になり決闘することになった。

なんで厄介ごとばかり起きるのかと考えながら目の前の光景に意識を戻す。

右にムルムル、左にヒルダが立って決闘の準備をしている。どちらも一目でわかるほど殺気を放っている。

ヒルダには俺の第一使い魔としてのプライドもあって、後から入ってきたムルムルに気に食わないところもあるんだろうが、ムルムルも自分の力に自信があるのかヒルダに対して挑発的な態度を取っている。


「んじゃ、そろそろ始めるが…いいか?」

「わたくしは問題ありません」

「わたしも右に同じです。」

「ヒルダさん。こう言っては何ですが、ここは退いた方がいいのでは?」

「ムルムル。あなたには身の程をわきまえてもらう必要があるようだ」

「おい、始める前から喧嘩をするな」


今のやり取りで場が一瞬触発の状況になった。

ヒルダ、ムルムルが互いに自分の腰に吊るされている剣の柄に手をかけいつでも相手に一撃を決められるようになっている。

決闘の場である訓練場のフィールドの周りには噂を聞きつけたメンバー達が仕事そっちのけでギャラリーとしていつ決闘が始まらないか、今か今かとそわそわしている。


(あいつら仕事しろよ…)


「決闘を開始する前にルールの確認をするぞ。勝利条件はどちらかの戦闘不能に陥った場合。また、どちらかが降伏を宣言した場合。魔術の使用についてはムルムルが俺と仮契約の為、使用は不能とする。」


と、俺が決闘の詳細を説明しているとスッとムルムルが手を上げる。


「ん?どうした?」

「魔術の使用についてなのですが、許可していただけませんか?」

「それだとお前が不利になるがいいいのか?」

「お気になさらず」


通常、仮契約の状態で使い魔が魔術を使うことになると完全に契約している場合と違い術者からの魔力供給が自分自身の体内にある魔力を使うことになり、かなり厳しいはずなのだがそれを構わないとムルムルは言う。

その行為を見たヒルダから一層の殺意を纏ったオーラが背中からひしひしと感じられる。


「わかった。魔術の使用を許可する。」

「ありがとうございます」

「それでは、両者位置につけ」


ヒルダ、ムルムルがフィルールドの左右の位置に着き、腰に提げてある鞘から剣を引き抜いて戦闘態勢を取る。


「決闘開始!」


開始の宣言とともに手を振り下ろす。その瞬間、両者が爆ぜた。

地面がえぐれ、土が舞う。

ヒルダの煌めく鋭い突きがムルムルの頭を吹き飛ばさんと一直線に吸い込まれていく。それをムルムルは剣の腹を盾でたたいて軌道を逸らす。続けてがら空きの胴を狙っての突きを繰り出す。だが、ヒルダは左手でシールドを張ってギリギリ防ぐ。防がれたとわかるとムルムルはいったん距離を取るためかヒルダを蹴り飛ばす。

ムルムルの魔力で強化された蹴りは諸に食らえば重傷は確実だが蹴りが直撃するときヒルダが極小のシールドを張って防いでいたのを俺は見逃さなかった。


「どうしましたかヒルダさん?この程度ですか?」

「…フゥ…」


ムルムルは油断してヒルダに歩み寄ったところでヒルダが小さく息を吸い込んだ。ヒルダが魔力を足元で爆発させその推進力を使ってムルムルの足を払う。一瞬、宙を舞ったムルムルに剣の一撃を叩きこむ。肩が切れて血が溢れ、流れ出している。ムルムルはソレを確認すると恍惚の表情を浮かべる。


「もっと!もっと強い痛みを下さい!これくらいでは物足りません!」

「わたしは貴方のために戦っているわけではない!」


ここからまだ剣での戦闘がしばらく続いた。


「お兄ーちゃん!」

「レティか。お前も剣を使うならこの戦いをしっかりと見ておけよ。勉強になるからな」

「凄いよ。わたしにはあんな風に動けないよ」

「そうか?お前なら稽古を積めば出来るようになると思うが…今度訓練を見てやるよ」

「本当!?ありがとう!ところで、お兄ちゃんはどっちに賭けてるの?」

「あ?賭けてるやつがいるのか?」

「うん。ミズキさんが胴元をやってたよ」

「あいつ…俺はヒルダに20枚賭けておいてくれ」

「オッケー。やっぱりね」


戦いは魔術戦に移行していた。


「『ブリザードランス』!」

「『ライトニングショット』!」


ヒルダの放った氷槍がムルムルの撃ち返した雷球が撃ち落とす。

そうして、終わりの見えない応酬が続いているがしばらくしたところで撃ち合いが中断された。見ると2人とも肩で息をしていた。状態から次の一発が最後になるだろう。


「この、しぶとい…!」

「まだ…まだ、いけますよ!」

「『ホーリーブライト』!」

「『ダークネスストライク』!」


まばゆい光と闇の濁流がぶつかり、どちらも互いを押し切ろうと段々と勢いを増していく。火力が最高点に達したところで目をつぶっても眼球を焼かれるような光と砦全体を震わす爆音が響き、大爆発が起きる。

煙が晴れると中心には剣を支えに片膝をついてボロボロになっているムルムルとヒルダがいる。


「いい加減に…倒れろ…!」

「さい…こう…です!」


2人ともが倒れて引き分けになるかと思ったがムルムルが糸が切れた人形のようにその場にバタリと倒れ、ヒルダもそれを見届けると安心したのか気を失って倒れた。


「おし、勝者はヒルダ。これにて決闘は終わり!全員仕事に戻った戻った!」


ギャラリーから笑い声や悲しみの声が聞こえる。

賭けに勝った奴はかなり儲けただろう、逆に負けた奴はどれだけつぎ込んだと思うくらい泣いている。


「ったく、この後の仕事に支障が出るな」

このシリーズ「俺のギルドの活動日誌」の外伝の様な話も書き始めました。「僕が異世界に飛ばされた先で」のタイトルで書いているので気が向いたら読んで下さい。万に一、億に一でも読んでもらえれば感謝感激の雨嵐です。

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