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TRY  作者: 田中タロウ
7/12

第6話 冒険

―――ギイ・・・


鍵がかかってるかと思ったけど、

扉は軽く押すと、簡単に開いた。


俺は足音をたてないように、

まるで忍者のように、そーっと忍び足で歩く。


入ってすぐは当然ロビーになっていて、

スプリングが飛び出した椅子がいくつも置いてあった。

受付らしきカウンターにはホコリが積もっている。


まだ外は夕日で明るいのに、ここだけまるで別世界だ。

光も音も何もない。


・・・いや。

廊下の突き当たりに一筋の光が見える。


俺は息を殺し、壁伝いにその光へ向かって歩いた。

その光は壁にある少し開いた扉から漏れている。

そっと中を覗くと、男達が3人、ベッドや椅子に腰掛けていて、

そのベッドの上には美優ちゃんが寝かされていた。


男達は煙草をふかしたり、何か小声で話したりしていて、

俺には全く気づく様子はない。


俺の背中を汗が流れる。


そうだ、あの男達が美優ちゃんから目を離した隙に、

美優ちゃんを連れ出そう。

少しの距離なら抱っこして走れる。

外に飛び出してしまえば何とかなるだろう。

でも、3人が同時に目を離すことなんてあるかな・・・?


あれ?そう言えば、あのデカイ男がいない・・・


そう思った瞬間!


俺は後ろから首ねっこをつかまれ、持ち上げられた。





「おい。このガキが紛れ込んでたぞ」

「あ!」

「どーやってここに来たんだ?」


床の上に放り投げられた俺を見下ろしながら、

男達がニヤニヤする。


「どーする?」

「ここを知られたんじゃあ、帰してやれねえなあ」


帰してくれないならどうする気だよ!?

俺は男達をジロっと見上げた。

・・・これくらしかできなし。


「お。いい度胸してやがる」


一人が俺の胸ぐらを掴み、軽々と持ち上げた。

そして空いた方の手で、ポケットから何かを取り出す。

それは、窓から差し込む夕日を反射してキラキラと怪しく光っている。


ナイフ!?


そいつは、短いけど鋭そうなそのナイフを俺の顔にゆっくりと近づけた。

ちょうど眉間を狙ってる。


俺は、身体が震えだすのを止められなかった。


どんどんとナイフが目の前に迫ってきて、

もはや焦点が合わない。

しかもいつの間にか勝手に涙まで出てきて、

全く何も見えなくなった。



やっぱり悪いことをしたら罰が当たるんだな。

ごめんなさい、コータさん!

ごめんなさい、愛さん!

ごめんなさい、美優ちゃん・・・


美優ちゃん・・・

そうだ、

美優ちゃん。


俺の次は、美優ちゃんが同じ目にあうかもしれない。

どれほど怖い思いをするだろう。

まだ、3歳にもなってないのに。


明日は美優ちゃんの3歳の誕生日だ。

なんとかパパとママのもとで過ごさせてあげたい!


そうだ!

ここで、俺がやられる訳にはいかない!


俺は持ち上げられたまま全身にギュッと力をいれ、

できる限り背中を逸らし、

その反動で、思いっきり男の腹を蹴飛ばした!!


「いってえ!何しやがる!!」


男が一瞬ひるんだ隙に、俺は男の手を逃れ、

床に落ちた。

他の男達が俺を捕まえようとするより早く、

俺は起き上がって、目の前の男の足元めがけてタックルする!


「うっわ!!」


不意をつかれた男は見事にひっくり返った。

俺はその男の上を踏んでベッドへ走り寄り、

美優ちゃんを抱き起こした。


「このガキ!!!」


俺は美優ちゃんを抱きかかえ、無我夢中で走った。

どうやって廊下に出たのかわからないけど、

とにかく俺はなんとか廊下に出ることができた!


出口は・・・

あっちだ!!!!


でも、

勢いよく走りだしたものの、

さすがに3歳前の子供を一人抱っこしているのだ。

(しかもまだ寝てるし)

全くスピードは出ないし、恐怖で足がもつれる。


俺はあっという間に男達に追いつかれ、

足を掴まれて逆さに持ち上げられた。

その拍子に美優ちゃんが落ちる。

が、他の男が絶妙のタイミングで美優ちゃんをキャッチした。


よかった・・・

自分が捕まったことも忘れ、

美優ちゃんが怪我をしなかったことに安心した。


「お前・・・ふざけた真似しやがって」

「ふざけてねえよ!!!」

「なんだと!?」

「うっせー!ハゲ!!!」

「ハ、ハゲ!?」


男が真っ赤になる。

けっ!

せめて口だけでも攻撃しまくってやる!


「ハゲにハゲっつって何が悪い!チビハゲ!」

「て・・・てめえ・・・!そんなこと言ってられるのも今のうちだぞ!?

自分がどうなるかわかってんのか!?」

「へん!殺すなら殺せ!あーよかった。下手に生きてあんたみたいにハゲたくねーし!!!」

「この!!!!」


男が拳を振り上げた!

俺はさすがに目を瞑り、覚悟をした。

その時!



「はーい!おしまい!」


廊下に声が響いた。

この声は・・・


「コータさん!」




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