5話《魔法→化け物》
5話です!
楽しんでいってください!
匡近が前世で死ぬときの記憶を見たユグドラシルは、腕を組み考える。
「まさかここまで無惨な死に方をしたとは・・・。どうすべきかのう・・・」
匡近のやり残したことがわかってしまったユグドラシルだが、それは死の瞬間に触れなくてはならないことで・・・。と、悩んでいると、匡近が身を起こす。
「あ、ユグドラシル。おはよ」
「うむ。おはようなのじゃ」
平素な表情を取り繕い、挨拶を返したユグドラシル。
だが、完璧に取り繕う事はできず、匡近に聞かれてしまう。
「ん? なんかあった? 浮かない顔して」
「んっ!? な、なんでも無いのじゃ。そんなことより! 魔法、使ってみたく無いのじゃ?」
これ以上の詮索は危ないと感じたのか、露骨に話を逸らすユグドラシル。
だが、魔法についてかなり好奇心を持っていた匡近は、食いつくように賛成した。
「使いたい! え? 俺でも使えるんだよね?」
「うむ。昨日のフレイムを見る限りではおそらくじゃがかなりの魔法を操れると感じたのじゃ」
「よっしゃー! 早く教えて! ユグドラシル先生!」
ユグドラシルは、うまく話を逸らせたと安堵し、匡近へと魔法を教えてゆく。
「まずは基本中の基本。初級魔法なのじゃ。まっすぐ撃って焼け野原にしても怖いから、上に向かってやってみるのじゃ。『この世の礎ともある火の精霊よ、古の盟約に従い、我に其の力を授けたまえ《ファイア》』」
流暢に言葉を紡ぎ詠唱を終えると、松明程の炎がユグドラシルの指先に灯る。
何もない空間から出てきた炎を、目を輝かせて見る匡近。
子供が親のすることを真似るように、匡近も復唱する。
「俺もやってみる! 『この世の礎ともある火の精霊よ、古の盟約に従い、我に其の力を授けたまえ《ファイア》』!」
天に手を翳し、詠唱を終える。
匡近の手のひらに小さな火が灯ると、爆発的に炎が広がってゆく。
ユグドラシルのように松明程度の炎が出ると見ていた匡近は、空を焼き尽くすような爆炎が出たことに腰を抜かした。
「そんなに力まなくて良いのじゃ。もっと自然に、ちょっとした火種を作るイメージじゃ。魔法はイメージ、想像力が大切なのじゃよ」
「なるほど。それじゃぁ、『この世の礎ともある火の精霊よ、古の盟約に従い、我に其の力を授けたまえ《ファイア》』」
未だ不安が残り、緊張混じりに唱える匡近。だが、起きたことは先程とは違った。
匡近の手のひらに出てきた小さな火は、肥大化すること無く大きさを保つ。
感動した匡近は、ユグドラシルへ目線を向ける。
まるで芸がうまくできた愛玩動物のような姿に、つい頭を撫でてしまった。
「ユグドラシル、ちょっと恥ずいかも・・・」
「不可抗力じゃ。次に行くぞ」
頭に載せた手を離さぬままユグドラシルは続ける。
「次はかなりエグいやつじゃ。これさえ使えれば今やっとる火属性の魔法をすべて使えるに同じじゃからの。まずはお手本じゃ。『赤、朱、緋。全てを喰らう赤。悪しきを祓う朱。破壊へと導く灼熱の緋。畏怖され、崇拝される相反する赤。神々しく禍々しい、浄化であり汚蝕であるその赤よ、一つとなり我等が敵、その全てを灼き尽くせ《荒れ狂う邪神》』。これは全力でやっても良いのじゃ」
漆黒の炎が打ち上がってゆく。まるで怒り狂った悪魔が空を襲うように、一直線に駆け、消えていった。
全力でやっても良いと、許しをもらった匡近は、詠唱を思い出しながら力強く叫ぶ。
「『赤、朱、緋。全てを喰らう赤。悪しきを祓う朱。破壊へと導く灼熱の緋。畏怖され、崇拝される相反する赤。神々しく禍々しい、浄化であり汚蝕であるその赤よ、一つとなり我等が敵、その全てを灼き尽くせ《荒れ狂う邪神》』!!」
「あっ、やばいのじゃ。そいやっ」
ユグドラシルのそれとは比べ物にならない、惑星一つ軽く持っていきそうな爆発力の炎が、匡近の手から打ち上げられた。
慌てた様子を見せるユグドラシルが、匡近の魔法に何かをする。
何をしたのかわからない匡近は、ユグドラシルへ質問を投げかける。
「なんかこの威力の魔法も慣れてきたな。そういえばユグドラシルさ、さっき何したの?」
「いや、威力が予想以上での。あのままでは上の太陽一つぶっ壊してたのじゃ。妾でも軌道を逸らすのが限界とは・・・。驚きじゃよ」
「wow」
「とりあえず」とまたも話を逸らしたユグドラシルは、やるべきことはやったと言わんばかりに提案してくる。
「他の属性も試すのじゃ。最上位魔法さえ使えればなんとかなるからの。試したら寝床の調達じゃ。王都まで歩くからの。覚悟しておくのじゃ」
「マジかよー」
その後、火属性以外、水、風、土、光、闇属性を試し、そのすべてを使えることを示した匡近は、ユグドラシルから、
「気色悪いのじゃ。化け物じゃな」
との言葉をもらった。
読んでいただき、ありがとうございました!
次話もできるだけ早く上げれるように頑張ります!
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