第十話
「おいおい、どうした?中級使い魔を召喚できてないじゃんかよ。」
俺は訓練場でレティの力量を確かめている。
伝説級の武器を持っているとはいえ一通りの事が出来てもらわねば臨機応変に対処ができず、最悪死ぬことになる。
「う~ん。どうやっても上手くいかないよ~。」
レティは難しい顔をしてウンウン悩んでいる。
素質があっても要は慣れだからな。
「お前しっかりとどんなのを生み出そうって決めてるのか?」
「なんかモヤモヤしたのが頭にあって全然決まらな~い。」
「ま、いいか。早めに召喚できるようになってくれよ。次は実戦訓練だ。見たところ刀を使うようだが使いこなせてんのか?」
この質問には自信満々の顔で答えてきた。
「もっちろん!お兄ちゃんも昨日の見たでしょ?」
「俺が見たのは終わった後だからな…。まあ、いいだろう。よし!かかってこい!」
俺は言いながら手に持っている装飾の施されたいかにも業物と言った感じのロングソードを引き抜いた。
これは、以前のゴブリン討伐でゴブリンたちの略奪品をあさっていたら発見したものだ。
「お兄ちゃん。剣、使えるの?この間うちの店で銃を買って行ったんでしょ?そんな相手に負ける気しないな~。」
「そうだなぁ。俺に勝てたら何でもひとつ言うことを聞いてやるよ。ま、無理だろうけど本気でかかってきな!」
こっちから仕掛けてみるか。
「おーらよっと!」
一気に間合いを詰めて思い切り踏み込んで上段から切る。レティは軽いステップで後ろに飛んだ。それを返す刀で切りあげる。
しかし、防御のために振り下ろしてきた相手の刀身と俺の刃が触れ合った瞬間剣に異常なほどの重さがかかり地面が軽くへこむ。
「なぁんだ。お兄ちゃんこの程度なの?このままだと私の勝ちだよ?」
だんだんと剣にかかる重さが増えてくる。
「なめてんじゃねえぞ!」
気迫とともに刀を弾き距離をとる。
あいつこんなにバカ力だったっけな。
「次はこっちからいくよ。」
鋭い突きを紙一重でかわす。続けざまに何発も放ってくる。
その速さは尋常ではなかった。何とかそれらを回避しながら、どんどん後ろへ追いやられていく。
苦し紛れに前へ出て、横薙ぎに剣を放つ。
レティは後方へ飛びのいて回避を図る。
引いた。やれる。このまま前へ出て、攻め込んで一撃を決める。
「くっ!」
レティは肩に傷を受けるが、怯むことなく剣を打ち合わせて来る。だが、スピードも重さも先程より劣っている。
そこからは俺の一方的な勝負だった。
体を限界まで動かし、勢いを殺すことなく剣戟を浴びせていく。
最後に鍔迫り合いになり、これを力任せに『アマノハバキリ』ごと弾き飛ばす。
「止めだあぁぁぁぁぁ!」
その時、俺とレティの間に何かが飛び込んできて俺の剣を受け止めた。
「主!あなたは一体何を考えている!レティを殺すつもりですか!?」
それは、ヒルダだった。
はっとなってレティを見るとヒルダの後ろで怯えていた。
「す、すまない。レティ。大丈夫か?」
「う、うん。ちょっとだけビックリしただけだから大丈夫だよ。」
そうは言っているが、レティの肩が震えている。
「ヒルダ。すまないが後のことはよろしく頼む。」
「…承知しました。」