プロローグ3 黒き勇者の思惑と従者達の心境
「…………うーん」
まだ辺りは暗い早朝、桜舞う謎のアジトで少年が1人、腕を組みながら唸っていた。
身長だけを見るなら、青年とも取れるが、あどけない顔付きや性格なので、どちらかと言うと少年に属するのだ。
良く女の子と間違われるが、決して彼は女の子ではない。あどけない少年である。
「むー……」
少年は唸る。そして……
「……黒き勇者、何やってるんだ?」
「あ、フラット。おはよっ!」
その様子を見ていた青年……フラットは、少年……黒き勇者に話しかける。
「それで、こんな朝早くから一体どうしたんだ?」
「えっとね、桜が綺麗だから何処にお花見行こうかな〜? って考えてたの!」
「…………」
フラットは黒き勇者の答えを聞いた途端、頭を抱えてしまった。まさか本当にお花見なんて言うのか!? っていう表情と共に。
「……さて、もう一眠りするか」
「ま、まってよぉ! 冗談だよ〜!」
フラットが自分の部屋に戻ろうとすると、慌てて黒き勇者が引き止める。
「はぁ……。で、本当は何をしていたんだ?」
黒き勇者の必死の引き止めによって、フラットは諦めて戻るのを止め、再び同じ質問を黒き勇者に向かってする。
「考え事!」
「いや、それは誰が見ても分かる。俺が聞きたいのは、こんな朝早くから何で考え事をしていたんだ? と、聞きたいんだ」
そうフラットが言うと、黒き勇者は少し考える表情を見せ……
「ん〜と、また世界が歪んでるから戻して! って言う通知だよ!」
「……って事は、また出動ってことか」
「そう言うことだね!」
と、2人がそう話し合ってると……
「あら、2人とも早いのね」
大人っぽい、ゆったりとした雰囲気の女性が入ってきたのだ。
「あ、ミール、おはよっ!」
「ええ。おはよう、黒き勇者」
そう言って、黒き勇者に微笑を送る彼女の名はミール。黒き勇者の中では参謀的な役割に位置する人物である。
「ミールもこの通知を見ておいて! 後、レインとサーミも起きたら目を通すように言って! じゃっ、僕は久し振りに料理を作るね〜♪」
そう言って、黒き勇者は調理室へ向かって行った。
「……それで、どうなってるのかしら?」
「あぁ、中々厄介だな。コレは」
そう言って、少し苦笑しながら通知を見るフラット。
「ふむ……成る程ね。さて、一体どうなるのかしらね……黒き勇者は」
「……ミール、お前面白がって無いか?」
「あら、どうかしら?」
「…………」
相変わらず、掴みどころの無い笑顔で対応するミールであった。
「だけど、私達が……ねぇ」
「まぁ、俺達は問題無いんだが……」
「黒き勇者は20とはいえ、かなり精神が幼いから、大丈夫なのかしら……?」
2人は、通知に書かれていた内容を見て、多少の不安を覚えていた……。
通知
『世界が再び歪んでます。今度は今まで以上に強い歪みです。なので、次に向かう世界で教師になってしばらく調査をしておいて下さい。(生徒だと調査がしにくいので……)
話はつけてありますので、どうか宜しくお願いします』
……彼らはまだ知らない。次に行く世界が、彼らにとってみれば、悪夢のような出来事があり、あまり顔を会わせたく無かった世界の人達がいるということを。
そして、7年前から止まり続けていた物語が、再び動き始める瞬間でもあった……。