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俺のギルドの活動日誌  作者: 幻夢
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第十九話

俺はアリシアと初めて会ったときのことを思い出していた。

俺は昔、軍にそこそこの階級で勤めていた。だが、内乱で国が亡び職と住む場所を失った俺は軍での経験を活かし1人で流れ者の傭兵をやって暮らしていた。

この日、俺は街で雇い主が見つけられなかった上に所持金が底をつき近くの森で魔物を狩ってそいつらから手に入れた素材で少しでも金を作ろうとしていた。


「クソが。全然モンスターがいねぇぇぇ!」


森に入って3時間がたったが、これまでに俺が狩ったのはガルガラというオオカミ型のモンスターを5匹、バイセルという初歩的な魔術を使うファントム型の魔物を3匹だけしか倒していない。どちらも雑魚で落とす素材も大して金にならない。


「ったく。なんでこんなに魔物がいねぇんだよ!こんだけじゃあせいぜい宿に一泊できるかできないかってとこか…。しゃあない、もう少し粘ってみるか。」


この後、更に3時間狩り続けていたが結局倒せたのはガルガラを6匹だけだった。狩っている間に思い出したことだが2、3日前に大規模な討伐がこの森で行われ、魔物が減っていたらしい。


「もう遅くなってきたな…。これだけあればギリギリ一泊して飯も食べれるか。あ~、明日も雇い主が見つからなかったら本格的にマズいな~。」


俺は独り言をブツブツと言いながら街まで帰るために魔物の素材を『戦』に載せていると、ふと気づいた。


「『戦』を売れば結構な金になるんじゃね?」


そう口に出した瞬間、『戦』が後ろ足で俺を蹴っ飛ばした。俺は思い切り飛んでいき、木に軽くめり込んで止まった。身動き取れない俺になおも『戦』が追撃して来ようとする


「お、おい。ちょっと待て。すまなかった。お前を売るわけないだろ。一番最初の相棒を売れるわけがないだろうが。」


俺は謝っている間ずっと蹴られていた。奇跡的にどこも折れていなかったが体中が痛い。

普通ここまでやるか!?

荒ぶっていた『戦』を何とか大人しくし、ようやく帰路につけたが辺りはもう暗くなっていた。『戦』は全身が燃えているから松明とか必要なくてこういった時は便利だ。

しばらく進んでいると前方で猛獣の唸り声と誰かが命令を飛ばしている声が聞こえてきた。魔術で夜目が利くようにすると馬車を護衛している部隊とキメラの一団が戦っていた。

護衛は11人か錬度も高いようだが危険度4級のキメラと20体以上のガルガラが護衛と馬車を取り囲んでいる。

馬車の馬がやられてるな…強行突破は無理だから倒すしかないようだな。仕方ない。護衛たちには頑張ってもらって黒騎士に包囲させて殲滅かな。

俺は手早く魔方陣の設置を終わらせると黒騎士を召喚し、キメラの一団に襲い掛からせた。


俺はキメラが黒騎士と戦っているうちに『戦』でガルガラたちを飛び越え、中心に着地した。

この時の俺は結構いい絵になってたと思う。

護衛たちはいきなりの乱入者に目を白黒させていたが、すぐに我に返ると目の前にいる敵を倒していった。


「あんたが隊長だな。あんた等にはガルガラの処理をお願いする。山羊は魔術、蛇は毒を吐くから部下を近づけさせるな!」

「き、貴様は何者だ!?」

「今はそんなことどうでもいいだろうが!早くしないと馬車にいるお前らの主も死ぬことになるぞ!」


俺はそう言い残すと黒騎士が食い止めているキメラに向かって走り出し、そのままの勢いで獅子の頭を一閃しようとしたがかわされて尻尾の蛇の方を切った。

よし。まずは毒蛇を仕留めたから次は山羊だな。


「黒騎士!槍を構えて後ろからは矢を射よ!」


俺の命令で黒騎士が槍衾を作り、後ろからは火矢を射かける。しかし、キメラの動きが早いうえ山羊が電撃を放ってくるので上手くダメージを与えられていない。

俺が何か策はない物かと必死で頭を回していると黒騎士のとは違うビュンという矢が風を切る音がして山羊の頭を射ぬいた。

これで魔術は使えなくなり最後に本体である獅子が残った。


「そのままやつを囲んで殺せ!」


黒騎士たちは槍衾を作った状態でキメラを囲み、火矢を射かける。

先程のように動きは素早くなく、獅子の単調な動きなので矢が次々と当たりキメラは力尽きた。ガルガラもキメラがやられたことによって逃げ出している。


「貴様は一体何者だ?」


声をかけられて振り向くと護衛部隊の隊長が弓を構えて俺に狙いをつけている。それにならって他の護衛も俺に武器を構える。

さっきは急いでいて気が付かなかったが、あいつ女だな。恐らく、山羊の頭を射ぬいたのもあいつだ。


「気にするな。俺はキメラが欲しかっただけだから。それと、ガルガラのも貰っていいか?」

「ふざけるな!私たちを馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

「馬鹿になんかしてないだろ。そもそも、俺が飛び入りで助けたとはいえ管理局の規定によれば危険度三級のモンスターは10万ガル以上。それを払えって言わないだけましだと思うぜ?」

「貴様…!」

「まちなさい。ノア。」


馬車の扉が開き、中から人の良さそうな中年男が現れてノアと呼ばれた女隊長が今まさに俺に矢を放とうとしたところを止めてくれた。

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