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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
第一章 追放、そして・・・

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11 ゴブリンとの暮らし

 キラーグリズリーの討伐作戦から3ヶ月が経った。村は大発展している。

 というか、もはや村の規模ではない。町レベルだ。というのも、多くのゴブリンたちが、近隣の村や集落から、この村に移住してきたからだ。

 この村が発展し、食糧事情が安定したこともそうだが、一番の理由は転職神殿があるからだ。新たなジョブを得て、新しい人生を歩もうというゴブリンたちで、活気に溢れている。

 移住者の受け入れなどで、村長は大変そうだけどね。


 村長は言う。


「今日、明日の食料を心配していた頃に比べれば、今は天国じゃ。それもこれも、すべて()()()殿()のお蔭じゃ」


 そう言ってもらえると本当に嬉しい。

 転職神官にとって、一番嬉しいのは、やっぱり転職した人たちに感謝され、その人たちが幸せな人生を送ることだからね。


 そうはいっても、ここに来たすべての人が転職できるわけではない。

 転職には適正というものがある。いくら本人が転職を望んでも、こればかりはどうしようもない。現在は転職できなくても、将来転職できるジョブが見付かればいいのだが、それでもゴブミのように将来の適職が分からない者も増えてきた。


 しかし、そんな人たちも希望を捨てずに頑張っている。

 それはゴブミの影響が大きい。ゴブミは未だ適職は分からないが、それでも明るく、元気に働いている。そんな姿を見て、適職が分からなくても、この村に移住して頑張っているゴブリンも多い。すぐに転職できず、将来転職できる適職も分からないゴブリンたちは、かなり落ち込んでしまう。そんなゴブリンたちにゴブミは優しく語り掛ける。


「転職で苦労した人ほど、いいジョブに巡り合えると言われています。だから、神様は最高のタイミングで、最高のジョブを用意してくれているはずです。私も同じく、将来の適職は見付かっていません。ですが、希望を捨てず、頑張っていれば、きっといいことがありますよ」


「ありがとうございます、聖女様!!悔しいけど、俺も頑張ります」

「私も!!聖女様、もうちょっと頑張ってみるわね」


 因みに転職神殿で働いている女性スタッフは、すべて聖女と呼ばれている。転職者が増え、スタッフを増員したのだが、村長に「とりあえず、聖女と言っておけば、みんな有難がる」と言われたので、みんな一律、聖女ということにした。そして私は「大聖女」だ。これは少し恥ずかしい。

 まあ、本家本元のマーズ教会が知ったら腰を抜かすほど驚くだろうけどね。



 ジョブ関係について、少し話をする。

 実はゴブリンライダー隊が新設された。ゴブキチを含めて、6名になった。ゴブキチが積極的に募集したことも大きい。というのも、フォレストウルフは全部で10匹いるのだが、ゴブキチが乗っているラッシュが仲間から「俺たちもゴブリンを乗せたい」と文句を言われたそうだ。そんなこんなで、ゴブキチが相談に来た。


 人間で言うと「騎兵」のジョブを得るには、長時間、騎乗したほうがいいとされている。

 そのことをアドバイスし、ゴブキチは、手当たり次第にゴブリンたちをフォレストウルフに乗せていた。そうしたところ、新規で転職した者が2人、ゴブリンソルジャーからの転職組が2人、そして・・・


「えっ!!私にゴブリンライダーの適性があるの?」

「そうね。というかこれも珍しいんだけど、ゴブコは「ゴブリン弓騎兵ボウライダー」になれるわ。弓に特化した騎兵ね」


 少し悩んだゴブコは言った。


「転職するわ。ゴブリンライダーが増えたから、ゴブキチが「俺が隊長だ!!」とか言って調子に乗ると思うのよ。アイツは馬鹿だから、私が側にいて、面倒を見てあげないとね。何も考えずに突撃して、全滅したら嫌だしね」


 結局、ゴブキチが隊長、ゴブコが副隊長ということになった。また名前は、「ゴブリン神聖騎士団」ということになってしまった。そうなったのは、恰好いい名前について相談に来たゴブキチにマーズ教会では、エリート部隊のことを「神聖騎士団」と呼んでいると言ってしまったからだ。

 今にして思えば、そんなことを言わなければよかったと思う。聖女を名乗り、おまけに神聖騎士団を作るなんて、喧嘩を売っているとしか思えないからね。


 ★★★


 多くの者が幸せになり、希望を持って暮らしている中で、元気のない奴もいる。

 ロバのアレクサンダーだ。ラッシュたちがやって来て、ポジションを奪われたからだ。ラッシュに乗るようになっても、ゴブキチはアレクサンダーに3日に1度は騎乗して活動している。初めての騎獣だったし、辛く厳しい任務(主に配送業務)を共にした戦友でもある。圧倒的に戦力にならないけど、それでもゴブキチはしっかりと面倒を見ている。そういう情に厚いところは、ゴブキチの良いところだ。


 しかし、ラビを介してアレクサンダーから話を聞いたところ、「ゴブキチの優しさが逆に辛い」とのことだった。最終的にゴブミが引き取ることになった。同じような境遇のアレクサンダーに同情したようだ。別れの日、ゴブキチは泣き崩れた。


「アレクサンダー!!今まで本当にありがとう。お前のことは生涯忘れないからな・・・ウッウッウウウー」


 感動的な場面に見えるかもしれないが、ゴブコが冷静にツッコミを入れる。


「アンタ馬鹿なの?アレクサンダーは普段は教会にいるし、夜は厩舎に帰るんでしょ?今までと大して変わらないじゃない」

「そ、そうだな・・・アレクサンダー!!俺たちはこれからも一緒だ」

「本当に馬鹿なんだから・・・」


 まあ、ここに来て1年が経ったが、結構充実している。

 スキルの「転職」も使えるようになったし、転職神殿も開けた。

 まあ、転職神殿は無許可だし、私の転職神官資格は剥奪されているし、大聖女を勝手に名乗っているし、勝手に神聖騎士団を設立してしまったし・・・間違いなく投獄されるレベルだ。


 故郷に帰るつもりはないから、別にいいんだけどね。それに帰ったところで、マロンが何かやってくるだろうし・・・



 それはそうと、実家の転職神殿は大丈夫だろうか?

 戦闘職の研修はどうするのだろう?神官騎士団とユリウスがするのだろうけど、心配だ。


 研修を委託していた各ギルドのギルマスたちは、気難しい職人気質だ。鍛冶ギルドのギルマスなんて、短気ですぐに手が出るからね。それに冒険者ギルドのギルマスは、自由奔放で今でも現役の冒険者のつもりだ。薬師ギルドのギルマスは・・・


 考えても仕方ない。私にはどうすることもできないからね。


 私はこの場所で、転職神官として生きていく。ここに来たのも神様のお導きかもしれない。

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