23話《二次予選→音魔法》
23話です!
楽しんでいってください!
「まもなく二次予選を開始します! 該当選手は入場をお願いします!」
2時の鐘が王都内に鳴り響く。
闘技場に渡る声に、選手が会場へと入っていった。
「二次予選では10人ごとに別れた全10ブロックの中から、それぞれの上位5名を選出する形となっております!」
司会の声を聞きながら、割り当てられたブロックの選手が集まる場所へ更に移動を始める。
「よし、集まりましたね。二次予選ではバトルロイヤル形式で戦い、勝ち残った順に上から5名が本戦に出場できます。5人目と6人目が同時に敗退した場合はそれまでの戦績から審査されますので逃げに徹するというのも得策ではありません。また、原則として杖以外の武器の所持の禁止、魔法以外の手段による攻撃は禁止されています。例外として魔法を付与して攻撃する、または魔法の発動を補助するための魔道具を使用することは許可されています。他にわからないことがあればお伺いいたしますので私や近くの係員に気軽に質問してください。では、第1ブロックから始まりますのでそれまでは待機となります。」
説明を聞き、第1ブロックの選手らが闘技場中央の壇上に集まると、それぞれの場所に立つ。
「さて、皆さんこんにちは! 今回の大魔法大会、二次予選より実況を務めます、ミミと申します! そして解説の!」
「ブライト・ガルトだ。よろしく頼む」
「ありがとうございます! 皆さんご存知ブライトさん、85回大魔法大会の優勝者なんです! 頼もしい解説ですね! さて、まずは第1ブロック! このブロックではどの選手に注目すべきでしょうか!」
「選手番号528番のネイヴィ選手だな。去年の大魔法大会にも出場している選手なのだが、水魔法に特化している彼の魔力量は目を見張るものがあり、扱いも素晴らしい。本戦出場は堅いだろう」
「なるほど! ちなみに余談ですが、現在わたしたちは一次予選から勝ち上がってきた選手の名前のみわかっている状態でして、実際の実力はわかりません! しかし1000人の中から選ばれた上位100名! 誰もが実力者であることは変わりないでしょう!」
会場に響く二人の掛け合い。
それが一段落ついた時、実況が試合開始の合図を出した。
「では早速始めましょう! ウォッシェル大魔法大会二次予選! 第1ブロック、試合開始!!!」
実況の合図に合わせて壇上の選手が一斉に詠唱を始める。
一番早く詠唱し終えた選手が有利になる中、解説の話に出ていたネイヴィ選手が魔法を放つ。
「『清き水よ、弾丸となり妨げる壁を穿て《アクアバレッド》』!」
10数個の水弾が他の選手らに向かって飛んでいく。
魔法を撃たれた選手は、回避が追いつかず被弾したり、回避できたが詠唱が途切れてしまったりと、少なくない影響を受けた。
それを機にネイヴィ選手の猛攻が始まる。
「『水よ、霧となり敵を惑わせ《ミスト》』『凍えし氷よ、凍てつく息吹となり敵を止めよ《ブリザードブレス》』!」
「なんと! 中級三等魔術だ! 中級魔術は研鑽を重ねた一握りの魔術師しか使えないという高等魔術! これには他の選手、ひとたまりもないでしょう!」
「『初級四等魔術』と併用することで詠唱の時間を稼いでいる。よく考えられた作戦だ」
あまりにも一方的な攻撃。だが数人は、なんとか張れた防御魔法にて防ぎきった。
だが、一方的な展開は変わらず、結果として残ったのはネイヴィであった。
「第1ブロック、一位通過はネイヴィ選手だー!!」
観客が沸き上がり、手を振りながら壇上を降りていくネイヴィ。
壇上の簡単な補修が行われ、第2ブロックの選手が呼ばれた。
その後も似たような戦いが繰り返される。
いかに強く広範囲な魔法を素早く詠唱しきり、打ち込めるかどうか。
そして、ついに第10ブロックの選手が呼ばれる。
「さて! もう最後のブロックとなってしまいました! このブロックでの注目選手は誰でしょうか? ブライトさん」
「何と言ってもウォッシェル王国史上三人目のSランク冒険者たるマサチカ・エンドー殿であろう。彼のアルヴァント魔獣侵攻、純龍さえいた絶望的な状況をたった一つの魔法で全滅させた伝説を持つ彼だ。あの魔力量を視るだけで、今も意識を手放したくなる。試合は一瞬だろうな」
「そんなにも! Sランク冒険者が誕生したという情報は聞いていましたが彼が! それは楽しみですね! では早速始めていきましょう! 二次予選第10ブロック! 試合開始!!!」
「『怒れ火よ。灼熱の球となり・・・」
「『水よ、刃となり・・・」
「『風よ、渦となり・・・」
壇上の選手が一斉に詠唱を始める。
その様子を眺めながら、匡近はゆっくりと考えに耽けていた。
「きっと観客の人たちとか派手なのが好きだろうし・・・。派手、壮大・・・、あ、音楽とか!? 意外といいんじゃないか? ・・・」
四方から飛んでくる魔法には目もくれず、一人思考の海に沈んでいく。
そして考えついた先に、一つの魔法を詠唱し始めた。
「『言葉の壁なき等しき音。苦しみ無き死へ導き給え・・・」
「おおっと、マサチカ選手が詠唱を始めた! しかしあれはなんの魔法でしょうか? 長年実況をしてきましたがあんな魔法見たことありません! ブライトさん!」
「な、何たる・・・!! 新たな、新たな魔法を創った・・・!? 『創賢者』たる名は本物だったのか・・・! おお、神よ! この瞬間に立ち会えたこと、私にもはや悔いなどありませぬ!」
「ブライトさんがおかしくなってしまいました! しかし魔法を創ったー!? マサチカ選手、やはり『創賢者』の名に偽りはなかったということかー!」
「《レクイエムニ短調》』」
会場に響く司会解説の声を聞きながら、思い描いた魔法を作り上げていく。
杖を指揮棒のように振り上げ、下ろす。それと同時に詠唱しきった瞬間、会場に静かに、しかし重たい、音が聞こえ始める。
しばらくして女性の歌声が聞こえ始めると、壇上にいた匡近以外の選手が放心したように動かなくなってしまった。
「き、気絶、しています。試合の続行は不可。き、9名全員、同時敗退です」
「一体何が起こったー!? マサチカ選手が杖を振り下ろすと同時に聞こえてきた音楽、それを聞いた選手が同時に気絶ー! これが、『創賢者』の魔法なのかー! ブライトさん! この魔法をどう見ますか!?」
「音だ。音が、死となり、選手等の意識を刈り取ったのだ。我々に害がなかったこと、そして彼らが気絶で済んだのはマサチカ殿の制御あってだろう。彼は音に、意志を宿したのだ」
解説をするならば、音魔法は風魔法と光魔法の複合魔法である。
光魔法による催眠を、風魔法の空間掌握で音による催眠に変換させ、増幅させるという仕組みである。
「な、なるほど・・・? とにかく、敗退した選手に関しては、これより協議を行います! しばらくお待ち下さい!」
司会から声がかかり、壇上から降りていく匡近。
そのまま観客席へ上がっていくと、アルメスが道を阻む。
「マサチカ君! 君はまた!! なんということをしてくれるんだい!!!」
「え? なんかまずかったですか?」
「当たり前だ! こんなことをしては、こんなことをされてしまったら!」
アルメスの剣幕に押される匡近。
しかしその険しかった表情を一変させ、恍惚の表情で続ける。
「より一層! 魔法を研究したくなってしまうではないか! よし、まずは不老不死になるための魔法から創ろう。それがなくては研究にも集中できんからな! ありがとう、マサチカ君! 後ほどギルド経由で報酬を送ろう!」
「・・・嵐のような人だな。あの人は」
転移魔法でおそらく自身の研究所に戻ったのであろうアルメスに、匡近は独り言を漏らす。
気を取り直して観客席のユグドラシルらのところに行くと、アイネとクライネ、レイが真っ先に駆け寄ってくる。
「あるじ様〜! すごかったです! 綺麗な音楽で相手を倒しちゃうなんて!」
「流石です、ご主人様。また新しい魔法を創ってしまうなんて」
「ごしゅじんすごい。おねーさんもすごいっていってる」
3人に褒められて口角が上がりっぱなしになってしまう匡近。
その様子にほほえみながら、ユグドラシルたちも歩いてきた。
「まるで親子じゃな。 ! ならば母親は妾じゃな!? アイネ、クライネにレイよ、妾をお母さんと呼んでもいいんじゃぞ!?」
「ユグちゃん落ち着いて。それに私だってそうなんだよ? ユグちゃんだけにお母さんの座は渡さないから」
「ユグちゃんとはなんじゃユグちゃんとは。ま、いいが」
「いいのか。ん? なら私は何になる? これじゃ単純に部外者ではないか」
「レラさんは・・・、パーティーメンバー、だ、ね。ごめんそれ以外に思いつかないや。あ、でも大事な人だよ! ユグドラシルや飛鳥、レイとアイネ、クライネと同じくらいに!」
「そのフォローが余計に辛いのだよ」と落ち込んだ様子を見せたレラ。
するとアイネ、クライネ、レイが駆け寄り、「レラおねーちゃん」と呼んで励ましている。
レラは「おねーちゃん」という響きが気に入ったのかすっかりと機嫌を良くし、笑顔になっている。
「それで? どうせまたアルメスに絡まれたんじゃろ?」
「そうだね。今頃研究室に引きこもってると思うよ。それにギルド経由で報酬が出るって」
「また!? 魔法を創るってそんなにすごいことなんだね」
驚いた様子の飛鳥に頷く匡近。
そんな穏やかな風景の中に司会の声が聞こえてくる。
「お待たせいたしました! 第10ブロックの協議、及び本戦の試合表の作成が完了いたしました! 本戦は明日! 9時の鐘より開始します! これから呼ばれる本選出場者は、試合表を確認をお願いいたします!」
「お、やっとか。マサチカの本戦出場は確定だからな。混む前に確認に行ってくると良い」
レラに促され、匡近はまた会場へ移動を始めた。
読んでくださりありがとうございました! もし可能なら、ぜひ実際に「レクイエムニ短調K.626 作ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」を聞きながら読んでみてください。臨場感がすごいですよ。
では、
次話もできるだけ早く上げれるように頑張ります!
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