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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第二章 魔王選

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21/69

21 王都へ

 旅の仲間が増えた。

 オーガ族の族長オーガルと商会を経営するゴブマさんだ。オーガルは、魔王選の関係で魔王選に出場しなくても、鬼族の代表として、魔王選の出場者を決める式典には出席しないといけないとのことで、ゴブマさんは、新しいビジネスチャンスを探す為、商会員を率いて私たちに同行している。


 道中、オーガの里の裏話を聞くことができた。


「兄上が族長になってから、私は補佐として政務に就くことになったのですが、財政状況は無茶苦茶でした。私が窮状を必死で訴えても、誰も聞いてくれず、『どうしても困ったら、どっかに攻め込んで奪えばいい』と言われるのがオチでしたよ」


 ゴブマさんが続く。


「オーガル様は、苦労しているんですよ。私がゴブリンを補佐として雇用するように進言して、それを受け入れてくれてからは、何とかやって行けるようになってますけどね」

「そのとおりですよ。今、ゴブリンたちにいなくなられたら、我が里は立ちいかなくなる。本当にゴブリンたちには感謝しかないです」

「私もオーガには助かっています。ウチの商会でも商会員としてオーガを雇用していますが、力が強く、頼もしいので、護衛いらずですよ」


 オーガルとゴブマさんの会話を聞くと、共存ができているのがよく分かる。


「それもこれも、元をたどればすべて、大聖女様のお蔭ですよ。ジョブを与えてくださってから、すべてが変わりました」

「オーガも同じです。転職者は皆、真面目にやってくれています。転職だけでなく、教育機関としても転職神殿は素晴らしいと思います。転職できなくても、転職神殿で修業させようかと思うくらいですね」


 そう言ってもらえると、本当に嬉しい。

 転職者だけでなく、転職者を通じて世界が良くなる。これが私たち転職神官が存在する意義だと思う。懸念点と言えば、オーガの転職率が上がらないことくらいだろうか。あれから色々と調べているが、その理由はまだ解明できていない。


 ★★★


 一方、アルベールはというと、王都までの道中も修行を続けていた。

 一般的に人間の「勇者」は様々なジョブを体験することが推奨されている。戦闘職に限らず、生産職も含めてだ。なので、アルベールはゴブマさんの商会の手伝いもしている。町や村に着くと、売り子をしているのだが、顔もいいし、品格もあるので、多くの女性客がアルベール目当てにやって来る。それで、売り上げが伸びているので、ゴブマさんは大喜びだ。


 一生懸命に売り子をしているアルベールを見ているとシャタンさんから声を掛けられた。


「あの子は、こういったことは絶対にやらなかったんだけどね。二言目には『俺は王子だ。俺に相応しい仕事があるはずだ』とか言っていたのにね。変われば変わるものね」

「変われない人間はいないと言われています。転職はそのきっかけにすぎません。元々、一生懸命な頑張り屋さんだったのでしょう」

「それもこれも、エクレアのお蔭ね。本当にありがとう」


 旅を続けるうちに自然とシャタンさんとは仲良くなった。

 私に母はいない。亡くなった母とシャタンさんを重ね合わせてしまっているのかもしれない。もし、母が生きていれば、こんな会話をしたかもしれない。


 そんな話をしていると、アルベールが声を掛けて来た。


「おい、シャタン。ちょっと手伝ってくれ。行列ができているんだ」

「はい、殿下!!すぐに参ります。じゃあ、またね」


 実はシャタンさんは、アルベールに母親と明かしていない。

 このことを知っているのは、魔王様くらいらしく、正体を明かさないことを条件に側に居る許可をもらっているそうだ。


 そんな重大な秘密を私に打ち明けて、どういうつもりだろうか?

 まあ、転職神官には守秘義務があるから、公表するつもりはないんだけどね。



 ある日、野営の夜警の時にアルベールと同じシフトになったので、母親について聞いてみた。


「母上のことが気になるのか?」

「はい、私は母を早くに亡くしましたから・・・」

「そうか・・・生きているだけ、俺は恵まれているのかもしれんな。俺の母は、優しく聡明な方だと聞いている。俺も小さい時の記憶しかないから何とも言えんが、それでも絶世の美女で、素晴らしい女性だというのは間違いない。また、裁縫も得意で・・・」


 称賛する言葉が続く。


 次の日、シャタンさんにそのことを伝えた。


「名乗り出たら、がっかりされちゃいそうね。あの子の中で、理想の母親像が出来上がってしまってるわね」

「そうみたいですね。でも、シャタンさんが一生懸命にアルベールさんを支えてくれていることは、分かっていると思いますよ」

「それはそうね。この前、『散々我儘を言ってすまなかった。俺はシャタンを第二の母と思っている。俺が魔王になったら、お前にも楽をさせてやる』って言ってきたのよね。本当の母親としては、複雑な気持ちになるわ」


 生きていても、側に居ても、名乗り出れない家族もいる。

 また、家族に裏切られることもある。人生とは、つくづく数奇なものだ。

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