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20.白の御使い(2)





 『バカタレ。一人で格好付けんな』


 「!!」


 青年の感知よりも、『雷霆』の速度が上回る。


 荒の真横に一文字を描いたと思えば、それは重い一撃となって青年の真芯を捉え、気付いた時には既に吹き飛ばされた。



 「ふぅ━━━━━……っ」



 青く、白く。交互に迸る雷電に包まれた姿が露わとなる。最も、それが誰なのかを荒は分かっている様子だった。




 

 「おせーぞジャンク。こんだけのドンパチにどんだけ時間掛けてやがる」


 「事後処理だよ事後処理。こっちにまで被害出てんだよ」



 吹き飛んだ先へと視線を送るジャンク。


 白んだ砂塵はとうに晴れ、何を喰らった訳でもなさそうな青年が変わらぬ笑顔(てきい)を浮かべ、二人の方を向いている。


 荒の奇襲、ジャンクの不意打ち。旧式とは言えど、理想郷で数多を屠った兵器を持つ二人の一撃は、青年に埃を付ける程度に留まっていた。



 「チッ……で、ありゃァ『何処』だったか」



 「右手に手袋をしていた。…これで分かるだろ、忘れたとは言わせねぇぞ」


 「━━『右腕』だな。なら容赦も恩赦も必要無い訳だ。…毛頭そんなモン、奴等にくれてやる道理なんてありゃしねェがな」



 











 「……………………はははっ」 



 蹴り飛ばした相手が『誰』なのか。凡そを察したと同時に臨戦態勢を取る二人の姿を見て、青年は再び笑った。


 何も無かった空虚な笑顔に、愚か者を見下す侮蔑をが注がれた。腹を抱えて、青年は『嘲笑わらっていた』。



 「(ちっ……()()()()()()()()()()ムカつく声だなッ…!!)」



 次は何をしてくるか?先と同じく遍くを焼く光を放つか、気まぐれに飽いて元の場所へと踵を返すのか。手段を変更して卑怯千万にて嬲り殺すのか。


 緊張に緊張が織り連なる。二人は一層警戒する。強張る身体と心臓、その神経の一端に至るまで集中させ、嘲笑いながら一歩一歩と近付いてくる青年を睨む。





 「"━━これはカミサマの託宣である。願いである。"」



 青年の口が開く。


 空気が冷たくなる。



 「"我は『右腕』を与えられた御使いにて。人とカミサマを繋ぐ七の白き善性。"」


 「ッ…!!」



 青年の足取りは変わらない。にも拘わらず、二人にはその足取りが心做しか速く、遅く、その双方に見えている。


 既に張り切った緊張は鋭利に空間を支配し、二人の命を司るありとあらゆる場所に冷徹を突き立てている。━━動く事もままならず、ただ息を呑む事しか出来ない。



 「"善性とは即ち、『正義』である。"」



 そして、祝詞の様な台詞回しを静かに終えたと同時。



 「"名称識別承認━━『セラヴ』。執行開始"」



 青年(セラヴ)はたった一歩の煌めきと共に、二人の目の前へと現れる。




 「君達は本当に話を聞かない。真に『人間』を目の当たりにした途端、目の色を変えて。


 僕はこれ以上攻撃するつもりは無いのに」




 ━━冗談だとしてもそれは度し難く、聞き入れられない言葉に、静寂が訪れる。


 呆れる事すらも忘れ、返す言葉が止まり、ただ湧き出てくるのは『ふざけるな』という怒りのみだった。




 「……信じられる訳ねェだろ、トボけんな」


 「それは勝手さ。信じるも信じないもね。試してみろよ、ご自慢の疑似再現機構(ロストマキア)…『鳴霆(インドラ)』でさ?」


 「………………」



 敵である以上確実に壁は存在する。確執や軋轢によってその壁は崩せぬモノとなる。

  

 青年の吐く言葉は彼にとっても、荒にとっても信用に値しない。━━故に、ジャンクは動いた。




 「出来ねェと思うか」



 彼の疑似再現機構(ロストマキア)は、同じ形には二度とならない変幻自在体現した破壊。インドラと名付けられた、全身を包む外殻はジャンクと共に憤怒した。


 荒とは似て非なる、『蔦』や『蛇』を彷彿とさせる湾曲した刻印と共に、雷霆は白光を奔らせながら右腕へと収束する。




 「だから言ったろ?『試してみな』って」






 ━━しかし。それでも尚、嘲る事を青年はやめなかった。


 悉くを貫き砕く矛すら命を脅かす物には値しないと、セラヴは身体の中心を大っぴらに晒した。

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