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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
最終章

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55 精霊指導

 精霊様が町に来て、最初にやったのは、祠を作ることだった。

 ホーンラビットのラビやスライムのスラが、神獣と崇められ、専用の祠を持っているので、羨ましくなったようだ。


「祠があれば・・・食べ物・・・いっぱいくれる」


 だが、そんな期待は打ち砕かれる。


「誰も・・・来ない・・・」


 それはそうだろう。

 ラビもスラも、その功績を称えられて、祠を作ってもらったのだ。自分から作るように言ったのではない。そもそもエルフ以外精霊様の存在を知らないしね。


「おかしい・・・これは大精霊になるしかない・・・おい、早く大精霊に転職させろ」


 しかもこの態度は、いただけない。


「転職には、適正もそうですが、心構えや将来何をしたいかなどの明確な目標も必要ですよ。今のままでは転職はできません」

「だったら・・・どうしたらいいんだ?」

「まずは研修や訓練を受けていただきます」


 こうして、上手く言い含めて、精霊様を訓練所に案内した。

 精霊様の担当は、フェルナンド王子にしてもらうことにした。


「フェルナンド王子、今回お願いする訓練生は、かなりの問題児でして・・・」

「大丈夫だ。どんな者でも、しっかりと立ち直らせてやるからな」


 フェルナンド王子は、本当にこの教官職が天職のようだった。

 精霊様は、フェルナンド王子に引き合わせても、態度は変わらなかった。


「おい・・・早く訓練を終わらせろ・・・」


 言い掛けたところで、精霊様はフェルナンド王子に殴られた。


「とりあえずは、ランニングからだ。それに口の利き方も直さないとな」


 それから、地獄の訓練が始まった。

 ランニング中にズルして、飛行魔法を使おうとしたところで、またフェルナンド王子に殴られていた。

 エルフシャーマンのエランシアさんが心配そうに言う。


「本当に大丈夫なんでしょうか?ちょっと可哀想になってきました」

「普通の指導では無理と判断しました。これくらいやらなければ、将来が心配ですからね」

「分かりました」

「エランシアさんは、訓練後のサポートをお願いします」



 ★★★


 1週間も経つと、かなり改善が見られた。

 それならばということで、奉仕作業をさせることにした。精霊様は植物魔法が使える。まだまだ、効果は低いけど、それでも簡単な植物の病気を治したり、成長を促進させたりはできるようだった。

 農業部門のまとめ役であるゴブアさんに精霊様を紹介する。


「小さいのに偉いねえ。無理しなくていいからね」

「私、偉い?・・・この人はフェルナンド先生と違って、優しそう・・・」


 ゴブアさんは、精霊様のことを小さい子が頑張っていると勘違いしているようだった。

 だから、何かにつけて褒めるし、休憩時間にはお菓子をあげていた。


「頑張ったご褒美だよ」

「・・・ありがとう・・・旨い・・・」

「ちゃんとお礼が言えるのね。偉いね」

「・・・私・・・偉い」



 それから二週間ほど、訓練所での訓練と奉仕作業をさせていたところ、ゴブアさんから相談を受けた。


「畑の作物の成長が異常なんだ。あっという間に収穫できるようになったんだ」


 多分、精霊様の植物魔法の影響だろう。

 エランシアさんに確認してもらった。


「間違いなく精霊様のお力です。妖精様も世界樹に魔力を供給していますし、同じ要領でやったのだと思います」


「それは有難いねえ・・・何かお礼をしないとねえ・・・」


 私はあることを思いついた。


「こういうのはどうでしょうか?」


 私が説明すると、みんな納得してくれた。



 ★★★


 次の日、精霊様が嬉しそうに笑顔で駆け寄って来た。


「あった、あった・・・お供え物あった!!」


 供えられたジャガイモを手に小躍りしている。


「よかったですね。精霊様の頑張りがみんなに認められたのですよ」

「もっと・・・頑張る」


 それから精霊様は、奉仕活動を頑張り、訓練にも更に真面目に取り組むようになった。


「チビスケ、よく頑張ったな。その調子だ」


 フェルナンド王子にも褒められて、精霊様は嬉しそうだ。

 そんな光景を見ていたのは、私たちだけではなかった。エランシアさんとエルフの里からやって来た妖精様たちだ。


「エクレア様、本当にありがとうございます。妖精様も精霊様の頑張りを認めておられます。これなら、妖精の基本や精霊に必要な能力を教えてもいいと、仰られています」


 私は少し考えて言った。


「精霊様は、大変調子に乗りやすい性格をしておられます。このまま研修を打ち切りにするのは、あまりお勧めできませんね」

「十分に分かります。ですので、週に何回かは、こちらで修業してもらおうと思っているのです」

「そうしてください。それが精霊様のためでもありますからね」



 そうして精霊様は、週に2~3回、ホープタウンに通うようになった。

 転移スポットがあるから、移動は楽だからね。


 まあ、最初に行くのは決まって自分の祠だ。

 今日も嬉しそうにお供え物を持って、小躍りしている。前に一度、お供え物が無かったことがあり、悲しそうにしていたので、それ以後は、少しでもいいので、お供え物を置いておくことにしている。


「今日も頑張る・・・みんなのために・・・」


 精霊様は、大精霊になれる能力はある。

 しかし、大精霊への転職は見合わせている。妖精様たちの考えでは、今度は転職に頼らずに自力で大精霊になってほしいとのことだった。


 精霊や妖精には、それぞれの考え方があるので、私はその考えを尊重することにした。

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