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真相

本日4回目の投稿です。

私はこの魔法で受けたダメージを治す為に入院する事になった。


その間、ライザやコリンヌからはよく手紙が届いた。

ブルーノは、侯爵家の権力を使って会いに来てくれた。


ブルーノは魔法省に今まで調べた事を情報提供する代わりに真相を教えてもらったようで、こっそり私に教えてくれた。




ーーダレルの犯行についてーーー


犯人はダレル・ガウス伯爵令息。

エトホーフト魔道具研究所に務めるフローラ・ノイル伯爵令嬢とはハトコにあたる。

フローラは、あのブルーノに絡んでいたご令嬢だ。


ダレルはアーサー伯爵の家で繭に包まれて見つかったモデルのクリストフ・ヘルソンとは、聖クリチャード学園で同級生だったようだ。

ただし、関係性は今のところ不明だそうだが、多分、関係性は悪かったのではないかと思われる。


ダレルの学生時代は、同じ年のメイベルに心酔し、『メイベルの妹だ』と名乗っていたヴェロニカにかなり入れ上げていたらしい。

ただし、そのような男子学生は多かったため、ヴェロニカの事件の時は疑われなかった。


ヴェロニカについては、母親も亡くなってしまったのでわからない事が多いが、メイベルの主治医であるランチ・エイブラハム女医から、メイベルは『隣国の王弟の子供』であり、その事を悪用して金持ちになろうと持ちかけられた。


ヴェロニカの母親は、子供の頃は紫に見えないでもない瞳と金髪を持つ我が子を、『メイベルの妹で王族である』と、ありもしない嘘を触れ回っていたようだ。


もちろん、目的は王族の資金。

ヴェロニカは母親の狂言を信じて「メイベルの妹だ」と言いふらしていたようだ。

もちろん、ヴェロニカとメイベルは何の血縁関係もない。

それを本人が知っていたのかどうかは今となってはわからない。


ヴェロニカの殺害については、本当は王族の血縁でもメイベルとの血縁もない事を知った者の犯行の可能性が高く、再調査が行われた今は、ダレルも容疑者の1人らしい。



アーサー伯爵の事件ついては、ダレルは屋敷を襲撃して、ブルーノに罪を被せるつもりだだようだ。

法律違反である他人になりすます魔法薬を作ってブルーノになりすまして、屋敷を襲い、たまたま、その夜に合鍵で屋敷に入った甥のクリストフ・ヘルソンを犯行をバラされては困るから、ああやってグルグル巻きにしたようだ。


当時のブルーノとメイベルは兄妹のような関係だったが、一部のタブロイド紙では「結婚秒読みか?」と書かれていたため、それを見ての犯行だったらしい。



そして、メイベルの殺害について。

ダレルの母親は、セレブ専用の医師であるランチ・エイブラハム女医。

あのメイベルの薬に書いてあった主治医だ。

ヴェロニカをメイベルの妹に仕立て上げて隣国の王族の資金を得ようとしていたが、ヴェロニカが殺害されてしまい、その計画は崩れていたので、次の手を考えたようだ。

メイベルに魔物の毒を投与し、ある日、毒で動けなくなった所を、毒のない魔物に襲わせた。


そして、魔物に襲われて毒が回ったと説明した。


当初の予定では、メイベルと息子であるダレルを出合わせて、ダレルのお陰で毒が良くなると錯覚させる予定だったが、メイベルが通院をやめてしまい、その予定が頓挫。


もちろんこれはメイベルの資産を狙ったのと、自身の息子の好意を利用しての計画だった。


しかし、メイベルは自分の死を覚悟して、ランチ・エイブラハム女医から聞いたヴェロニカの死を追求することに残された時間を充ててしまう。


メイベルは魔法薬で変装しては、色々な事を調べていたが、おとなしい外見を装っていたのが仇となり、ダレルに目をつけられる。

ダレルは変装したメイベルに近づくが、相手にされない。

そして、自分になびかない変装した状態のメイベルを殺害した。

ただし、魔法薬を飲んだ状態のため、殺害した女性がメイベルだったと気が付かずに犯行に及び、死体を遺棄したらしい。


この死体は見つかってないが、一度メイベルが殺されたとわかったら大騒ぎになるのでブルーノは何も言っていないらしい。


この事件については、被害者の身元不明、死体はゴミと一緒に処理されたという事で進んで立件されるようだ。



ーーーこれがここまで調べた真相らしいーーー



「ブルーノ、教えてくれてありがとう」

「気にするな。もうすぐ退院だろ?迎えに来るよ」

そう言ってブルーノは帰って行った。


入院してから一週間後、いよいよ退院の日、ブルーノが迎えに来てくれた。


「回復薬の状態はどうだ?」

「悪くはないわね」

私はにっこり笑う。


そして、ブルーノにエスコートされて馬車に向かった。

まだ歩くのが辛い私は、ブルーノの腕を借りてなんとか馬車に乗る事ができた。


ブルーノの宮殿に着いた次の日、ライザとコリンヌがすぐにお見舞いに来てくれた。

2人はブルーノの宮殿に驚いていた。


私は今までの事を話した。

前世の涼木鈴の事や、メイベルが殺されてこの体に魂が入った事。ブルーノに助けを求めて今に至る事などを話した。


「クロの秘密には驚かされたわ。でも、見た目が変わっても、クロはそのまま。私達の友達のクロだよ」

ライザはそう言って笑った。


「そうよ!今までと変わらないわ」

コリンヌも笑ってそう言ってくれた。


「ところで……こんな招待状があるんだけど」

ライザが言うと、コリンヌも同じ物を出した。


それは、メイベルのパーティーの招待状だった!


「コリンヌはカーネギー社長から誘われたの?」

「そうよ!」

コリンヌは嬉しそうに返事をした。


「ねえ、カーネギー社長は毎日ご飯を食べに来るの?」

私の質問にコリンヌは赤くなった。

「なんでわかるの?」


私とライザは顔を見合わせて笑った。

そんなの誰でもわかるに決まってるもの。


「実は今回、ボスからからにお見舞いがあるの」

そう言ってコリンヌは沢山の回復薬を出してきた。この中には滅多に手に入らない物もあった。

「女性のお見舞いに行くのは、よっぽどじゃないと、っていうボスなりの気遣いらしいわ」

そう言ってコリンヌは笑った。


「ねえ、ライザは誰から誘われたの?」

ライザは含みを持たせたように笑った。


「ネイサンしかいないじゃない。ネイサン・ナガーと名乗っているけど、ナガー姓は母方の祖母の姓らしくて。本当は、ネイサン・ブラクストンなの。あのブラクストンホテルを所有するブラクストン伯爵家の嫡男なんですって」


だから、アバーエフの時、ネイサンがなんでも取り仕切れたんだ。

ネイサンの決定事項はすなわち、ブラクストン家の決定事項だったんだ。


私は笑顔で2人を見た。

「当日は絶対に来てね!」

2人は必ず来ると約束してくれた。




2人が帰った後、ブルーノは羊用紙の書類を何枚も持ってきた。


羊用紙という事は、かなり重要な書類だ。

「スズ、まずこの書類を見てほしい。これは君の将来に関わる書類だ」


渡された書類に目を通して私は笑顔になった。

そして、サインをした。

「すぐに処理するよ」

ブルーノは笑って答えた。



「ねぇ、あの早変わりメガネが壊れてしまったから、もう『秘書の顔』にはなれないの?」

「残念ながらね」

「そう…もう簡単にカフェに行ったりできないのね……」

「じゃあ、古道具屋に探してもらおう。もう一本くらいあるかもしれない」

ブルーノの提案に笑顔になった。



それから数日後、ネイサン・ナガーがお見舞いに来た。

ネイサンは自分の立場や、今後についても包み隠さず話してくれた。

クロの正体がメイベルであるとこの時、初めて知ったようで驚いていた。

ネイサンは、ダレルの正体に全く気が付かなかったようで、あの人懐っこい感じから採用を決めて、数年間すでにホテルで働いていたそうだ。

自分がダレルを紹介しなければ事件は起きなかったのでは?とずっと悩んでいたようだ。

私は全く気にしていないから、今まで通りでいてほしいとお願いをして、ネイサンとは友達になった。



なんとか回復した私は、チャリティーパーティーを開催した。

迎賓館の中は撮影できないが、入口にはラブラが選んだ数社のメディアが写真を撮っていた。

翌日、その事が主要メディアによって報道された。



まず、結婚したい男性No.1のダニエル・カーネギー氏は、エスコートしていた秘書のコリンヌと婚約しており、コリンヌ左手の薬指には大きなダイヤモンドの指輪が光っていた。



そして、ブラクストンホテルを経営するブラクストン伯爵令息も婚約者を連れて会場入りした。

普段、パーティーなどの表舞台に出てこないブラクストン伯爵家の登場に皆驚いた。

更に皆をびっくりさせたのは、婚約者であるライザは、社交界の華と言われたハミルトン伯爵未亡人の養子だった事だ。


それを苦々しい表情で見ていたイデオン・サーストンの写真も新聞に出ていた。



事件に巻き込まれて衰弱していたモデルのクリストフ・ヘルソンと、その叔父のアーサー伯爵も回復した様子が新聞で報道された。



何より大きく報道されたのが、女優を引退したメイベルが、隣国の王女で、王女としての地位と財産を放棄した事。

そして、ブルーノ・アシュバートン侯爵と婚約した事だった。



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