俺の家が幽霊屋敷だった件について
友達と喋っている時に思いつきました。何をとち狂ったのか文章にしてしまいました。
俺の名前は尾崎光。どこにでもいるようなしがない学生だ。
あえてほかの学生との違いをあげるなら父と母が海外出張を繰り返していて実質的に家で一人暮らしをしていることだろうか。
とはいえそんな暮らしに不便しているわけではなくむしろ気兼ねなく家に友人を呼んでグダグダできるのでこの暮らしを気に入ってさえいる。
そういうわけでこの日も友達を家に呼び二人してのんびりしていた。
そんな中、暇を持て余した俺は暇つぶしに様々なオカルトサイトを巡っていた。
その中で幽霊屋敷という項目に目を引かれたのはまったくの偶然だった。
「幽霊屋敷かぁ~」
俺はぼんやりとサイトを見ながら誰に言うでもなく呟いた。
別に強い興味を持ったわけではない。ただ調べるうちに思ったより身近なものらしいとわかったので関心を示すついでに口から言葉が漏れ出たに過ぎない。
「どうした? アホみたいな声出して」
そんな失礼なことを言ったのは友人である城島啓である。
こいつは口が悪いというわけではないが思ったことなどをズバズバ口にする性格なので結構辛辣だ。彼はこれが素なのだからこの程度のことで怒っていては話が進まない。
「いや幽霊屋敷っていうのを調べててさ。 こういうの本当なのかなーって思ったんだよ。 本当なら一度見てみたいなーってな」
啓は読んでいた本から顔を上げた。
その顔は何言ってんだこいつとばかりにしかめっ面だ。
「い、いや冗談だって。 あるわけ無いよなー幽霊屋敷なんて。 きっと誰かの妄想の産物なんd「お前は何を言ってるんだ?」
そう言って啓は本を置いた。
あれ?俺そんな変なこと言っただろうか?
「いやだから・・・」
「そもそもだ」
無視された。
「幽霊屋敷が見てみたいだのなんだのって・・・この家がそうじゃないか」
「へ・・・?」
今こいつはなんて言った?
幽霊屋敷?この家が?
「いやお前何言って・・・」
衝撃の事実にうまく言葉を紡げない俺を余所に啓はさらに続ける。
「まぁ視えない人にとっては些細なことだよ。 何の影響もないしな」
そういわれてもいるのを知らないのと知っているのでは大きな違いがある。
できれば嘘であってほしい。だがそれは望み薄だ。何せこいつは妙に嘘をつかないことに定評があるのだ。
それならばせめてどんな霊がいるのか知りたい。
「あー、それでどんな霊がいるんだい?」
おそるおそる聞いてみた。
こちらの緊張などかまわずだれたように寝転がったまま啓は答えた。
野郎、こっちの気も知らないでくつろぎやがって。
「んーと、いるのは三人だな」
三人・・・。多いか少ないかは判別し辛い数だ。
「一人がサラリーマンで・・・」
「ちょっと待て」
「なんだよもう」
言葉を遮られたからか啓は若干不機嫌そうに文句を言ってきた。
だけどそれさっき俺にやったからな?被害者面はやめていただきたい。
いや今はそれよりもだ。
「なんでサラリーマンの霊なんかいるんだよ! つか想像とだいぶ違ってある意味出鼻くじかれたわ!」
「それもまとめて説明してやるから少し静かにしてて」
「わ、わかったよ・・・」
しぶしぶだが黙る。今彼を怒らせてもいいことなどひとつも無い。
「それでリーマンの霊だけどここにいる理由は勤務先が近いからだって」
「未だに仕事先に未練があるのか・・・。 どれだけ仕事人間だったんだ?」
というより人の家から通うのはやめてほしい。
「いや今も通勤してるよ。 部署が営業課の幽霊専門の部署に変わったらしいけど」
「そんな部署あんの!? つかどこだよその会社!」
「○○商事」
「近所っ!!!」
ここから徒歩15分である。
「ま、まあいいや。 いやよくないけど。
それで次の霊は?」
すでに一人目で疲れたが一応ほかの霊が危険じゃないか確認する必要がある。
念のため自分で判断したいのだ。
「二人目は・・・ニートの霊だね」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
予想外にもほどがある。
というかやることがないならとっとと成仏してもらいたいものだ。
「彼曰く「成仏したら負けだと思ってる」だってさ」
「負けてしまえ!!!」
幽霊にとって成仏=働くということなのだろうか。
だがそれではリーマンの霊はどうなのか?わからないことばかりが増えていく。
果てしなくどうでもいいことだが。
「もういい! 最後の奴は?」
「最後のやつね、えーと」
啓は目を閉じた。
そこまで集中が必要な相手なのだろうか。それなら最初に言ってほしかった。
すっ、と啓は部屋の隅を指差した。
「そこ・・・」
「そ、そこにいるのか・・・?」
「うん。 そこで闇に潜んでる」
啓は頷いた。
言われてみればそこはいつも妙に薄暗く日当たりの悪い場所だった。
はたしてどんな霊がいるというのか。ごくりと唾を飲み込んだ。
「で、そいつは闇に潜んで何をしようとしてるんだ?」
「特になにも」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
聞き間違いだろうか。
「すまんよく聞こえなかった。 もう一度言ってくれ」
「特に何もしてないよ」
「・・・・・・」
なんなんだろうこの肩透かしは。
「しいて言うなら「暗いの怖い」って言ってる」
「何故闇に潜んだし」
不適財不適所にもほどがあるだろう。
それにしてもだ。
「リーマンにニートによくわからない奴・・・。
・・・なめトンのかぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
「おお、キレた」
「キレるわ! なんで社会不適合者が二人も混じってんだよ! もう一人は社会に適合しすぎだし!
あーーーーーーーもう!!! 意味わかんねーよ!!!」
「そうか。 ならこうしよう」
なにが?と聞く前に啓は俺の額をトン、とつついた。
「なにすんだ・・・よ・・・」
啓の後ろに誰かがいる。
何度か瞬きするとソレの姿がはっきりと見えてきた。
それはサラリーマンだった。
「リーマンだーーーーー!!!!!!」
俺、大混乱。
「落ち着け」
パニックに陥っていると華麗な左ストレートが顔面に突き刺さった。
否応無しに落ち着かされる羽目になった。
「な、なにをしたんだ・・・」
「視える様にしたんだよ」
視える様にした?何を?
答え 霊を。
「なにすんじゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うるさい。 さっきから叫びすぎ」
叫ばずにいられるか!
「お前も思うことがあるだろうけどこれが最善だよ。
彼らは光に興味を持ったからね。 今までのようにはいかないさ」
それはつまり興味を持たれてしまったから今までのように影響無しでというわけにはいかないということだろうか。
その原因はおそらく俺が彼らに興味を持ったからで・・・。
「あああああああぁぁぁぁぁぁ」
がっくりと項垂れる。
結果的とはいえ自業自得。啓を責めることはできない。
「まあ、そう気を落とすなよ」
「そうですよ。 我々も迷惑かけないようにしますし」
「ネガティブよりポジティブに行こうぜ!」
「暗いのこわいぃぃぃ~~~」
ちょっと待とうか。
一人は啓だろう。ではほかの声は?
「リーマンとニートと闇に潜んでいる人だな」
「何でナチュラルに会話に参加してんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
俺の叫び声がむなしく響いた。
それから俺と三人の幽霊との奇妙な共同生活が始まったのだった。
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