第十五話
「キャー!助けてー!」
「なあ、レティ。あんなバレバレの待ち伏せ、普通気づくよな?」
「そうだね。あんなにわかりやすいのに引っ掛からないよ。」
「呑気に話してないで早く助けてくださいよー!」
俺たちの目の前では、獣人の女の子が植物型の魔物の枝に足を掴まれ逆さまで吊られている。
近づく前にかなり動いたからてっきり気づいてると思ったんだが…。
時をさかのぼること12時間前。ここから現状へと話がつながる。
この日、俺は依頼が多くて人手が足りないと受付嬢のシスティから言われていたのでノルマをこなすついでに来ていた。
「今日も1日稼いでいきますかなっと。手頃の依頼何かあるか?」
「ええ。最近は多くの依頼が来ていますよ。正直、幹部の皆様方にも少しは依頼を消化してほしいものです。」
「まあ、そうだな。グレイはいつも寝てるし、ミズキはサボるし、アーヴィングは訓練の指導やってるからな。」
「これなんかどうですか?第1級禁忌種の討伐。」
「なんでそんな案件がうちに回って来てるんだよ。騎士団が請け負うべきもんだろうが。」
「冗談です。獣人の方から行方不明者の捜索依頼が来ています。」
「獣人からのは珍しいな…。ま、いいか。それ俺とレティで受けとくから。」
「わかりました。勝手に決めちゃっていいんですか?」
「気にすんな。この前はあいつの実力見れなかったしな。」
「そうですか。では、そのように登録しておきますね。」
「やったー!お兄ちゃんとデートだー!」
「はいはい。落ち着け。浮かれてると怪我するぞ。」
言ったそばからレティの馬が道を外れて崖に落ちかける。
獣人の作る村は高所や森の深いところに多く、依頼人の獣人も例に洩れずとある山にやって来ている。
「この高さだと落ちたら即死だぞ。ちゃんと馬の手綱握っとけよ。」
「お兄ちゃんの馬はいいよね。かっこいいし、賢くて羨ましいな。」
「人の話を聞けっての。こいつは、『戦』。全身炎に包まれているが、こいつに認められた者は燃えないんだ。」
「へ~、私もやってみよっかな?」
「やめとけ、お前じゃ絶対に燃えるから。」
そうこう話していると獣人たちの集落らしきものが見えてきた。
集落の周りには柵がたてられ外敵を拒んでいる。
入り口付近には門番が立っており、そこからこちらに手を振っている人影が見える。
「お2人が私たちの依頼を受けてくださった方ですね?」
「はい。私たちがギルド…。」
「はい!そうです。私とお兄ちゃんが来たからには安心してくださいね!」
「お、お兄ちゃん?」
「気にしないでください。こいつは、最近入ったばかりの新人なので。」
「そうですか…。あ、すいません。立ち話もなんですからこちらへどうぞ。」
事の始まりは2人の女の子が森に狩りに行ったきり帰ってこないところから始まった。動ける者全員で捜索したらしいが、見つけることができず次の日は女の子を探しに入った母親が行方不明になりこれ以上行方不明者を出すわけにはいかないので俺たちに依頼したらしい。
俺たちは捜索は明日の朝からにして借りた部屋でどこを探すかと相談をしていた。
「これは、少し厄介だな…。」
「そんなに難しいの?」
「こいつを見ろ。」
俺が指したのはここら辺一帯の地図だ。
地図には既に獣人たちが探した場所を赤、探してない場所を青で色分けしている。
「色分けしたことでわかったが獣人の捜索能力は相当高い。なのに見つからないってことは誘拐された可能性がある。」
「誘拐!?一体だれが何のために?」
「奴隷商人だろうな。獣人はコアなやつらが欲しがるから高値で売れるそうだ。」
「あ、お兄ちゃん。ここ怪しいんじゃない?」
「洞窟か…アジトにするには丁度いいな。明日の朝から捜索するからもう寝とけ。」
「私も連れて行ってください!」
翌日、俺たちが捜索に出ようとしたところで1人の少女が呼び止めた。
かなりの美少女だ歳は見たところ17、8といったところか。
お、猫耳ですか…尻尾もモフモフしてるな~
「あなた誰?」
「私はリーシャと言います。行方不明になった女の子は私の親友なんです。どうか連れて行ってください。お願いします!」
「お兄ちゃん。連れて行ってあげようよ。」
「リーシャ。君の友達は誘拐された可能性がある。相手は人だ。魔物とはわけが違う。危険を承知の上なおかつ俺に迷惑をかけないのなら動向を許可しよう。レティ。言ったからにはお前がリーシャを守ってやれよ。」
「ありがとう。お兄ちゃん!」
「ありがとうございます!」
集落を出た俺たちはリーシャの案内のもと地図にあった洞窟へ向かって歩くこと1時間後リーシャが魔物の待ち伏せ(バレバレだった)を受け現状に至る。