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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第二章 魔王選

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25/69

25 帰還

 王都での予定を終えた私たちは帰還することになる。

 この旅には、お父様も同行することになった。身分は捕虜のままだが、アルベールが監督するということで、ホープタウンへの移住が決まった。また一緒に暮らせることが、本当に嬉しい。

 同行していたゴブマさんもオーガルもいい取引先が見付かり、大喜びしていた。


 そんな中、ゴブキチは凄く落ち込んでいる。

 話を聞いたところ、魔王軍の訓練に参加したのだが、全く歯が立たなかったらしい。それを見たお父様が優しく励ましていた。


「ゴブキチ君、ジョブを得たからといって、すぐに強くなるわけではないんだ。戦闘力は、ジョブよりも経験や普段の地道な努力が大きく影響する。この悔しさをバネにして、頑張れはきっと君は強くなるよ」


 ゴブコも続く。


「そうよ。それにアンタをボコボコにしたのは、隊長クラスの人だったし、帰ってから、今まで以上に頑張ればいいじゃないの」


「そうだな・・・頑張るよ」


 研修制度が充実しているランカスター転職神殿は別だが、ジョブを得て調子に乗っている者が挫折するケースは、かなり多い。ほとんどの者は、そこから奮起して努力を重ねるんだけど、不貞腐れて駄目になっていく者もそれなりにいる。そうした意味からもランカスター転職神殿は、研修制度を充実させている。早めに上には上がいると分かってもらえるしね。


 でも今の転職神殿では、研修制度もランカスター転職神殿ほど充実していない。ゴブキチは、ゴブリンの中では一番の実力者で、勘違いしてもおかしくない環境だった。王都に来たことは、ゴブキチにとってもいい経験になったと思う。

 それと、私の課題も見付かった。もっと研修制度を充実させないとね。


「お父様、今の転職神殿は人手不足で、研修制度にあまり力を入れられていない状況です。なので、帰還したら、私は積極的に研修業務に携わろうと思っています」

「そうだね。私の「転職」スキルは役に立たないけど、それでも様々な面でサポートは出来るはずだ。一緒に頑張ろう」

「はい!!」


 希望に満ちた私たちの旅が始まった。

 道中は、アルベールの修行にゴブキチも積極的に参加するようになった。アルベールとゴブキチは、打ち解けている。もしアルベールが魔王になったら、名君になりそうだ。そのために私は、心を鬼にしてアルベールを育てないといけない。

 立派な魔王は育てられないけど、立派な「魔勇者」には育ててやると、強く決意した。



 ★★★


 オーガの里で、オーガルとゴブマさんと別れた私たちは、無事にホープタウンに帰還した。

 町では大歓声で迎えられる。もうお祭り騒ぎだった。というのも、先触れとしてゴブキチが私たちの1日前に帰還したのだけど、ゴブキチがお父様のことを物凄く偉い神官だと触れ回ったらしい。私の父で、よく分からないけど、とにかく凄いということで、盛り上がってしまったというわけだ。


「本当にゴブキチは馬鹿なんだから・・・」

「でもゴブコ、お父様を歓迎してくれて嬉しいわ」


「私の「転職」スキルは、ここでは使えないんだけどな・・・」


 お父様は少し困惑していたけどね。


 その日は大宴会に巻き込まれ、結局神殿には帰ることができなかった。

 次の日、ゴブコの家に泊まった私たちは、転職神殿に向かった。ゴブミが笑顔で出迎えてくれる。


「大聖女様、ご無事でなによりです。それにリシャール様は、凄く偉い神官だとお聞きしました。ご指導のほうをよろしくお願いします」


 ゴブミも勘違いしているようだ。

 だけど、そのほうが都合がいいと思い、敢えて訂正はしなかった。


「転職神殿は問題なかった?」

「通常業務は問題ありませんでした。ゴブリン8人、オーガ2人の転職を無事に終了しています。ただ、一つだけ困ったことが・・・」


 ゴブミが言うには、ゴブリンとオーガ以外の種族も転職に訪れたという。ゴブミは「ゴブリンプリースト」で鬼族しか転職をさせられない。なので、教会の宿泊施設で転職希望者を待機させているようだった。


「待機させているのは、適職がある者たちです。当面はそちらの方たちの対応をお願いしたいと思っています」


 お父様が言う。


「今日は神殿をゆっくりと案内してもらう予定だったけど、エクレアはそっちを対応しなさい。私はゴブミさんについて、色々と学ぶからね。それにこれは、エクレアしかできないことだからね」


「はい!!」


 やはりお父様は、転職者を大切に思っている。こういう所は以前となにも変わらない。


 転職待ちで待機している者たちをスタッフに言って集めてもらった。簡単な説明を行い、一人一人ジョブ鑑定をしていく。集まった者の種族は多種多様で、コボルト、猫人族、ハーフリングなど、ほとんどが弱小種族と呼ばれる者たちだった。


 話を聞くと、ゴブリンの活躍を聞いて、自分たちもそんな風になれるかもしれないと藁をもすがる気持ちでやって来たそうだ。


 私は彼らに言った。


「転職ですべてが上手くいくわけではありません。しかし、何かのきっかけには、なるはずです。皆さんの今後の人生がより良いものとなるように、全力でサポートさせていただきます。転職料をお持ちでない方は、後払いもできます。その辺は相談させてください」


 彼らから歓声が上がる。


 この転職神殿が、実家に負けないような素晴らしい転職神殿になるように、これからも頑張っていこう。

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