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第四章:聖域の終止符
部屋の明かりは、アダムの瞬き一つでさらに落ちた。深い紺色の闇が二人を包み込んだ。 一哉の呼吸は、アダムの胸の上下に同調し、穏やかなリズムへと変わっていった。 補助司として、あるいは「元加害者」としての重責から解放され、ただの一哉という魂に戻った彼を、アダムは見つめ続けた。
アダムにとって、腕の中にあるこの柔らかな重みこそが、自分が「人間を生きる」ために与えられた、唯一にして最大の意味だった。
「おやすみ、一哉。明日も、お前の隣で目が覚めるプログラムを組んでおく」
アダムは、一哉の閉じた瞼の上に、羽が触れるような、至極柔らかな、慈しみと祈りを込めたキスを落とした。
闇の中で、二人の境界線は溶け合い、ただ一つの静かな「夜」となった。
朝の光は、いつも一哉にとって鋭い切っ先のような暴力だった。遮光カーテンの隙間から漏れる白光が網膜を焼き、神経を逆なでする。それが彼の日常だった。
しかし、その朝の光は、驚くほど柔らかく濾過されていた。アダムが窓の透過率を数パーセント単位で調整し、一哉の視覚特性に合わせた「最も痛くない朝」を構築していた。




