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          8話

俺、天月優斗(あまつきゆうと)は日課の屋敷の庭の花の水やりをしていた

悠介さんと愛海さんに正式に引き取られてもこの事は続けていた


2人は別にしなくてもいいと言ってくれたけどある日突然、君がよければ是非と言ってくれた

理由は分からないけど、美琴さんが「水やりしている時の彼は見ていて楽しそうで、こっちも和みます」と根回しをしてくれたらしい


ここの屋敷は本当に広く圧巻で庭園の花もあって綺麗の一言に尽きる

そんな事を思いながら水やりを続けていると…


「美琴、彼は見ていて和むね…やはり優斗君を迎えたのは正解だったようだ」


「仰る通りです御当主様、もし彼が勉学を重ねるなら…」


「そうだね、私は家柄で娘の結婚相手を選ぶつもりは最初からなかったよ、では行ってくる」


そんな会話が聞こえ、少し分からない気分になってしまったが聞こえないフリをしていた…

そして…


「悠介さん…じゃなくて父さん、行ってらしゃい!」


「うん!行ってくるよ息子よ…」


そうして父を見送り、水やりを続け、今日の分を終わらせると、姫乃が麦茶の入ったボトルを片手にやってきて


「優斗君、大丈夫?お茶飲んでね」


「ありがと!それでなんだか顔赤いけど、どうしたの?」


そう問いかけると姫乃に遊園地に行きたいと誘われた

理由は家に居てばかりでは退屈だろうと思いデートに誘ってくれた


俺は気持ちは凄く嬉しかったしこんなに綺麗な人とデートに誘ってもらえるのは凄くありがたかった

けど、今の俺は何もかも忘れてしまったので外の世界を知る事が正直、怖くてたまらなかった


しかし、姫乃は「例え君にとって辛い場所でも私が守るし支えるから」と心からの言葉で勇気を貰い記憶を失って以来、初めて外に出る事に決めた


そして美琴さんに車で送ってもらい、入場したはいい…

問題は周りの視線を浴びている事だ…

理由は知っている、姫乃さんが可愛すぎるからだ

それはそうだ、栗色混じりの茶髪のロングヘアーの姿をした美少女が俺の腕にくっついて離れないのだ

恥ずかしくて身体から火が出そうな状況で2人の知らない男女組が俺達に駆け寄る


「優斗!久しぶり!!大丈夫だったか!!?」

「天月君、あの今までごめん!大丈夫なの?」


2人に心配そうな顔でそんな声をかけられる

おそらく俺の知り合い…だと思う

けど今の俺は2人の事は分からない


「あの…貴方達は誰ですか?」


この言葉を絞るのが精一杯だった

今の俺にとって何も覚えていないのだから…


2人組のうち、1人の男性は神崎龍星(かんざきりゅうせい)と自分の名前を名乗る

本人曰く、記憶を失う前の俺の最大の理解者で一度屋敷の中に俺がいたのを目撃したらしい


女性の方は星野由奈(ほしのゆな)、俺の元カノで今いる遊園地で俺を本人の感情で振って他の彼氏を見つけようとしてるが見つからず後悔しているらしい


「私が冷めたなんて感情的に振らなければ全てを忘れるなんて悲しい事も起きなかったのに、ごめんなさい…」


「俺もごめん、優斗に身寄りが居ないのは知ってたのにあの事故の時、病院に顔出しに行けなくて…全てを忘れてしまっていたのに…」


龍星と由奈の謝罪を受けたが俺は全てを忘れている為、答える事が出来ずにそのまま立ち尽くす事しか出来なかった

しかし、次の瞬間…


「全てを忘れた?それだけではありませんよ…彼は、優斗君はこうして外に出る事も無意識のうちに恐怖心を抱き、私達が引き取った最初も少し怯えた様子でしたのよ?それに先程、一方的に振ったと言いましたが何とひどい理由ですね…」


姫乃が人が変わったように怒り出しまるで自分の事のように言った

俺は無意識にあの日の光景が浮かび頭を痛め、倒れそうな苦痛に襲われたが、心配をかけたくない一心で耐えていた


「由奈とかいったっけ、昔の事にばかり追いかけてどうするの?頼むからやめてくれ、これが今の俺なんだ」


俺は残された余力を使い切るようにそう伝えると姫乃といつもの屋敷へと戻る為に帰路に着いた


そして屋敷の自室のベッドで倒れてしまい

その音が響き…


「美琴、大変!!緊急事態よ!」

「どうなされましたか、お嬢様!?」

「優斗君が!!」

「どうやら体力を使い切って憔悴(しょうすい)してるだけなので安静にしてれば回復致しますよ」


姫乃と美琴さんの会話のラリーがうっすら聞こえベッドの布団を掛け直して貰った

俺が覚えているのはここまでだ








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