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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第三章 正式に転職神殿を始めました

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37 ドワーフを見返せ

 名立たるギルドのギルマスたちがやって来たことで、ホープタウンは更に賑わうことになった。

 というのも、ギルマスたちを慕う大勢の人間たちがやって来たからだ。それに付随して、商人も多くやって来た。そうなると、道中の護衛で冒険者の仕事も増え、今ではゴブキチやゴブコも冒険者登録をしている。ゴブキチたちゴブリンライダーは機動力があり、急ぎの仕事には重宝されている。


 そうなると、町は発展する。

 仕事はいくらでもあるし、商取引も活発になる。そして、我が転職神殿もスタッフが増えた。ショコラが正式に我が転職神殿の転職神官となった。

 ショコラが言う。


「またエクレア様とリシャール様と働けることは嬉しいですが、聖女様と呼ばれるのは、むず痒いですね・・・」

「そうね。でもそのうち慣れるわよ」


 私も大聖女と呼ばれることに慣れてしまった。


 それ以外に変わった事といえば、ホープタウンの統治方法だ。正式にアルベールが領主となった。

 というのも、村長をしていたゴブールが「この年齢で、この規模の町を統治するのは無理じゃ」と言い出したからだ。

 アルベールも最初は渋っていたが、説得した。


「アルベールさん、魔王となるのですから、町を統治することも勉強です」

「そうだな・・・だが、上手くできるだろうか?」

「そんな気持ちでは駄目です。絶対にいい町にするという気概を持たなければ」

「そ、そうだな・・・これも試練だ。精一杯努力する」


 発展する町を見ながら、アルベールに尋ねる。


「多種族が共存しているこの町ような国を作ることが、アルベールさんの理想ではないのですか?」

「そうだ。種族に関係なく幸せに生きられる国にしたいと思っている」

「では、その一歩がこのホープタウンですね。私もしっかりとお手伝いしますよ」

「うむ、期待している」



 ★★★


 今日はアルベールが領主となって、初めての全体会議だ。

 各種族の代表と町の有力者が集まって、町の運営を決める。最初なので、顔合わせ程度で会議は終了したのだが、会議終了後に鍛冶ギルドのドグラスさんが相談してきた。


「実は指導している弟子のことで相談があるんだ。俺だけでは解決できないんだ」


 詳しく聞くと、弟子たちから、どうしてもドワーフを見返してやりたいと言われたそうだ。熱血漢のドグラスさんは、弟子たちの気持ちに答えようと、相談したというわけだ。


「ドグラスさんでも、手に負えないのですか?」

「そうだな・・・とりあえず工房に来てくれないか?実物を見ながら話したい」


 そういう訳で、アルベールと共にドグラスさんの工房にやって来た。

 工房は活気に溢れていて、8割がゴブリンで残りの2割が他種族だ。転職したての者たちは、ドグラスさんが連れて来た人間の職人に基本を習っていた。


 ドグラスさんが、私たちに大剣を見せてきた。

 この大剣はドワーフに送った物だという。


「見よう見真似で作ったにしては、よくできている。だが、まだまだ粗削りだな。それに基本もなっちゃいない。そしてこれを見てくれ」


 今度は別の大剣を見せてくれた。


「こっちは、最近作らせた物だ。かなり良くなっている。国軍が使っている装備なんかよりは格段にいい。最後にこれを見てくれ」


 最後に見せてもらったのは、短剣だった。


「これは俺の師匠のドワーフが作った短剣だ。見事だろう?」

「素人の私が見ても、かなりの業物に見えます」

「何年か修行すれば、これに近い物は作ることはできる。だが、ドワーフたちの鼻を明かすことはできない」


 ドグラスさんの一番弟子を自称する「ゴブリンマイスター」のゴブスさんが言う。


「アルベール様が、ドワーフに『だったらお前たちには頼まん。近い将来、お前たちが頭を下げて、教えを請いに来ることになるだろう』と啖呵を切ってくれたのは、本当に嬉しかったです。だから、絶対見返してやるんだと思いました。それで、まだまだ未熟者ですが、ドグラス師匠にお願いしたんです」


「俺も若い頃、師匠に『いつか師匠を唸らせる物を作ってやる』って、偉そうに言ったことを思い出してな。今の俺なら、ドワーフ製に近い物は作れる。だが、ドワーフたちを唸らせるほどの物は作れない。褒めてはくれるだろうがな。それで、エクレアの嬢ちゃんに頼むことにしたんだよ。だって、弟子の指導に困ったら、エクレアの嬢ちゃんに頼めば、解決してくれるって、評判だったからな」


 果たして、私が力になれるだろうか?

 確かに私は、ギルマスたちが手に負えない転職者たちを指導してきた実績がある。私は「見習い体験」のスキルで、ほぼすべてのジョブの初期スキルを使うことができるけど、その道のプロには到底及ばない。ここで、「無理です」というのは簡単だ。でもドグラスさんやゴブスさんの熱い気持ちに答えたい。

 私は少し考えて言った。


「アルベールさん、貴方が彼らの指導をしてください。こういった困難に立ち向かうのも「魔勇者」の使命です。それに元はと言えば、アルベールさんが啖呵を切ったことが発端ですからね」


 アルベールはキョトンとしている。


 少し、丸投げに近いが「勇者」の指導マニュアルには、「積極的に困難に立ち向かわせるように」と記載があったからだ。「魔勇者」も「勇者」もほぼ同じなので、これを利用したというわけだ。

 もちろん私も手伝うけどね。


「分かった。ただ、俺は鍛冶の素人だ。しばらくは工房で基礎を教えてくれ」


 こうして、ドワーフの鼻を明かすためのプロジェクトは動き出した。

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