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おまけそのいち(プチざまぁ)

※こちらはリクエストを反映し、プチざまぁを急遽はさみました。物語の展開にはまったく影響しませんので、ざまぁを読みたくない方は飛ばしてください。クスリと笑えるざまぁですし、わりとばかばかしいざまぁです。まずはギャロウェイ伯爵とサミーです。あらかじめ用意しているざまぁは他にあります。


 アリッサとライン卿が感動的な結婚式を終え、ワイマーク伯爵領に向かう頃、ジョーゼフ国王は王太后から厳しい諫言を受けていた。


 「ダイヤモンド鉱山は、有限の資源に過ぎません。いずれ尽きるものです。しかし、ワイマーク伯爵家が生産する医薬品や化粧品は、卓越した効能を持ち、日々改良が重ねられています。これは、ライン卿の深い知識と絶え間ない努力の賜物であり、代々受け継がれてきた家業の結晶なのです」


 王太后は、毅然とした眼差しでジョーゼフを見据え、さらに続けた。


「国王としてあなたが考えるべきは、長期的な国益です。それに、アリッサ嬢を無理にサミー卿と結婚させようとしたのは、賢明ではありませんね。サミー卿は自己中心的すぎます」


 ジョーゼフは神妙な面持ちで頷いた。

 「おっしゃる通りです、母上。私が王位に就けたのは、母上の力添えがあったからです。それは片時も忘れたことはありません」


「私が貴方を推挙したのは、長子が王位を継ぐというこの国の慣習を守るためでした。無用な争いを避けるためにも、それが最良の選択だったのです」


 ジョーゼフは長男ではあったが、弟のアマディーアス・トラスク公爵は、その才覚においては兄を凌駕していた。先王や大臣たちの多くが、アマディーアスを国王に据えるべきだと考えていたが、王太后が伝統を覆すことに強く反対したのだ。


 ジョーゼフはそのことに対して、深く母に感謝していた。彼女の助言には常に耳を傾けるつもりであり、逆らう考えは微塵もなかった。それどころか、母の期待に応えようと、日々その重圧に身を委ねていたのである。


「この度の件では、母上に多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。ところで、サミー卿とギャロウェイ伯爵家に関しては、どのように対処すればよろしいでしょうか?」


「そうですね。サミー卿とギャロウェイ伯爵夫妻をこちらに呼び出し、少しお話をしなくてはなりませんね」


「かしこまりました。あの者たちも、母上のお言葉を賜れば、きっと大きな教訓を得ることでしょう。私自身、日々母上からのご指導を頂いており、深く感謝しております」


 ジョーゼフは敬愛する母を穏やかな目で見つめ、微笑んだ。王太后は、長男が決して才知に優れているわけではないものの、真摯に助言を受け入れ、成長しようと努める姿勢を好ましく思ったのだった。



 さて、王太后に王宮へと呼び出されたギャロウェイ伯爵夫妻は、お叱りを王太后から受けていた。

「貴族にとって政略結婚は避けられないものですが、あまりにも娘の意思を無視して強引に進めるのは感心しません。子どもは家の利益を追求するための単なる道具ではないのです。今期の社交シーズンはまだ終わっていませんが、領地に戻ってよく反省なさい」

 

 王太后はため息をつきながら、今度はサミーにむかって声をかけた。

 

「サミー卿、アリッサ嬢とのこれまでの経緯はすでに聞いております。自分勝手な行動で婚約を解消しておきながら、都合が悪くなると今度は彼女のもとに戻り、無理やり結婚を迫るとは。アリッサ嬢はあなたの玩具ではないのです。あなたの行為は身勝手極まりない。あなたも領地に戻りよく反省なさい」


 冷たい視線と威厳のある声音に、ギャロウェイ伯爵夫妻は冷や汗を垂らす。だが、サミーは少し不満そうな顔でつぶやいた。

「アリッサはまだ私のことを愛しています。だって、婚約していた頃の彼女は私に夢中で、何でも言うことを聞いてくれたんです」


「今のアリッサ嬢にはライン卿がいるのです。いい加減、現実を見つめなさい」

 

 王太后は呆れ顔で、去っていく二大貴族の背中を見送った。厳しい罰を与えるべきかとも思ったが、アリッサはすでにラインと幸せな結婚式を挙げ、今はワイマーク伯爵領で輝くような笑顔を浮かべて新婚生活を楽しんでいることだろう。

 

(あの者たちを罰して、せっかくの幸せな余韻を台無しにしたくないわ)


 王太后はそう思ったのだ。

 

 しかし、タイミングよくギャロウェイ伯爵夫妻とサミーの頭上を飛んでいたカラスが、思わぬ「贈り物」を落としてきた。彼らが王城を出た瞬間の出来事である。


「うわっ、鳥の糞が頭にかかったぞ!」ギャロウェイ伯爵は顔をしかめながら叫んだ。


「まあ、私は新調したドレスの肩部分に……なんてこと!  かなり大きな鳥……カラスですわね。何というタイミングの悪さでしょう……」

 ギャロウェイ伯爵夫人も不快そうに呟いた。


「前髪に直撃だ。うわっ、なんだこれ……やたらと水っぽいぞ、目に入りそうだ! それに、くっ……くっさっ。すごく臭いぞ」

 サミーも慌てて糞を拭い取ろうとしたが、すこしだけ目に入ったようで充血してしまった。


「痛い、痛い。目が痛いぞぉ!」

 その後、数日間にわたり、サミーの右目は赤く腫れ上がり、使用人たちからはまるで化け物を見るような視線を向けられることになった。

 

 実はそのカラスの親子は、ちょうど消化の悪い腐りかけたものをついばんだ直後だった。まさに絶妙なタイミングの「罰」が、静かに下されたのだ。その糞からは、思わず顔をしかめたくなるようなおかしな匂いが漂っていたのだった。


 

 

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