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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第三章 正式に転職神殿を始めました

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28 獣人族

 アルベールが持ってきた相談というのは、獣人族全体の問題だった。


「獣人族は度々、アバレウス帝国の関係者の襲撃に遭っている。特に被害が大きいのは、コボルト族、猫人族、栗鼠人族だ。彼らは戦闘力が低く、襲撃があれば、集落を放棄して逃げる。そして虎人族か獅子族に救援を頼む。大抵は獅子族や虎人族を連れて来たときには、奴らは逃げ、集落は滅茶苦茶になっている」


 酷い話だ。お父様も続く。


「同じ人間として、恥ずかしい。知らなかったとはいえ、私もその行いに加担していたからな・・・」

「リシャール殿を責めているわけではない。それにリシャール殿は反対し、負傷者の治療までしてくれたのだからな」

「そう言ってもらえると有難いです」


 アルベールが続ける。


「アバレウス帝国の馬鹿どもが襲撃してくるのは、今に始ったことではない。問題は獣人側にもある。獅子族と虎人族が共に『自分たちの配下に入らなければ、今後、救援に向かわない』と言ってきたことだ。それで、彼らはどうすればいいものか、困っているというわけだ」


 獣人の話を少しすると、戦闘力が高いのは、獅子族、虎人族、熊人族、餓狼族だ。この中で、熊人族と餓狼族は他種族と積極的に関わろうとしない。魔王選にもずっと不参加だ。獅子族と虎人族はライバル関係にあり、共に自分たちが獣人を代表する種族だという自負を持っている。

 今回の魔王選の選定方法が悪いほうに影響したのだろう。


「コボルト族は獅子族寄り、栗鼠人族は虎人族寄り、猫人族は種族自体で意見が分かれている。この三種族は互いに協力してやってきた歴史がある。明確に立場を表明してしまうと、交流が絶たれてしまうと懸念している。襲撃については、獅子族と虎人族の族長に魔王選を抜きに協力して対処することを提案した書状を送ったが、魔王選に出場している俺からの書状ということで、話も聞いてくれない状態だ」


 アルベールなりに手は尽くしたのだろう。それでも解決しないから、私たちに相談に来たようだ。


 しばらくして、お父様が言う。


「私に考えがあります。アバレウス帝国が獣人たちを狙うのには理由があります。非人道的な理由ですが・・・」


 本当に酷い。虫唾が走る。


 お父様によると、獣人の集落にやって来るのは新兵訓練の一環だという。

 新兵、特に強制的に戦闘職に転職させられた者は、人を殺すことに対して強い忌避感を持っている。それを払拭するため、まずは獣人で心理的なハードルを下げさせるという。更に略奪の旨みを覚えさせ、最終的には人間同士の戦争でも、より残虐な行為ができる兵士を育てているようだ。


「酷すぎます・・・人がしていい行為だとは思いません。それに転職とは、人が幸せになるために行うものです。そんなことが許されていいはずはありません」

「エクレアが言うとおりだ。しかし、今それを言っても始まらない。問題はどうやって防ぐかだが、相手が新兵ばかりであれば、対処のしようがあると思わないか?」


 それはそうだ。

 となると・・・


「彼らに転職で、力を付けさせ、自力で防衛できるようにする」

「しかしお父様、彼らにこの神殿まで来てもらって転職や研修を受けてもらう間にも被害が拡大します。年単位での計画ならそれで大丈夫でしょうが、事態は緊急を要します」

「だったら、出張転職をしてみてはどうだろうか?」


 出張転職とは、転職神官が各地に出張して対象者を転職させる業務のことだ。

 辺境に住む者たちは、そうそう転職神殿まで足を運べない。そこで主に辺境の領主などの要請を受けて実施しているものだ。「転職」スキルが使えなかった私は、出張転職に同行したことはないけど、実家の転職神殿では、何年かに一度はやっていたと記憶している。


「出張転職は、神殿長の許可があれば行えることになっている。この転職神殿の神殿長はエクレアだから問題ないよね?」

「そうですね。それにゴブミがいますから、私がしばらくいなくても何とかなります。後は転職者を指導する指導者も連れて行かなければなりませんね」

「その人選を含めて、計画を練ろう。どう思われますか、アルベール殿下?」


 しばらく考えたアルベールは言った。


「いつも世話になってばかりで、すまない。今回もよろしく頼む。もちろん俺も同行するし、指導者もやらせてくれ」



 ★★★


 それから、出張転職に向かう人選が行う。

 同行するのは、私、お父様、シャテンさん、アルベール、ゴブキチ、ゴブコだ。悪いけど今回もゴブミとオーガラはお留守番だ。ゴブミがいないとこちらの転職神殿が営業できないし、オーガラはゴブミとべったりだからね。

 そして私たちとは別に商人のゴブマさんも同行することになった。


「獣人の里の商品を仕入れられれば、大儲け間違いなしですよ」


 ゴブマさんも逞しい。


 このメンバーだと指導者が少ないように感じるかもしれないが、その辺は心配ない。こちらの転職神殿で転職したコボルト族たちが、里に戻って指導者になってくれるからだ。アルベールたちは、ジョブの指導というよりは、集団戦闘の指導をメインで行う。これは獣人たちの指導のほかに、アルベールの指導も含まれている。

 個人の戦闘力もそうだが、集団を統率する能力も「魔勇者」には必要だからね。

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