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〜回想・庇護〜

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 『いつも、いつもこうだ。』


 そんな自分への嫌気がずっと、心の柔らかい所に突き刺さっている。取ろうと思えば跳ね返してきて、だからといって放置すればささくれ立った小さな腫れがズキズキと私を呼び続ける。


 朝起きても、通学していても、授業でレポートをまとめていても、バイトをしていても。ずっと、ずっと、ずっと。この煩わしい自己嫌悪はついて回っている。


 …別に卓越した技術や、他の追随を許さない成績の様な『とびっきり』の優秀を求められている訳ではない。どちらかと言えば容量は悪くない方だとある程度の自負はあるからこそ、自分が許せない。







 『違うよ!通り掛かっただけ!!』


 『あー!!東堂嘘つきだー!!』





 小学生の時。窓ガラスを割った犯人に仕立て上げられた。主犯格の同級生はクラスの人気者、私はそうでもない平々凡々。分かりやすく対立していて、互いによく思っていない。…割れたガラスは実に都合が良く、同級生の体の良い『ポイント稼ぎ』に使われた。



 結局疑いは有耶無耶にされたモノの、いわゆる『一軍』としての地位が揺るがなくなった同級生には目の敵にされ続け、私は平々凡々からも蹴落とされてしまった。






 『……っぁあ…ぅっ……!!』




 『バカッ…東堂動けよテメェ!!』


 『何やってんだ投げろやオイ!!!』





 高校生の時。ソフトボールの公式大会でやっと、数年ぶりに全国区へと駒を進める事が出来た試合の最終回。高く打ち上げた敵の攻撃が軽やかに弧を描き、私の守備するレフトまで飛んだ。


 …絶対に取らなければと、ボールへと一目散。あろう事かその最中に、私は肉離れを引き起こした。走るも歩くもそもそも動く事が出来ず、手を伸ばしても届かずに砂を噛み、初めて5mが長く感じられた。





 散り際が美しく、死ぬ事で生まれる意味等はフィクションの中の話に他ならない。最後の瞬間、巻末のページに写っていなければ現実に意味は刻まれない。


 いくら泥濘を抜ける為に藻掻いても、茨を引き摺りながら足を止めずにいようとも、その瞬間の大事な時に間に合わなければ。自分の掴めるものは何もない。


 運が悪く、間が悪く、何かを成し遂げなければならない瞬間の度に訪れる不運。的確に隙間を着いてくる、イヤらしい差し金に翻弄されて。









 『理都ってホント、大事な時に使えないよね』









 私は、ずっと誰かの足を引っ張っていた。










 「━━でも、私は」




 私は、どれ程謂れのない事で悪者にされようとも憎み切る事が出来なかった。


 私は、どうしょうもない状況下の中で浴びせられる罵詈雑言を『飲み込む』選択をした。


 使えないと言われても、役に立たないと嗤われても、人一倍に『ならば』と立ち上がった。





 ━━私に芽吹いた、悪癖の一つだった。

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