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山茶花  作者: 如月 悠明
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家を出て約四半刻。その距離に大きな町に入る入口がある。

俺たちの家はその町から少し離れた集落にある。ここは『村』というには小さく、店などもこの町に出なければ全くないのだ。そのため主婦はほぼ毎日食料品を手に入れるためにこの町に行くようになっている。


「行くか」


「はい」


そうやって短い言葉を交わし、少し後ろを歩く鈴に少しの苛立ち。

真横を歩いて欲しいのだが、きっと首を縦には振らないだろう。『自分は女なので』とか言って。

今の時代は所謂男尊女卑の風潮が強く、何事も女は後ろだ。まあ、歩く時に女は後ろを歩くというのはそれ以外にも理由があるのだけれども。

その理由というものは案外知られていなくて、実は俺自身もごく最近になって知ったものだ。曰く、もし斬り合いになったら、男は女を守らなければならない。そんな時に真横にいられると刀を抜けないし、危険にさらしてしまう恐れがある。守らなければならない対象を危険にさらしてまでも隣に歩きたいと思わない。そのため歩くときは『男が前で女は後ろ』という方程式が自然と出来上がったのだ。

平和な時代になれば、そんなこともほとんどなくなるだろう。刀を持たなくなれば滅多なことでは斬り合いにはならない。酷くて殴り合いの喧嘩で済む。俺はそういう時代が来ることを願いながら仕事をしているのだ。


「兵助さん?」


「ん?なんだ?」


「いえ、少しぼーっとしているように見えましたので…」


「大丈夫、少し考え事をしていただけだ」


それでも不安そうに顔を覗き込む彼女の頭を撫でてやりながら顔を前に向けた。

相変わらず、いつもと変わらない場所がそこにある。


「それよりほら、もうすぐつくぞ」


俺が指を指すと鈴もそちらを向く。

さっきの表情が嘘のように明るくなったのを見てほっと一息ついた。鈴に暗い顔は似合わない。こちらの表情の方がずっといい。


「兵助さん、今日はお仕事を忘れて楽しみましょうね」


「ああ」


鈴の穏やかな声は、俺にとってはかけがえのないもの。心によく沁みて奥深くまで届く。

それは彼女が心の底から思っているからなのか、俺のことを良くわかってくれているからか。


とにかく俺にとっては大切で、なくしたくない存在なのだ。



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