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パーティーの会場を決める

私は馬車でダレルを追い越して、そのまま貴族街へと向かった。



その後は忙しくてライザとコリンヌになかなか会えない日々が続いた。

招待状についてのチェックに思いの外時間がかかったためだ。



「ラブラってばどんだけ送るつもりなのかしら?」

そんな文句を言っていたらラブラから連絡が来て、最終的な打ち合わせをする事になった。




今回のチャリティーパーティーのメインテーマは、魔法省から認可が出た病原菌検査の魔道具にちなんで、感染症で苦しむ人への寄付にしようという事で話がまとまった。


パーティーの目玉は定番だがオークション。ただし、出品するのは『人の能力』で、例えばブルーノがオークション台に立ち、「魔道具研究のアドバイスを行う権利」をオークションにかける。その資金を慈善団体に全額寄付する事にした。


ラボへの寄付に関しては、ラボが開発した『明日を占う魔道具』の占いコーナーを作り、占いに支払うお金がラボへの寄付になるという事にした。

占いの小屋をパーティーの中に作り、水晶を置いて、占い師のような格好をしたラボの社員が行う予定だ。

ラボの魔道具を使った面白いコーナーをいくつも作る事になったのも、普通のパーティーと違って面白そうという事になった。



「残念ながらね、会場だけが押さえられないの」

ラブラは申し訳なさそうに言った。


「それなら私が自分で会場の交渉をするわ」

会場が押さえられないと何も進まない。

事件の関係者と接触するために開くパーティーなのに、自分が何とかしなければ。


「メイベル!さすがね。じゃあお願いするわ。こちらでもアーサーに迎賓館の使用のお願いの手紙を送ったんだけど……返事が無くて。アーサーは映画監督を引退してゆっくりしたスローライフを楽しんでるはずなんだけどね」


ラブラはアーサー伯爵を心配しているようだった。

会場さえ決まれば招待状はいつでも発送できる。


「会場なんだが、実はもしもの時のために私も候補をあげてみた。国立の迎賓館だと、2週間後の土曜日なら空いているそうだそれから、現代美術館だといつでも大丈夫だ」


ブルーノの提案にラブラは驚いた。


その提案には私もびっくりした。

現代美術館は、この前、お年寄りになる魔法薬を飲んだ時、ブルーノと見に行った美術館だ。


「どっちも捨てがたいけど、国立の迎賓館がいいわ。本当は美術館がいいのだけど、あちらは貴族の方の付き人が待機するお部屋がないもの」


ラブラはそう言って楽しそうに笑った。


「では、国立の迎賓館がいいわ。こちらも、滅多に予約が取れないのよ!会場が決まったからすぐに招待状を送ってもらえるかしら?」


ラブラはにっこり笑った。


「会場が決まったので招待状はこちらで発送します。それでは、今後は手紙でのやり取りにいたしましょう」


そう言ってラブラと別れた。



遠足が決まったような、そんな気分になってワクワクしながら馬車に乗った。


「会場が決まったから、招待状は今日中に発送する。スズは予備が欲しいと言っていたな。屋敷に戻ったら渡すよ」


「ありがとう。もう手紙で指示を出したの?」


「今出したよ」


何かあった時の予備の招待状を、ブルーノと私とそれぞれ5通ずつ、手元に置く事にしている。


2週間後のパーティーについて考えていたら、ブルーノは心配そうに何かを考えている。



「アーサー伯爵の屋敷に行ってみよう。ここからそう遠くはない」


「わかったわ。そうしましょう」

ブルーノの提案でアーサー伯爵の邸宅に向かう事になった。


ラブラと打ち合わせをしたレストランから山手に向かい、馬車一台分しか通れないような細い道に入った。


「こんな所に人が住んでいるの?」

木が生い茂る森を眺めなら聞くとブルーノは笑った。


「アーサー伯爵は、完全に引退したんだが、知名度が高すぎるからね。自分を主演に映画を撮ってくれという人が押し掛けるから、ごくごく親しい人にだけ、邸宅を教えてくれたんだ」


そう言っていると木々が邸宅を覆い隠すように建てられた小さな屋敷についた。

馬車を降りて周りを見回す。


「ここは魔物が出たりしないの?」


こんな山奥では危険ではないかと思って質問するとブルーノは私の話を聞いてないかのように、ゆっくり門の下にある石を触り、その後柱を触って、それから門の向かいにある大きな木を撫でた。

すると、門のカギ穴が浮かび上がった。


「危険じゃないよ。大きなシールドが張ってあって安全に行き来できる」

そう言いながらポケットから鍵を出すと、ブルーノはカギを開けて手招きをした。


「あなたも教えてもらった一人なのね」


「アーサーは名付け親だよ。小さい頃から交流がある」

そう言ってウインクをして玄関の呼び鈴を鳴らした。


しばらく様子を伺っていたが誰も出てこない。


「おかしいな。執事のノエルがいるはずなのに」


玄関から建物を眺める。

まだ昼間だというのにカーテンが閉まり、人の気配がしない。


誰も出てこないため、ブルーノはドアをノックして、開けようとしたが鍵がかかってる。


やはり返事がない。


異常な雰囲気を感じて屋敷の周りをあるく。

庭に入ると、ガーデンパラソルは閉じられ長い間使っていないようだった。そして、花壇の花はしおれていた。


「庭に水撒きをしてないのかしら?」


「そんなはず……。ここはアーサーのお気に入りの場所だ。何故こんなに荒れているんだ?」


ブルーノは小さな庭の隅々まで見て回る。


「趣味で育てていた薬草畑が根こそぎ刈り取られている。それにこの空間は何かしらの魔法が発動しているようだ」

 

「この状況ってまずいんじゃない?屋敷に入ってみましょうよ」


「門のカギは持っているけど、屋敷のカギはもっていない」


ブルーノの声は沈んでいる。


「そんな事言っている場合?屋敷の扉を魔法で破壊すればいいんじゃない?お願い。やり方を教えて」


ブルーノは下を向いて、目が揺れた。迷っているようだ。

でも、その後に唇を固く結んだ。


「スズの案に乗るよ。ドアを吹き飛ばそう。ただ、つよい防御魔法が掛かっている可能性がある。だから防御の弱い場所を狙いたいが、どこだか見当がつかない」


「わかったわ。屋敷の周りを一周してみましょう」


ブルーノと屋敷の裏に回ってみた。

裏手側は斜面に面しており見晴らしがあまり良くないはずなのに窓はちゃんと造られていた。


「これって風通しを重視した設計よね?と言う事は、2階か3階の窓なら壊せたり開いたりするんじゃないかしら?ただ、問題は開いても、どうやって入るかよね……」


私が悩んでいると、ブルーノは園芸小屋から梯子を出した。


「2階なら、なんとかこれで入れるんじゃないか?」


「そうね!やってみるわ」


私は窓に向かって強い風魔法を起こした。

すると、窓が開いた!


「中の状況が分からないから俺が先に登る」


ブルーノはそういうと、2階の窓に梯子を掛けて登った。そして窓を全開にすると中に入った。


「私も登るからそこで待ってて」


「中は危ないかもしれないから外にいてほしい」


「こんな陰気な所に置いていけぼりにされたくはないの!すぐ登るわ」

そう言って、まずそのメイベルのドレスをなんとかしようと指を鳴らすが、動きやすい服がない。

動きやすければなんでもいい!そう思って指を鳴らすと、頭に沢山アクセサリーを付けたどこかの民族衣装になったが、足元はサルエルパンツのようなスタイルなので、これで登った。


そんな私を見てブルーノは笑っている。


「スズ、どこかの民族衣装みたいな格好をしているぞ」


「うるさいわね!メイベルの持っている服でズボンはこれしか無かったのよ」


ハシゴから2階に入時、梯子と窓の高さが同じのため不安定でブルーノが手を差し伸べてくれた。

「つかまって」


右手を掴むとぐっと引き上げてくれてブルーノの胸の中に飛び込んだようになってしまったが、なんとか室内に入る事ができた。


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