おまけそのに(プチざまぁ)
こちらは国王のざまぁです。この回も物語の流れ的には影響しませんので、読みたくない方は飛ばしてください。ちょっと笑えるプチざまぁです。
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ジョーゼフ国王は日々、より良い政治を行おうと努力していた。しかし、空回りすることが多く、そのたびに王太后の助言を受けてどうにか政務をこなしていた。だが、そのストレスは計り知れないもので、近頃では鏡を見るたびに気がかりなことが増えていた。まだ髪が薄くなる年齢ではないはずなのに、このところ抜け毛が気になるのだ。
「ふむ……やはり、髪が薄くなった気がする。いや、細くなったのか? 以前はもう少しふさふさしていたような気がするが……」
ジョーゼフ国王は大きな鏡の前で、ため息をついた。政務の合間に思い返すのは、最近ライン卿とアリッサ嬢に謝罪した出来事だった。彼らの結婚式後、和解の席を設けた国王は、特にラインの寛大な対応に感動した。ラインはわだかまりなく微笑み、こう言ったのだ。
「国王陛下の英断に感謝しております。なにか、お礼を差し上げたいのですが」
「いやいや、あのような判断をして申し訳なかった。被害者のあなたから贈り物をいただくわけにはいかない」
「とんでもありません。それに、最近開発した医薬品でとても評判の良いものがあります。増毛剤と除毛剤です。髪の毛が寂しい方には増毛剤が、多すぎる方には除毛剤が人気です」
「おぉ! それは素晴らしい! 実は、余はそのふたつで悩んでいたところなのだ。髪は薄くなり、体毛は無駄に濃いという厄介な状態でな……少しばかり気にはしていた」
「でしたら、増毛剤と除毛剤を贈らせていただきます。間違えないよう、容器には大きな文字で記してありますので、安心してお使いください」
ジョーゼフ国王は満面の笑みを浮かべた。しかし、ラインから贈られたその容器には「増毛剤」「除毛剤」と大きな文字で記されており、メイドや侍女たちに見られると、すぐに噂が広まりそうで気が進まなかった。なので、まだ未使用のまま大事に引き出しにしまってあったのだ。
ジョーゼフ国王はそれをそっと取り出すと、小さな声で呟いた。
「ふむ……この入れ物がいけないな。もっとおしゃれで、文字が書かれていないほうが洗練されている。そうだ、香水の瓶に入れ替えてしまえばいい。ブルーの瓶には増毛剤、ピンクの瓶には除毛剤を入れて……これでよしっと! これなら、誰に見られても噂にはなるまい」
ジョーゼフ国王は、自分の考えに満足し、瓶の色で中身を区別することに決めた。効き目は抜群で、髪の毛は日に日にふさふさしてきたし、体毛のほうは綺麗になくなっていった。
「ふむふむ。なんと、ライン卿の医薬品は素晴らしい! やはり、彼はこの国の宝だなぁ」
国王は感動の声をあげたのだった。
そして、ある日の晩、ジョーゼフ国王は決定的な間違いを犯してしまった。就寝前にピンクの瓶の中身を髪に、体毛が気になるお腹や胸にはブルーの瓶の中身を塗ってしまったのだ。
そして、翌朝、ジョーゼフ国王は驚愕することになる。ふさふさしかけていた髪の毛は一本残らず抜け落ち、逆にお腹や胸、さらには足の毛はボウボウと茂り始めていたのだ。
「うひゃぁーー! なんだこれは……! 増毛剤と除毛剤を間違えたのか!」
鏡を見つめ、青ざめるジョーゼフ国王の姿がそこにあった。こうして、彼の悩みはさらなる厄介ごとへと変わっていったのだった。




