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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第三章 正式に転職神殿を始めました

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49 幕間 聖女の今

 ~マロン視点~


 ホーリスタ王国の警備隊から逃走した私は聖女となった。

 聖女とは、転職神殿本部の上部組織であるマーズ教会が認定する役職の一つで、世界的に権威がある。しかし、実際はほとんどが金で買われている。私以外に聖女は5人いるのだが、優秀な回復術師の一人を除いては、高位貴族や大規模商会のご令嬢が名誉職として務めている。教会の大きな収益の一つだそうだ。


 ではなぜ、私が聖女に選ばれたかというと、私が優秀な転職神官だったからではない。

 政治的な理由からだ。ランカスター転職神殿が行っていたことは、転職神殿本部やマーズ教会からすれば、絶対に知られたくない極秘事項だ。転職神殿本部やマーズ教会が率先して、違法な転職や違法薬物の売買に手を染めているなんて、口が裂けても言えないだろう。


 それで私が利用されることになった。

 私を聖女にすることで、「ホーリスタ王国は本気で教会とことを構える気か?」「神の教えに背く邪教の国と喧伝することもできるぞ」と暗に脅しているのだ。更に「転職神殿をホーリスタ王国から引き上げる」とも脅している。現に教会は使者をホーリスタ王国に送り、交渉をしているという。


 ユリウスが言う。


「多分大丈夫だ。流石に国中の転職神殿がなくなることになれば、ホーリスタ王国だって、今回のことは目を瞑ってくれるだろう」


 正直、本部も教会も、ここまで腐っているとは思わなかった。

 それでも私は彼らに従うほかにない。


 そんなある日、私に任務が与えられた。

 各地の町や村を周って、貧しい人たちを転職をさせてほしいとのことだった。私はすぐに了承した。だって私がなりたかったのは、誰からも感謝され、尊敬される転職神官だったのだから・・・



 ★★★


 考えが甘かった。

 私としては、弱者に無償で転職させることで、本部や教会のイメージアップを図るくらいには思っていたが、そうではなかった。やっていることといえば、強制転職だ。


 片っ端から「ジョブ鑑定」を行い、ある一定のジョブに転職可能な者を強制的に転職させている。

 それは忌み嫌われているジョブである「盗賊」「暗殺者」「死霊術師」「狂戦士」などだ。元々そのジョブを持っている者もいるが、好き好んでこのジョブに転職しようという者はまずいない。余程の転職オタクか、悪事を働こうとしている者しかいない。


 当然、快く転職しようとする者は皆無だ。

 特に「狂戦士」なんかは、酷いものだ。人格まで変わってしまう。今も目の前で男が喚いている。


「お、おい!!やめてくれ!!俺は世界一の鍛冶師になるんだ。何で狂戦士なんかに・・・」

「これも運命です。それでは転職を行います。神のご加護があらんことを!!」

「い、嫌だ!!やめろ!!」


 私は強制転職を行った。

 強制転職はかなり魔力を消費する。一般の転職とは違い、嫌がる相手を無理やり転職させるのだからね。なので、魔力量が多い者でしかこの役割は務まらない。私が選ばれたのも、その辺りに理由があるのだろう。


「今日もいい儲けだな。マロン、どんどんやるぞ」


 護衛のユリウスが言う。

 表向きは、暴れる転職者から私を守るということになっているが、私の監視も兼ねているのだろう。



 夜になるといつも、うなされる。

 強制転職させた者たちからの罵詈雑言が耳から離れない。


「この悪魔!!」

「俺の人生を返せ!!」

「人でなし、地獄に落ちろ!!」


 これが私が望んだ人生だろうか?

 確かに聖女という肩書きを手に入れ、収入も以前の倍以上だ。裏の仕事は、一般的にはバレてないので、多くの民衆からチヤホヤされる。それだけみれば、私の望んだ人生なのだが・・・


 まだ、お祖父様が生きていて、お父様が戦争に行く前に何気ない家族の会話を思い出した。


「もし転職をさせられる魔道具が発明されたら、転職神官というジョブはなくなると思うか?」


 私は言った。


「魔道具の値段によると思います。それよりも安くできれば、生き残れるのでは?」


 しかし、エクレアは違うことを言った。


「私は、なくならないと思います。だって、魔道具にはできないことを私たちはやっているんですから・・・」


 皮肉なものだ。

 私はただの転職させる魔道具に成り下がっている。


 そんなことを思っていると涙が溢れてくる。一体、私はどこで間違えたのだろうか?



 隣で寝ていたユリウスが声を掛けて来た。


「どうした?眠れないのか?だったらちょっと楽しむか?いい薬を手に入れたんだ」


 私は頷き、ユリウスから手渡された禁止薬物を口に入れ、ベッドに横たわった。ユリウスが覆いかぶさってくる。


 もうどうでもいい・・・すべてを忘れさせてほしい・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


次回から最終章となります。

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