プロローグ
クリスマスイブにディズニーシーで彼女とデート。
24年間生きてきて、何もかもが初めてだ。
あ、来月で25歳だから、「25年間」の間違いか。
今までも彼女らしき女は何人もできたけど、
思えば本気で好きになったことはなかった。
だからクリスマスイブにデートなんてしたことがない。
ましてや、ディズニーシーなんて初めてだ。
ちなみにランドの方も行ったことがない。
彼女もランドの方が好きだし、
俺もなんとなく「初心者はランドからだろ」と思ってたけど、
今日は、のっぴきならない理由で俺達はランドへ立ち入れない。
「平日だけど、結構人が多いのね。冬休みだからかな?」
「そうだなー。カップルばっかり」
「私達もね」
そう言って彼女は天使のような笑顔で微笑む。
俺は思わず見とれた。
彼女は誰から見ても文句なしにかわいい。
すれ違う人もみんな振り返る。
なんだか俺も鼻が高い。
別に、外見に惚れたわけじゃないけどさ。
ディズニーシーの中央の池の周り(いや、海か?)を歩きながら、
彼女が呟く。
「ねえ・・・話があるんだけど」
「何?」
「実はね、私・・・」
彼女が口ごもる。
いつも積極的で物怖じしないのに、珍しい。
そうか。
あの話か。
「ああ。知ってるよ」
「え?」
彼女が立ち止まり、驚いた顔で俺を見上げる。
「知ってたの?」
「うん」
「いつから?」
「・・・前から」
「前?」
そう、知っていた。
ずっと、ずっと前から。
俺は彼女の手を取り、ゆっくり歩き出した。




