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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
最終章

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53 兄の想い

 フェルナンド王子にアルベールは尋ねる。


「兄上、もう魔王選は終わりましたよ。どうして、ここに?」

「魔王選?何だ、それは?ここに来たのは、頑張っているお前の様子を見に来ただけだ」


 フェルナンド王子は、アルベールから次期魔王の座を奪いにきたのでは、なかったようだ。


「それと転職というのができるらしいな。すぐに強くなれるんだろ?ここにいるオーガラも強くなったようだし、俺に転職というやつをやってくれ」


 将来、アルベールのライバルになるかもしれないフェルナンド王子を転職させることは、正直気が進まない。適当な理由をつけて、追い返そうとも思った。

 しかし、転職神官は、誰に対しても平等であるべきだ。仕方なく、説明をする。


「転職は誰でも、できるわけではありません。適性がない場合はできませんし、当神殿が転職に相応しくないと判断した方については、転職をお断りすることにしているのです」

「何でもいい。その資格があるかどうか、早く調べてくれ」


 フェルナンド王子にせかされて、ジョブ鑑定を行った。

 鑑定したところ、フェルナンド王子には「魔教官」というジョブに転職可能だった。人間にも「教官」というジョブがある。これは自分のステータスが向上するわけでもないし、新たなスキルも身に付かない。ただ、人に指導する能力が大幅にアップするだけのジョブなのだ。

 そのことをフェルナンド王子に伝える。


「なんてすばらしいジョブなんだ!!すぐにそれに転職させてくれ」

「でも、ジョブを得たところで、強くはなれませんよ」

「そんなの関係ない。そもそも、修行すればジョブなんか関係なく強くなれるだろ?」

「それはそうですが・・・では、なぜ「魔教官」になりたいか、教えてください」


 少し考えて、フェルナンド王子が答える。


「それはアルベールのためだ。昔から俺はアルベールを強くしようとして、色々と教えてきたが、全くアルベールは強くならなかった。多分、俺の教え方が悪かったのだろう。今にして思えば、指導方法も間違っていた。とにかく厳しくすれば、強くなると思っていたからな」


 アルベールは絶句している。


「厳しくし過ぎた所為で、周りからは、俺がアルベールをいじめていると勘違いされていたがな・・・」

「分かりました。つまり、アルベールさんに指導をしたいから「魔教官」に転職したいということで、いいのでしょうか?」

「そうだ」


 私は少し考えて言った。


「これからのことを考えると、アルベールさんだけでなく、多くの者を指導することを約束していただけるなら、転職はさせていただきます」

「それで頼む」


 こうして、フェルナンド王子を「魔教官」に転職させたのだった。



 フェルナンド王子は、すぐに馴染んでしまう。

 元々、転職者が多くなり、オーガラだけでは指導ができなくなっていた状況なので、フェルナンド王子の存在は有難かった。

 楽しそうに訓練指導をしているフェルナンド王子を見ながら、アルベールは言った。


「俺は兄上に嫌われていると、ずっと思っていた。だが、そうではなかった。俺のために指導してくれていたんだな・・・方法は激しく間違っていたがな」

「でも、フェルナンド王子がアルベールさんのことを大切に思っていたことが分かって、よかったじゃないですか」

「本当に不器用な人だ・・・」


 どこか、アルベールは嬉しそうだった。


 私とアルベールに気付いたフェルナンド王子は声を掛けてくる。


「おい、アルベール!!稽古をするぞ!!今日はスキルを中心に教えてやる」

「はい!!お願いします。エクレア殿、では行ってくる」


 アルベールは嬉しそうに訓練に参加した。



 ★★★


 フェルナンド王子が訓練所の指導員になって、しばらくして多くのフェルナンド王子を慕う魔人族がやって来た。アルベールに喧嘩を売った魔人族の族長もいる。


「フェルナンド殿下、早くアルベール殿下を倒して、魔王になってください」

「魔王か・・・俺はここで、それよりも大事なことを見付けたのだ」

「そ、そんな・・・」

「分からないようだな?おい、アルベール。コイツらの相手をしてやれ。お前たちもまとめて、アルベールに掛かっていけ」


 五人一遍にアルベールに向かって行く。

 アルベールは、物凄い速さで木剣を振り抜いた。


「疾風斬り!!」


 あっという間に五人は、倒れ込んだ。


「あれはフェルナンド殿下の必殺技の一つ、疾風斬り。なぜ、アルベール殿下が?」

「それは兄上に習ったからだ。兄上は次期魔王となる俺の剣術指南役になられたのだからな」

「そ、そうですか・・・我らは、強い者に従います。この地で修業する許可をいただきたい」

「それは構わんが・・・」


 こうして、魔人族たちも配下に加わり、更に訓練所は活気づくことになった。


 アルベールがしみじみと言う。


「転職で兄弟の仲まで修復してくれるとは思わなかった。本当にありがとう」

「お互いが大切に思っていた気持ちが伝わっただけですよ。それよりも、もう一人の方も何とかしないと・・・」

「それはそうだな・・・頭がキレる分、そっちのほうが、厄介だな」


 アルベールの姉で、魔石泥棒のソフィア王女を何とかしないとね・・・

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不器用か!?!?!?
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