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当時の関係者と接触するには?

アパルトマンに戻り、メイベルの残した人物関係図を確認する。


まず、色々と調べた結果、やはりヴェロニカは16歳で亡くなっていた。

メイベルの妹ならそれがどこかに出てきてもいいはずなのに、どのタブロイド紙などを見てもヴェロニカとメイベルの関係を示す物はなかった。

タブロイド紙に出ていた被害者の名前は、ヴェロニカ・キーナンとなっていた。


メイベルは『メイベル・イスト』だ。ヴェロニカとはどんな関係なんだろう?

それはいつかわかるかもしれない。


今わかっていることを整理する。

ヴェロニカが亡くなった時、メイベルは仕事で海外にいた。

だから、事件の時はこの国にはいなかった。

それはタブロイド紙に海外にいるメイベルを盗撮した写真が多数出ていたから間違いない。


次に、メイベルが絞り込んだ4人について。


1人目。モデルのクリストフ・ヘルソンはメイベルと同じ年齢で、事件当時は18歳だった。

この時、彼は聖クリチャード学園の高等部の最高学年で、沢山の女の子を侍らせていた。

彼は昔から素行が悪く、タブロイド紙には過去に色々な動物を持ち込んだ経験があり、今回事件を起こした魔物はクリストフが持ち込んだのでは?と書いてあった。


2人目。実業家のダニエル・カーネギー。

事件当時、彼は30歳だった。

彼はこの数年前から聖クリチャード学園の土地を含む周辺の土地の用地買収を行おうとしていた。

そして、この時間の後、一旦学園は閉鎖された。そして、スラム街を解体して新しく商業地となった地域にセキュリティを強化して移転した。

これで、元スラム街の土地を学園に売りつけたのと、取得した学園を含む土地を高級住宅街として売り出してすごい利益を上げた。


3人目、ポロ選手のイデオン・サーストン。

彼はこの時、21歳だった。

もうポロ選手としては有名で、当時のスポーツシーンでは、彼は英雄扱いだった。

事件当時はどうかというと、オフシーズンでこれといった情報がなかった。

しかし、イデオン・サーストンは聖クリチャード学園の経営者一族の一人であり、ダニエル・カーネギーの不動産売買に絡んでかなりの利益を上げたようだ。


最後の1人。ブルーノ・ヘイスティングス。

彼は私の4歳年上だから、この時は22歳。

ブルーノに関しては、彼の研究論文の紹介文の中に飛び級で大学を卒業した後、23歳まで聖クリチャード学園で講師をしていたと書いてあった。


この4人がメイベルが犯人ではないかと疑ったであろう人物だ。

今のところ、最低限の事はブルーノに頼らないといけない。

犯人として除外はできないけど、その時学園に居ただけなら容疑者はもっと沢山いるはず。

なんとか調べるいい方法は……。


異世界から来た私にこんなに手を貸してくれているのに犯人だなんて疑いたくない。

ブルーノと数日過ごしてみて、すごく面倒見がいい人だと思った。



そうだ!

イデオン・サーストンに会って、学校への寄付と、痛ましい事件への追悼を持ちかけてはどうだろうか……。

これだけ時間が経って追悼もおかしいかな。

しかし、おかしくてもこれしか当事者を集める方法は思いつかない。

でも、イデオンが犯人ならやっぱり呼び出すのは危険だ。

まずはブルーノおすすめのパーティーを開いたほうが得策だ。



やる事が決まった。

でも、メイベルのコネクションがわからないので、リトルに聞くことにした。

リトルなら何か知ってるかもしれない。


「え?メイベルの俳優時代のエージェント?その人に連絡を取って何したいの?」

リトルはふわふわと泳ぎながら私に聞く。

「メイベルが出資していたブルーノのラボで新しい魔道具ができたらしいの。そのお披露目会を開いて、お金をガッツリ集めたいわけよ」

ちょっと目が泳ぎそうになるのを我慢して言った。


「へぇー。スズキスズって下品な事考えるのね。まあいいわ。メイベルのエージェントはラブラって言う女性よ。かなり強烈だから気をつけて。気を抜くと、すぐに仕事させられるわよ」

リトルは『あんたには無理よ』と言う雰囲気を漂わせながら答えて、またヒラヒラと空中を泳いでいた。

「ありがとう!リトル。私出かけてくるわ」


まず、ブルーノに資金集めのパーティーについて相談したいから、カフェで待っているという手紙を送った。

それから、早変わりメガネをかけてあのカフェに向かう。

またあのストロベリーブロンドの女の子がいた。

「こんにちは」

今日は私から話しかける。

利害関係のない知り合いが欲しいからなんとか友達になりたい。


「あら。また来たんだね」

女性は私をブルーノの親戚だと思っているから優しい対応になった。

「ここのカフェって素敵だから何度でも来ちゃうの。おすすめってある?」

「そうだね。グリーンリーフのキッシュがおすすめだよ」

「じゃあ、それとコーヒーを。私、かなりの田舎から出てきたから、この景色を見ているだけで楽しくなるの」


写真集やテレビでしか見たことない景色に、お洒落な沢山のお店。

街を歩くだけでワクワクする。

そんな私の様子を女性はクスッと笑った。


「私も地方都市から出てきたの。将来の夢は教師になる事。でもお金がないからこうやってカフェで働きながら、夜間学校に通ってるの」

ストロベリーブロンドの女性はそう言って笑った。


「私も仕事探さなきゃ。今は無職なの。だけど、私の田舎とは全てが違いすぎて戸惑っていて。でも、なんとか頑張るわ」

故郷の日本とは違いすぎる。


「いい仕事が見つかるといいね。私はライザ。あんたは?」

「私はスズ。でも発音しづらいでしょ?だから、ブルーノはクロって呼ぶの。だから私の事、クロって呼んで」

そこでブルーノが入ってきた。


ブルーノは紅茶を注文して私の前に座る。

私は、揺れる自分の気持ちを押し殺して笑顔を作る。

犯人だとは疑いたくない。


「昨日の件を相談したいの。それで、リトルにメイベルのエージェントの名前を聞き出したの。エージェントに手伝ってもらおうと思って。ただし、私は何もわからないから同席してほしいの」

ブルーノに本題を切り出した。

「わかった。広く人を集めるにはその方がいいかもしれないね」

「じゃあ、今から手紙を送るわ」

私はラブラという名前をリストから探して、メールを送る事にした。

文面はブルーノが考えてくれた。


『相談があるから会いたい。ただし、私から連絡が来たことを他所に漏らしたり、私に仕事をさせようとしてくるなら他に話を持っていく』

その手紙にすぐ返事が来た。

『今すぐにでも時間を作るわ。どこで会える?』

ブルーノは、会員制のレストランを指定するようにと文言を考えてくれて、その通り送った。


「ラブラが来る前に向かおう」

ブルーノにそう言われて手を引かれ、食べかけのキッシュを見る。

「そんな顔するなよ。また次に食べよう」

私は恨めしそうにキッシュを見ながらカフェから連れ出され馬車に乗った。


ブルーノに言われてメインクローゼットの服を着る。

「それはメイベルらしくない」

たかが数日の事でメインクローゼットはメイベルのワードローブの中から私の好みに近いものを選ぶようになっていた。


「じゃあこれは?」

派手な柄物の生地を使ったフロントは膝丈で後ろは引きずるくらい長いワンピースに着替えた。

「これは普段着だ。もっと圧倒的なゴージャスさが必要だよ」

テレビで見る海外女優がレッドカーペットで着ていそうな服だと思うけど、メイベルにとっては違うらしい。


「圧倒的なゴージャスさだって。クローゼットさんお願い!」


そう言って指を鳴らすと、オーガンジーの透ける素材でできたスレンダーラインのドレスに変わった。

全身オーガンジーで覆われているが、魔法がかかっているようで全身透けているようで透けていない。

そして生地には沢山の宝石が付いており、歩く度に宝石が流れるように動いて一秒毎に違うドレスに見える。


「そう。それだよ。メイベルらしさって」

ブルーノはそう言って、自身も指を鳴らした。

すると、スリーピースのツイードのスーツ姿になった。

すごいカッコいい!!!


馬車から降りると、やはりブルーノはエスコートしてくれた。

今日の私はメイベルとして堂々としないといけない!

ブルーノが予約してくれた個室に入る。


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