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麗しい婚約者様。私を捨ててくださってありがとう!  作者: 青空一夏


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42 孫にメロメロお祖母様

 やがて、元気な赤ちゃんの産声が室内に響き渡り、アリッサをねぎらうラインの声と、喜びに満ちたギャロウェイ伯爵夫人の声に包まれ、アリッサは母となった感動の涙を流した。生まれてきたのは精霊たちの予言通りの若草色の髪と瞳の男の子だった。

 

 新しい命がこの世に誕生した瞬間、部屋の空気がふっと変わる。柔らかな香りが屋敷全体に漂い、部屋に飾られた花々が一斉に開花したのだ。窓の外では森の木々が優雅に揺れ、葉の間から淡い光が差し込み、部屋全体が神聖な輝きに包まれた。


 赤子の若草色の髪は陽光を浴びるたびに淡く輝き、瞳は深い知性と優しさを宿していた。生まれたばかりだというのに、顔立ちは端正でとても整っている。

 

「・・・・・・この子が、私たちの・・・・・・息子なのね。なんて綺麗で麗しい子なの?」

 アリッサは目に涙を浮かべながら、息を呑んだ。

 

「しかもとても賢そうだ。お疲れ様、そしてありがとう。こんなに素晴らしい息子を産んでくれて、……今日という日を私は決して忘れないよ」

 ラインも感動のあまり涙ぐむ。

 

「この子の名前はシルヴィアスにしよう」

 ラインはあらかじめ考えていた名前を口にした。

 

「まぁ、素敵。シヴィ、良かったわね。お父様からとても素敵なお名前をいただいたのよ。嬉しいでしょう?」

 

「まぁ、本当に素晴らしい名前だわ。シビィ、私はあなたのお祖母様ですよ」

 

 シルヴィアスは生まれたてだというのに、ギャロウェイ伯爵夫人に愛らしい微笑みを向けた。たちまち、ギャロウェイ伯爵夫人は孫の可愛さに目覚めてしまう。

 

「奇跡だわ! シヴィが私に、ニコリと微笑んだのよ。この子は間違いなく天才ですよ。もう、言葉がわかるのだわ」

 

 その瞬間、部屋に飾った花瓶の花がニョキッとシルヴィアスまで伸びて、優雅に踊るように動いた。

 

「どうやら、花たちはシヴィをあやして遊んであげているようだね。シヴィは植物たちから守られ不思議な奇跡を起こせる選ばれた人間だからね」

 ラインはシルヴィアスの頭をそっと撫でた。

   

「とても不思議な子だわ。花瓶に挿した花までが、この子の可愛いお顔を覗きにくるのね……」

 ギャロウェイ伯爵夫人は嬉しい驚きと感動で、顔を輝かせていた。

 

「お母様。この子は『精霊の守り人』だそうです。伝説にもあるらしくて、森の精霊に守られて共存するような関係なのですって」


「まぁ! まさかそんな特別な子をアリッサが授かるなんて・・・・・・なんという奇跡でしょう!」

 

 


 それからというもの、ギャロウェイ伯爵夫人は領地に帰ることを忘れてしまった。産後のアリッサの世話を甲斐甲斐しくしながら、孫のシルヴィアスを宝物のように可愛がる。クリスタルとも会うと、ギャロウェイ伯爵夫人は二人を抱きしめ、「今後は孫のために生きるわ」ときっぱりと言い切った。

 

「素敵な子。あなたは私とライン様の宝よ」アリッサの言葉にギャロウェイ伯爵夫人が続ける。

「この子はギャロウェイ伯爵家の宝でもありますよ。神様は本当に素晴らしい宝物を私たちに授けてくださったわね」

 

 ギャロウェイ伯爵夫人は、孫の可愛さにすっかり心を奪われていた。アリッサの子、シルヴィアスは泣くこともなくいつも笑顔を浮かべている。彼は美しく、可愛らしく、生まれつき緑に愛される奇跡的な存在なのだ。そのうえ、クリスタルもシルヴィアスに引けを取らないほど愛らしく、ギャロウェイ伯爵夫人はワイマーク伯爵領を去ることができなくなってしまった。


 夫であるギャロウェイ伯爵への手紙には、「孫たちのそばにいたいので、しばらく戻りません。帰るのは来年か再来年……いえ、いっそ別荘を建ててワイマーク伯爵領に移住したい気持ちですわ」と記したのだった。





♦♢sideギャロウェイ伯爵


  

「なんだと? 再来年まで帰らない? ……移住したいだと? 一体コンスタンティア(アリッサの母)は何を考えているんだ!」ギャロウェイ伯爵の叫び声が、居間に轟き渡った。


 定期的に手紙はくるものの、いっこうに戻ってこない妻に腹を立ててたギャロウェイ伯爵は、その大袈裟な手紙の内容に鼻を鳴らした。

 

「まったく、アリッサの子供が生まれたぐらいで大騒ぎしおって・・・・・・」

 

「父上。母上からの手紙ですか? 私にも読ませてください。なに、なに・・・・・・この世の者とは思えないほど美しく愛らしい男の子が誕生した・・・・・・奇跡の孫・・・・・・どうせなら別荘をワイマーク伯爵領に建て、そこに移住したい? ・・・・・・母上は温暖なワイマーク伯爵領で頭まで温かくなったのでしょうか? 正気の沙汰ではないでしょう?」

 

「うむ。まさか、ここまで孫に夢中になるとはなぁ。私が連れ戻しに行くとするか。たかが孫のために別荘を建てて移住するとか・・・・・・あり得ないからな」

 ギャロウェイ伯爵は呆れた口調でため息をつきながら、ワイマーク伯爵領へと向かったのだった。



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