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従者の裏切り

「オルフェ、残念な知らせだ。」


俺の深刻な声音に、本棚の本を片付けていたオルフェが振り返った。


「コスモス嬢に振られでもしましたか?」


「いや、その方がよっぽどいい。」


俺はデスクの椅子に腰掛けたまま、デスクに肘をつき両手の指を組んだ。


「ヤツは前世の俺の妹だった。」


「それ、婚約解消理由にはなりませんよ。又、医者を呼ばれたいんですか?今度こそ領地の古城かどっかに幽閉されますよ。」


昔、爺様に前世の話をして領地の古城に閉じ込められ掛けた事がある。その時は、両親が感受性豊かな子供の妄想だ、と取り成してくれて幽閉は免れた。が、多分次は無い。


「オルフェ、残念だが今回は向こうにも前世の記憶がある。」


俺の言葉に、オルフェの顔が引き攣った。それこそ言葉を話せるようになった頃から、俺の前世話を聞かされ続けているオルフェは、話の真偽を信じているかどうかはともかく前世話には耐性がある。だが、前世を共有する相手の登場は初めての経験だ。狼狽えるのは当然だ。


「トーマ様!直ぐにコスモス嬢を公爵家にお迎えしましょう!婚姻前の花嫁教育とでも理由ならいくらでも付けられます!直ぐに旦那様にご報告を!」


「ちょっと待てーっ!」


いきなり濃い茶の瞳をキラキラと輝かせて、部屋を飛び出そうとしたオルフェの腰にタックルを掛けて引き止める。二つ年上のオルフェは、俺より頭一つ背が高く、ガタイもいいので引き止めるには全力が必要だ。決して俺がひ弱な訳じゃ無い。


「落ち着け!オルフェ!相手は、八歳の幼女だぞ!」


「そんなもの!高位貴族家では、婚家のしきたりに慣れさせる為、その位の年齢で嫁がせる事は良くある事です!それよりも!トーマ様と前世話が出来る逸材なんですよ!夫婦で、ですよ!僕もいい加減トーマ様の前世話には慣れましたが、いつも誰かに話を聞かれたら公爵家の悪い噂になるのでは、と案じていたんですよ!話し相手がトーマ様の奥様であれば、夫婦の会話だといくらでも人払い出来ます!いいじゃないですか!いいえ!これ以上の良縁はありません!」


興奮して捲し立てるオルフェから、面倒を押し付ける相手を見付けられた歓喜がだだ漏れている。此奴、そんなに俺の事、面倒に思ってたのか。俺は齢十歳にして、人生の悲哀を味わって涙しそうになってしまった。オルフェの馬鹿!


「嫌だよ。前世の妹と結婚なんか出来るか!」


「世の中には、契約結婚という物もございます!コスモス嬢も前世の記憶をお持ちなのであれば、此処は尚の事、ご婚姻召されてお二人で共通の秘密を守られるのが得策ではございませんか?」


何が何でも俺をコスモス嬢に押し付けたいらしいオルフェの熱弁に、俺は白い目を向けた。


「お前はコスモスの怖ろしさを知らん!第一、ヤツは婚姻より何より……俺を利用して、虹の橋を探そうとしているんだ。」


「虹の橋、ですか?そんなもの探してどうするんです?」


「勿論、虹の橋に還ろうとしているんだ。虹の橋で再び俺達の主様に出会う為に!」

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