9 ゴブリンライダー爆誕 2
5日後、フォレストウルフの群がやって来た。
その日は、私も警戒員に編成されていた。ゴブリンたちはジョブを得たけど、まだまだ戦える力を持った者は少ないから、私も3日に1度はシフトが周ってくる。
今回の作戦は、できるだけフォレストウルフを生け捕りにすることだ。
というのもフォレストウルフは、ゴブリンたちとそれなりにいい関係を築いていた。過去には、森で迷子になった子供を助けた事例もあるらしい。子供を助けたとき、村人はお礼にフォレストウルフに干し肉などの食料を与えたという。また、森でフォレストウルフに出くわしても、何か食料を与えれば、襲ってこないらしい。ゴブミが言うには、やむにやまれぬ事情があったのだと言っていた。
しばらくして、フォレストウルフの群れは、畑に入った。フォレストウルフは丁度10匹、みんな痩せこけている。
薬師たちが作ったポーションの効果で、フォレストウルフは、私たちにまったく気付いていない。ゴブコが指示を出す。
「今よ!!罠発動!!」
号令に合わせて、ゴブリントラッパーたちが罠を発動させる。畑全体を網で覆うような罠だ。フォレストウルフたちは、吠えて、私たちを威嚇する。私はラビを通じて、彼らに対話を試みた。
「キュー!!」
しかし、結果は・・・
「ラビが言うには、駄目だったみたい。「大人しく森に帰るなら、何もしない」と言ってもらったんだけど、「森に帰っても全滅するだけだから、ここで命の限り戦う」って言っているみたいよ」
どんな事情があっても勝手に大切な作物を食い荒らすのは許せない。
それに変に情を掛けてもこちらが怪我をするだけだしね。
ゴブコが言う。
「仕方ないわね・・・だったらこっちもやるしかないわね。遠距離攻撃部隊は準備して!!」
そんな時、ゴブキチが叫んだ。
「ちょっと待ってくれ!!俺に説得させてくれないか?」
ゴブキチは、武器を捨てフォレストウルフの群れに歩み寄った。フォレストウルフは今にも飛び掛かろうとしている。ゴブキチは気にすることなく、群れのリーダー格のフォレストウルフに近付いた。
「も、もしかして・・・ラッシュなのか?俺だよ、ゴブキチだよ!!こんなに痩せちゃって・・・」
「クゥーン・・・」
群れのリーダーは甘えたような声を出し、ゴブキチに飛び付いた。
「コイツらは、いいフォレストウルフだ。迷子になった俺を助けてくれたからな。そしてコイツはラッシュだ。群れのリーダーだった奴の子供だ。凄く優しくて、いい奴なんだ。甘えん坊だけどな」
「ガルルルル!!」
ラッシュはゴブキチに噛みついた。
「痛い!!群れのみんなの前で、「甘えん坊」って言って、悪かったよ」
更にゴブキチは言う。
「ラッシュが言うには、狂暴なキラーグリズリーの変異種がやって来てから、餌が確保できなくなり、仕方なく畑を荒らしたようだ」
フォレストウルフに助けられた子供って、ゴブキチだったのか・・・
というか、ゴブキチはフォレストウルフと意思疎通ができるようだった。
ゴブコが言う。
「ゴブキチ、フォレストウルフに暴れないように言ってくれる?そうしたら、餌をあげるからね」
「もちろんだ」
★★★
解決したかに見えた今回の事件だが、そうはならなかった。
ラビやゴブキチを通じてフォレストウルフに話を聞いたところ、キラーグリズリーの変異種の所為で、森の生態系が破壊されているそうだ。このままキラーグリズリーを放置すれば、そのうち他の魔物も村を襲ってくるとのことだった。
フォレストウルフたちは、なるべくゴブリンたちに被害を出さないように畑を荒らすのみで留めていたけど、もっと狂暴な魔物はそんなことはしない。つまり、私たちがキラーグリズリーを討伐するしかないのだ。
ゴブキチが言う。
「討伐には賛成だ。何たって、ラッシュの親たちの仇でもあるからな」
今、村にいるフォレストウルフたちは、比較的若い。
なぜなら、ラッシュたちを逃がす為、ラッシュの親世代のフォレストウルフはキラーグリズリーに立ち向かい、全滅したそうだ。
村長が反対意見を述べる。
「犠牲が出るかもしれない作戦は許可できんな。かといって、このままではいけないのも分かるのじゃが・・・」
1時間以上、平行線の議論が続く。
そんなとき、ゴブコが私に話を振ってきた。
「ここは、エクレアの意見を聞きましょうか?」
私は村の中では、聖女という謎のポジションなので、こういった村の方針を決める会議にも参加させられている。私は軍事の専門家じゃなくて、ただの転職神官なんだけどね。
仕方なく意見を言う。
「キラーグリズリーの討伐経験はあります。しかし、変異種となると私の予想を超えているかもしれません。まずは情報を集めないといけませんね」
村長が言う。
「どちらにせよ。情報を集めることは必要じゃ。問題は、この危険な任務を任せる者がいるかどうかじゃ・・・」
そのとき、ゴブキチが言った。
「俺がやるよ!!こんな時にゴブリンライダーの俺がやらなくてどうするんだよ!!」
「ゴブキチ、アンタは馬鹿なの?アレクサンダーに乗ったところで、どうにもならないでしょ?」
ゴブコが必死で止めたが、ゴブキチの決意は変わらなかった。
「そこは考えてある。ラッシュ!!」
ゴブキチに呼ばれてやって来たラッシュにゴブキチは飛び乗った。
「俺にはラッシュがいる!!これから俺が真の力を見せてやるぜ!!」
止めるのも聞かず、ゴブキチは次の日には、ラッシュたちとともに出発してしまった。
ゴブコが心配そうに言う。
「アンタは本当に馬鹿なんだから・・・絶対に無事に帰って来てよね」
何だかんだ言いながらも、ゴブコはゴブキチのことを心配しているのだった。
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