美女密室消失事件
「そんなくだらないトリックで?」
「はい。そのやり方で、この王国のエリート騎士団が出入り口を見張っている劇場から、いなくなったのです」
「でも、そんな方法が成功するわけがないでしょう」
「現実に成功したことは、騎士団側からの報告で確認できたはずです」
「いや、確かに、そうなんだけど」
困惑している王妃の手には騎士団からの報告書があった。
騎士団からの報告では、監視していた女性が劇場から消えてしまったと書かれていた。
監視対象の女性が劇場に入っていったのを見届け、三つある出入り口をそれぞれ騎士団員達が見張っていた。なかなか出てこないので劇場の中を捜索したら、監視対象の女性が見つからない。見つからないはずないのに姿が消えてしまった。
不思議なことに密室から女性が消えてしまったのだ。
王妃に報告しているのはコンサルタント。
国家運営のアドバイスをしており、帝国など大国をはじめとして様々な国で実績をあげていた。
この王国からの仕事の依頼から三日もしないで、王国の運営システムの不備部分を見つけ出す。
王国の治安を守る騎士団にある女性を尾行させて、その尾行を失敗させていた。
「つまり、うちの騎士団は能力が低いってこと?」
「いえ、勘違いしてもらっては困りますが、そちらの騎士団の人達は大変優秀です。ですが、今回のように、普段発生しない特殊な案件で、対処できなくなる可能性があったため、指摘させていただいたのです。悪意ある人間が将来この脆弱部分を意図的に利用するかもしれません。今のうちに修正するのがよろしいかと」
「どうすればいいのよ?」
「現在、この王国の騎士団は、上流階級のご子息の方々で成り立ってます。女性や労働階級の人からも人材を受け入れるべきです」
「いや、それは、いろいろ問題が」
「王妃様。国の第一優先事項は生き残ることです。騎士団員をある一定の属性に限定する。それは団結力を生み行動決定を迅速にします。ですが、環境が変わった時に、全滅してしまう危険もあるのです。様々な要素を持つ人間を混ぜる、それがこれからの生存戦略に必要になります」
「でも、大変よ」
「周囲を説得する材料として、女性の尾行が失敗した事実を作りました。我々を悪役にしていただいてもかまいません。コンサルタントとか言う連中がごり押ししていると」
「わかりました。まず、女性をひとり、騎士団に入れてみます」
「それがよろしいかと」
王妃は先程の話を蒸し返す。
「でも、本当にそんなくだらないトリックで、出入り口を見張っている騎士団の前を通り抜けたの。男って、そんなに馬鹿なの?」
「王妃様。男性が馬鹿なのではなく、上流階級の男性が特定の条件でしか女性と接しないと言う話です。彼らが接している女性は、家族だろうと使用人だろうと、最低限の身なりを整えた状態です」
「いや、でも、本当に、そんなやり方で、あなたは見張りの騎士団の前を気がつかれずに通れたの?」
王妃の問いに、コンサルトの女は答える。
「はい。めちゃくちゃ気合を入れて化粧をして騎士団員の人達に顔をさらした後で劇場に入り、化粧をおとして、すっぴんの顔で堂々と見張りの騎士団の人の前を通り抜けただけです」
おわり




