序。その2
『序。その2』は遥歩視点のお話です。
是非とも楽しんでいってください。
僕の名前は遥歩
最近はコーラス部で楽しくやってます。
男声は少ないけどたくさん練習した末に賞を取れると凄く嬉しいです。
「あっ、遥歩。久しぶり。」僕に挨拶してくれるこの子は藍花僕の幼なじみで僕の大切な人。
「久しぶり、藍花。」手を振ってみるも慣れないからぎこちなくなっちゃったな。「あのね、遥歩…」「ごめん僕そろそろ行かなきゃ。」被ってしまった…
申し訳ないけど行かなきゃ行けない。もっと話したいんだけどな…
僕が藍花を大切にしようとしてるのには理由がある。
5年前の夏、藍花は家族全員でちょっと遠い地域の花火大会に行ったんだ。そこで信号を待っている時に車が突っ込んでしまって…藍花と麻妃ちゃんを残してご両親は亡くなってしまったんだ。
彼女は多分事件のことを忘れるようにしてるんじゃないかな。麻妃ちゃんはまだ幼かったから覚えてないだろうけど藍花は違う。目の前で両親が死ぬのをただ見るしかできなかったんだ。心に傷を負った藍花はその傷を隠して振る舞うようになった。家にいる時は基本倒れるように寝てる。心の傷と戦ってるんだ。事件の後、色々あって今は僕の家で彼女たちを養子として引き取ってるよ。
部活帰りに公園で歌ってたら麻妃ちゃんと会った。
「あれ?麻妃ちゃん。こんなとこで会うなんて奇遇だね。」
「遥歩お兄ちゃん!こんばんは。友達のお家から帰ってたらお兄ちゃんの声がしたから来てみたの。」藍花がシスコンになる理由がわかる。「そうなんだね。一緒に歌う?」そういうとちょっと不安げな表情を見せて、「いいの?麻妃、邪魔じゃない?」いつもはこんなこと言わないからちょっと驚いた。ずっと気にしてたのだろうか。「全然、気にしなくていいよ。麻妃ちゃんは大切な家族だからね。邪魔だなんて思ってないよ。」そう言うと麻妃ちゃんはちょっとだけ嬉しそうな顔をして「そっか、ありがとう遥歩お兄ちゃん。何歌うのー?」「えーっとね…」こうして何時間か経った。
「麻妃ちゃん、もう遅くなるし帰ろっか。」手を差し出して握って帰ろうという意思を見せる。「うん!!お兄ちゃん」満面の笑みで僕に言う。「どーしたの?」「今日楽しかった!!」元気いっぱいの声に僕は答える。「そうだね。楽しかったね。」こうして家に帰った。「「ただいまぁ」」元気いっぱいに言うと、藍花が降りてきて「おかえり、麻妃。」
藍花には僕のことは見えていない。家にいる藍花には家族は麻妃ちゃんしかいないと思ってるから、正しくは『認知できてない』
だからこそ、僕は藍花の支柱になりたい。
ふとした拍子に彼女の心が折れてしまわないように。
家でも彼女が笑えるように…