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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第二章 魔王選

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15 オーガ来襲 3

 戦闘が始まるとすぐにオーガたちは突進して来た。

 作戦も何もない。我先にと城壁に向かってくる。しばらくして、ゴブリントラッパーたちが設置した落とし穴が発動する。3分の1近くのオーガが落とし穴に落ちた。残りの者たちは、落とし穴を飛び越えて、城壁に向かって走って来る。


 そこに大量の矢と魔法が降り注ぐ。

 爆発で吹っ飛ばされるオーガもいるが、体に矢がいくら刺さっても気にせずに向かってくる。それにオーガの皮膚は、かなり固いようだ。鎧も着ていないのに矢を弾き飛ばす個体もいる。

 村長が言う。


「あれがオーガの強さじゃ。弓や魔法で仕留められるものではない。だからこそ、色々と作戦を練ったのじゃ」


 話には聞いていたが、実際に見ると驚いた。

 このオーガたちが、鎧を着用し、更にきちんと部隊活動ができたのなら、私たちは太刀打ちできなかったかもしれない。


 一方的に矢と魔法を浴びせ掛けたが、それでもオーガの進撃を止めることはできなかった。

 多くのオーガが城壁を登って来る。それをゴブリンファイターたちが、連携して城壁から落としていく。これは事前に想定し、訓練をしていたので、多少怪我人は出たものの、今のところ撃退できている。驚きなのはオーガたちのタフネスだ。5メートルくらいの高さから落下しても、ほぼ無傷だ。


「オーガはパワーもそうじゃが、その打たれ強さは魔族随一と言われておる」


 村長は冷静だった。

 そして、部隊員を鼓舞する。


「もう少しの辛抱じゃ!!このまま耐えるぞ!!」

「「「オオオー」」」


 しばらくして、オーガたちは精彩を欠くようになった。

 地面に座り込んでいるオーガも多くなった。痺れ薬が発動したのだった。いくらジョブ持ちのゴブリンが多くいるとはいえ、オーガを圧倒できる戦力はない。なので、武器に痺れ薬を塗り込んでいたのだ。オーガは鎧も着ていなければ、楯も持っていない。多少、攻撃を受けても大丈夫なタフネスを持っている。それに治癒力も高く、骨折しても2~3日で治ってしまうようだ。

 だから、オーガたちは守備の意識がまるでない。鎧を着ること自体が、臆病者という風潮もあるくらいだ。今回の作戦は、オーガの強みを逆手に取ったものなのだ。

 因みに痺れ薬は、生産職のゴブリンたちが、徹夜で作ったものだけどね。


「今じゃ!!ゴブキチ、ゴブコ!!勝負を決めろ!!」


 村長の指示で、影に潜んでいたゴブキチとゴブコが姿を現した。

 それぞれ騎乗しているシャドウウルフのスキルを使って、影移動でオーガの族長のところへ、一気に突撃した。

 ゴブコがスキル「連続矢」で族長に大量の矢を浴びせ掛ける。族長が棍棒で、矢を振り払うがすべてを防げるわけはなく、何本かは体に刺さる。


「クソ!!体が動けば、こんなものなど・・・」


 族長は痺れ薬に侵されて、本調子ではないようだ。

 族長がゴブコに集中しているところに、死角からゴブキチがラッシュと共に現れ、族長の後頭部を棍棒で、思いっきり殴り付けた。

 族長は前のめりに倒れ込み、動かなくなった。


 ゴブキチたちに気付いた周りのオーガたちが一斉に群がって来る。

 しかし、ゴブキチとゴブコはすぐに影移動のスキルで、族長を回収して、消えてしまった。


 村長がオーガたちに拡声の魔道具で呼びかける。


「オーガども!!族長は討ち取った。儂らの勝ちじゃ。大人しく立ち去れ。お前らが大人しく帰るまで、族長は預かっておく」


 オーガたちは、顔を見合わせて、相談を始めた。

 そして、年配のオーガが言う。


「そちらの要求を呑む!!我らの負けだ!!皆の者、撤退だ!!」


 オーガたちは、痺れ薬でフラフラの状態だが、それでも死者は出ていない。ゴブリンたちには殺すつもりで攻撃するように指示していたんだけどね。

 聞いた話だと、オーガはそれこそ、首を斬り落とすくらいしないと死なないそうだ。槍で心臓を貫かれても戦い続けたという記録もあるという。


 そんな感じで、ゴブリン対オーガの戦闘は、ゴブリンの圧勝で幕を閉じたのであった。



 ★★★


 次の日、捕虜となったオーガの族長と交渉することになった。

 オーガの族長は、普通のオーガよりも一回り大きい。名前はオーガラ、歴代屈指の実力者という触れ込みは、あながち嘘ではないようだ。

 村長が今後について、オーガラと交渉を始めた。


「こちらからの要望は、今後オーガへの上納は廃止する。それとオーガラ殿の身柄じゃが、身代金が支払われ次第、釈放することを約束しよう」


「そちらが、勝ったのだから、今まで通りに上納をする必要はないだろう。しかし、身代金は取れんぞ。戦に負け、捕虜となった族長など、誰も帰還を望んでいないからな」


 オーガラは自嘲気味に言う。


「次のオーガの族長は我が弟のオーガルだろう。奴は戦闘力こそ、それほどではないが、オーガには珍しく頭が回る。今回の遠征も大反対しておったし、お前たちと上手くやれるだろう。そういうことで、俺の身代金が払われることはない」



 1週間後、オーガの使者がやって来た。

 条件としては、こちらの要望通り、オーガへの上納は廃止となった。ただ、交易は続けたいらしく、適正価格で取引をしたいとのことだった。こちらとしても断る理由がないので、これを受けることにした。オーガルという新族長は、ちゃんと考える頭を持っているようだった。


 そして、前族長のオーガラについてだが、使者が持ってきた親書にはこう記載されていた。


「今回の侵攻については、すべて前族長のオーガラの独断である。よって、身代金は支払わない。そちらで処刑してくれてもいい」


 話し合ったところ、流石に処刑は可哀想ということになり、オーガラはホープタウンで働くことになったのだった。

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