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6 転職神殿はじめました

 村長の指示で、空き家をすぐに改装してくれて、神殿に近い感じにはしてくれた。村人総出で、改装を手伝ってくれたので、1日で完成した。


 心配事がないわけではない。

 というのも、無許可の転職神殿を開いたり、個人で勝手に転職させることは、重大な違反行為だ。そんなことをすれば、本部から審問官がやって来て、厳罰に処される。それこそ、追放どころでは済まない。でも、私は既に転職神殿を追放されている。この時点で私は「ヤミ神官」なのだ。それにラビやゴブコを転職させているしね。


 でも、私は悪いことをしようと思っているわけではない。ゴブリンたちに幸せになってもらいたいから、転職神殿を開くのだ。それに魔族領まで審問官がやって来ることもないだろうし・・・

 心の中で、色々と言い訳をしたが、本当は憧れの転職神官になりたいだけなんだけどね。


 そして次の日から、本格的に転職神殿を開くことになった。

 もう着ることがないと思っていた思い出の神官服に着替えると、感慨深い。まさか魔族領でゴブリンたちを相手に転職神殿を始めるとは思わなかった。これもまた人生だ。

 最初に行ったのは、生産職と呼ばれる者たちの転職だ。主にゴブリンファーマーとゴブリンマイスターだ。これは村長とも話し合って決めた。


 それには理由がある。まず、食糧事情を改善させるためだ。

 生産職のジョブ持ちを増やせば、生産力が上がる。それだけ、この村は追い詰められているのだ。


 次は、危険性が少ないからだ。

 戦闘職と違って、生産職のジョブ持ちが無茶をすることは考えにくい。お祖父様も各ギルドに研修を委託していたのも、危険性が少ないからだ。それに研修をしてくれる親方たちは、その辺の戦士なんか目じゃないくらいに強くて、怖い。だから、転職したての者が逆らえるはずがないしね。もちろん、親方たちは、いい人たちだ。多分・・・


 話は逸れたが、将来職人となる彼らは、自分で試行錯誤してもらうしかないからね。


 1日掛けて、転職と初期研修を終わらせた。

 初期研修は、ほとんどが心構え的な話をしただけだ。

 1日のカリキュラムが終了すると、どの転職者からも超絶感謝された。


 ある中年のゴブリン男性は涙ながらに言った。


「これで、子供たちに腹いっぱい食わせてやれる。本当にありがとう、ジョブを授けてくれて」


 ある青年ゴブリンは、満面の笑みで言った。


「ありがとう。お礼に立派な神殿を建ててやるからな。歴史に名を残すような神殿にしてやるぜ」


 あるゴブリンの少女は言った。


「本当にありがとう。私は、薬の勉強をしっかりして、病気や怪我で苦しんでいる人を救うわ。エクレア先生、しばらく通うから、もうちょっと教えてよね」


 こんな言葉を聞くと、本当に転職神官になってよかったと思う。


 気付いたことといえば、ゴブリンたちの感覚ではジョブは授けられるものと思っている。人族では一般的に転職と呼ぶ。それは、元々持っていたジョブを変更するという意味合いが強い。しかし、ゴブリンたちは、ジョブは変えるものではなく、有難く授けられるものだという認識だ。なので、実家の転職神殿に居た頃よりも感謝される。

 普通は貰えない有難いものを授けてもらったと思っているからね。


 因みに報酬は出世払いにしてもらった。

 こんな状態の村から絞り取るなんて流石にできないよ。それこそ「極悪ヤミ神官」になってしまう。まあ、食費と家賃はすべて無料ただだし、ショコラに貰った金貨も半分以上は残っているから、いつ報酬を貰ってもいいんだけどね。


 それから3日後、戦闘職の転職を開始した。

 ここで活躍したのは、アシスタントをしてくれているゴブコだ。ちょっと、私のことを誤解しているようだったけど・・・


「エクレアはヤバいのよ!!命が惜しかったら、絶対に逆らわないこと。それにこの可愛いラビちゃんにも敬意を払ってね。アンタたちが束になって掛かって行っても、全滅するくらいに強いわよ」


「「「はい!!」」」


 ゴブコのお蔭か、戦闘職の転職と研修は、思ったよりもスムーズだった。

 みんな素直に一生懸命に研修を受けてくれた。


「基本的な訓練は今日で終了です。明日は実際に狩りに出てみましょう」


「「「はい!!」」」



 ★★★


 私は戦闘職のジョブ持ちを集めて、狩りに出た。

 こういったことも慣れっこだ。実家の転職神殿に居たころは、「赤い稲妻」のようにパーティー揃って、転職に来ることも多い。なので、パーティー単位の指導もよくしていた。ここまで大規模なのは、初めてだけどね。


「まずみんなに伝えたいのは、絶対に無理はしてはいけない、ということです。そして、まず退路を確保し、連携して・・・」


 真剣に聞いている者がほとんどだが、ゴブキチを中心とする一部のグループは、早く力試しをしたいと思って、うずうずしている。

 こんな人たちが怪我をするんだけどね。


 そう思っていたところ、ゴブコがゴブキチに拳骨を喰らわせた。


「ゴブキチ!!ちゃんと話を聞きなさい!!帰らせるわよ」

「わ、悪かったよ・・・」


 ゴブコは本当に頼もしい。


 しばらくして斥候職のゴブリンが、群れから逸れたグレートボア1匹を発見した。緊張が走る。

 グレートボアは、ゴブリンたちにとっては、死を覚悟するくらいに強力な魔物だ。


「みんな大丈夫です。訓練どおりにやれば、討伐できます。再度手順を確認したら、討伐を開始します」


 私の指揮に合わせて、斥候職のゴブリン(ゴブリンスカウト)がゴブリントラッパー(人間で言う罠師)が設置した落とし穴まで上手く誘導する。そこにゴブコを筆頭にしたゴブリンアーチャーとゴブリンメイジが大量の矢と魔法を浴びせ掛ける。次第にグレートボアは弱っていく。


「今です!!」


 ゴブキチたちを筆頭にした。近接戦闘班が総攻撃を開始する。しばらくして、グレートボアが動かなくなった。歓声が上がる。


「やったああ!!俺たちはグレートボアを仕留めたぞ!!」

「俺たちは最強だ!!」

「ゴブリン万歳!!」


 みんな大喜びだった。

 水を差すようで悪いけど、研修担当者として言うべきことは言わないとね。


「これで自信がついたと思います。ですが、決して油断しないで下さい。まだまだ強い魔物は多くいますからね。それと近接戦闘班に言います。興奮して、守備の意識が欠如していました。帰還したら、近接戦闘班のみ、居残り特訓を行います」


「えっ、えええー!!」

「嫌だ!!あんな特訓はもうしたくない・・・」


 再びゴブキチがゴブコに殴られた。


「ゴブキチ!!アンタが一番興奮して、訓練どおりにやらなかったでしょ?アンタは反省の意味を込めて、明日も居残り特訓ね」


 ゴブキチの悲鳴が聞こえた。

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