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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第三章 正式に転職神殿を始めました

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42 ランカスター転職神殿

 修行しているカール王子は置いておいて、ザバスさんと協議を続ける。


「この際、ショコラ殿だけでも連れて帰り、転職神殿を再稼働させるのはどうでしょうか?」

「それは難しいですね。確かにそれで転職はできるようになりますが、それでは、私たちの理想とする転職神殿とは程遠い。それにエクレアも連れて帰ったとしても、結果は同じだと思います。そもそも、ランカスター転職神殿が発展したのはなぜだと思いますか?」


 実家のランカスター転職神殿は、ホーリスタ王国の最北端に位置し、いわゆる辺境と呼ばれている。

 それでも国内外から多くの転職者がやって来る。その理由は、転職者へのサポートが充実しているからだ。転職前の相談から始まり、各種研修制度も自信をもって世界最高水準だと言える。特に生産職の者には好評だった。だってそうそうたるメンバーに指導してもらえるからね。


「もちろん、教育関係が充実しているからです。カール殿下をそちらに預けたのも、それが一番の理由です」


 お父様は更に質問する。


「では誰が指導をするのでしょうか?ギルマスたちは、この町を離れないでしょうし、指導者となる者もいません。転職神官や指導者だけでなく、多くのスタッフが必要です。一からやり直すとなると、相当時間も労力も掛かります」


「無理やりエクレア殿とリシャール殿を連れ帰ったところで、神殿の再建には至らない。それどころか、魔族との諍いに発展してしまう。一体どうすればいいのやら・・・」


 ザバスさんは困り果ててしまう。


 ザバスさんに聞いたところ、滞在日程は余裕があるようなので、私はある提案をした。


「とりあえず、カール君の修行を見ませんか?私も教え子の成長具合をみたいですし、訓練に一生懸命な転職者たちを見れば、いい考えが浮かぶかもしれませんよ」

「そうですね。私も久しぶりに訓練に参加してみましょうかね?」



 ★★★


 訓練所では、カール王子と冒険者パーティー「赤い稲妻」の剣士ラドウィックが模擬戦をしていた。

 ラドウィックがカール王子を押し込んでいる。


「ラドウィック、いつの間にこんなに強くなったんだ?前は僕のほうが強かったはずなのに・・・」

「それは修行の成果だ。それに俺は「上級剣士」になったからな」

「上級剣士だと!?」

「エクレア先生に転職させてもらったんだ。それに拠点をここに移して、定期的に訓練に来ているからな。それにしてもお前は弱くなったな。それでも、勇者か?」

「なんだと!?」


 訓練を見ていたザバスさんが驚きの声を上げる。


「エクレア殿は、上級職へ転職させることができるのですか!?」

「はい。正確には、上級職しか転職させられませんが・・・」


 ついでに魔族は種族自体がジョブで、転職するとなると全員が上級職になることなどを伝えた。


「それでは、魔族がジョブを持てないというのは、大嘘だったのですか?」

「そうです。転職神殿本部はこの事実を知った上で、意図的に隠していたようです。過去に私と同じように「上級転職神官」のジョブを持つ者もいたようですが、存在自体を消されていたそうです」


 ザバスさんは、一人の世界に入ってしまった。


「それは酷い・・・だが、これは逆に使えます。上級職に転職できることを売りに・・・問題は、どうやってここに来るかだが・・・」



 次の日、私たちの他に町の有力者や各ギルドのギルマスたちも集められ、今後の方針について話し合いの場が持たれた。早速、ザバスさんが提案を始める。


「私の案としましては、この転職神殿を今のまま続けてほしいと考えます。それにはいくつか条件があります」


 ザバスさんの出した条件は、ホーリスタ王国の国民を積極的に転職させてほしいということだった。


「我が国が必要としているのは、国民を転職させてくれる優良な転職神殿であって、必ずしも転職神殿が自国にある必要はないのです。それにこの転職神殿の名前を「ランカスター転職神殿」にしていただければ、カール殿下の発した「ランカスター転職神殿を再建せよ」という王命にも反しません」


 ザバスさんが言うとおり、カール王子は「ホーリスタ王国で」とは言っていない。


「思い出のある名前を使わせていただけるのですから、こちらとしては文句のつけようもありません」


 ザバスさんは続ける。


「それで各ギルドの皆さんをお呼びしたのは、今後も指導をお願いしたいと思ったからです」


 鍛冶ギルドのギルマスであるドグラスさんが言う。


「指導はしてやるが、厳しいぞ」

「もちろんです。そして、問題となるのは・・・」


 ザバスさんが言い掛けたところで、カール王子が遮った。


「ちょっと待て!!それだと、僕の計画が・・・エクレア先生を連れて帰らないと・・・」


 ザバスさんは何かを察したように話始める。


「カール殿下はご自分の領地の発展を心配されているのですね?でも大丈夫です。この転職神殿事業が上手くいけば、最も恩恵を受けるのはカール殿下の領地です」


 ザバスさんによると、最近カール王子は旧ランカスター転職神殿付近の領主になったそうだ。それでカール王子は、ランカスター転職神殿を再建すれば、領地経営も上手くいくと考えていたようだった。


「当初の予定では、ランカスター転職神殿を再開して立て直そうと考えていましたが、計画を変更し、旧ランカスター転職神殿付近は宿場町として生まれ変わるのです」


 これには商業ギルドのギルマスが食いついた。


「ご協力させていただきますよ。こんな儲け話は滅多にありませんからね」


 冒険者ギルドのギルマスも続く。


「こちらも護衛依頼が増えて大助かりだ」


 結局、今営業している転職神殿の正式名称をランカスター転職神殿にして、人族の転職も積極的に行うことになった。こちらとしては、お父様とショコラの「転職」スキルが生かせるから、願ったり叶ったりだ。


 みんなが盛り上がる中、カール王子だけは不機嫌だった。


「エクレア先生が僕の領に来てくれないと、計画が・・・」

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― 新着の感想 ―
サボってたへっぽこ勇者の嫁に行くわけないじゃ無いですか、やだー(個人の感想です
こんにちは。 カール王子の計画…もしかしてエクレアさんを奥さんに迎えたいとか? 知る人は知る高名な彼女を迎え入れられたら、デメリットが霞むレベルのメリットがあるでしょうしね。
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