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俺のギルドの活動日誌  作者: 幻夢
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第二十四話

魔方陣から呼び出されたのは緑の鎧を身にまとった騎士だった。腰に剣を提げ左手に盾を持って頭には兜を被っていて顔はわからない。

その騎士は俺を一瞥すると周りを見渡し、最後に『イブリース』の邪教徒たちを見た。


「おお!そのお姿はムルムル様とお見受けします。私共は『イブリース』。あなた方『ソロモン72柱』の偉大な悪魔を崇拝しております。既にスラスト様等をお招きしています。どうか私共と一緒に来てくださいませんでしょうか?」

「…。」


ムルムルと呼ばれた騎士は少し考えるそぶりを見せた後、首を横に振った。


「そうですか…ならば仕方ありません。手荒なことはしたくなかったのですがあなたが他の方に使われると厄介なことになるので実力行使と行きましょうか。」

「…。」


リーダー格の男がそう言うと周りの部下たちが武器を構える。

シドとタマモが俺を見て来るが、今は手を出すなとアイコンタクトで伝えておく。

うーむ。ムルムルか…敵ではなさそうだがここからどうするのか。


「者どもムルムル様を捕らえなさい!」


邪教徒はムルムルの鎧の隙間を狙って短剣を突き出すがそれを避けられて、腕を掴まれる。そして肘をたたき下ろされ戦闘不能になる。続けて両脇から2人同時に剣を振り下ろしてくるが敵の腕を掴んで止めると思い切り引き寄せて互いの腕に剣を刺させる。後ろからウィザードが上級の火炎魔法をぶっ放してムルムルに直撃させたが防御魔法を張っていたらしくその身には傷一つなかった。

上級魔法まで難なく防ぐとか本当に化け物だな。

そうして、邪教徒どもを全員倒すとムルムルは俺の方に歩み寄ってきた。

思わず俺はグレイヴに手をかけたがここで刺激するのはマズイと判断して平静を装った。だが、ムルムルには見透かされていたようだ。


「そのように気張らなくても私は戦う気がありませんよ。」

「それはどうだろうな?」

「それなら構えていただいても結構です。それよりあなたが私を呼び出したんですね?」

「…そうだ。何だ?対価の要求か?」

「そうです。」

「それは私が…!」

「アリシア。経緯はどうあろうと結果的に呼び出したのは俺だ。」

「対価は今夜受け取りに参上します。」


ムルムルはそう言うと姿を消した。

残った俺たちの間には微妙な空気が流れている。


「そちはいいのか?悪魔との契約は最悪魂を奪われることになるんじゃぞ?」


いつもは俺には大して関心を抱かないタマモもさすがにこの時は俺のことを心配してくれたようだった。


「まあ、なるようになるだろ。魂や命を対価にするのは回避して見せるさ。」

「私が調査に行こうなんて言わなければあなたが死ぬことも…。」

「勝手に殺すなってーの!」


シドは何も言わずただ見ているだけだったがいつもとは俺を見る眼が違っていた。


「イタタ…。ほれ、魔道書も回収したし帰ろうぜ。」


帰りはアリシアが飛行艇を手配してくれたおかげでこの日のうちに本拠に帰ることができた。

夜になり俺はギルドマスターとしての机仕事をこなしている時だった。

なんとなく気配がして顔を上げると緑の騎士が跪いて俺に頭を垂れていた。


「来たか。茶でも飲むか?」

「いえ、遠慮させていただきます。」

「そうか。なあ、部屋にいるときは兜ぐらい脱いだらどうだ?」

「それもそうですね。」


ムルムルは兜に手をかけスポッと外した。

顔を見ると予想外にも女性だった。

髪色も鎧と同じで緑色で、腰より少し上あたり。それをうなじの方で縛っている。


「女だったのか。」

「ええ、気づきませんでしたか?」

「ああ、声は兜でくぐもって男にも聞こえたし、ガチガチの騎士甲冑だとな。」

「そうかもしれませんね。」

「んで、対価の要求は一体何なんだ?」

「そうですね…わたくしを苛めてください。」

「は?」


俺はムルムルが何を言ったのか理解できなかった。否、理解したくなかった。

いや、だってそうだろ大真面目な顔をした美人が何を欲しいと聞かれて「自分を苛めて欲しい」と答えるなんて「何て残念な美人なんだろう」と思いたくないだろ!


「…他の要求はないのか?」

「はい。これだけは譲れません!」


俺は一体どうしたらいいんだろうか?遺跡で見たムルムルの力は強力だ。剣の腕はヒルダといい勝負をできるレベルだろう。

その後さんざん悩んだ挙句ついに俺は覚悟を決めた。

この夜俺の部屋を中心として砦全体に歓喜に満ちたムルムルの喘ぎ声が響き渡った。

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